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2005年09月21日

平安女学院大学就学権確認訴訟、川戸佳代さん 学術人権ネットワーク(AHRN)・シンポジウムで報告

平安女学院大学びわ湖守山キャンパス就学権確認訴訟を支援する大学人の会
 ∟●大学人の会ニュース14(2005/09/20)

平成17年9月18日

各位

平安女学院大学キャンパス移転問題
~守山キャンパスでの教育を受ける権利の確認を求めて~

平安女学院大学4年生
川戸 佳代  

 はじめに、8月から「就学権確認訴訟を支援する大学人の会」が結成され数々のご尽力をいただきましたことを心からお礼申し上げます。また、署名サイト等によって多くの方々にご署名をいただきました。本当にありがとうございました。
 控訴審判決は、9月28日(水)13時10分から大阪高等裁判所別館8階81号法廷(大和陽一郎裁判長)にて言い渡されます。
 是非、裁判の傍聴にご協力いただきたくお願い申し上げます。

 平安女学院大学は、滋賀県および守山市から巨額な補助金を受けて守山キャンパスを設置しておきながら、わずか5年で高槻キャンパスへの移転・統合を決定しました。私たち学生が、今年度から守山キャンパスの閉鎖(高槻キャンパスへの移転)の事実を知ったのは、平成16年4月10日付の新聞記事(「びわ湖守山キャンパス、高槻に 統合平安女学院が検討」京都新聞 )によってでした。1年生は4月3日に入学してから1週間後に統合を知るというものです。
 学院理事会の一方的な決定に不満を覚えた私たち学生は「平安女学院大学守山キャンパスを守ろうの会」を結成し、各方面への署名提出や陳情などを行ってきました。しかしながら、学院側は関係自治体への了承を取り付けることもなく、また学生への十分な事前説明と納得を得る努力さえせず、一方的に移転・統合を決定し「補助金の食い逃げ」を強行しました。
 こうして行われた学院側からの教育を受ける権利の侵害に対して、私は教育機関としての学院の社会的責任を追求していきたいと思います。

就学権確認訴訟の公共性

 私立大学の中には補助金によってバブル時に設置されたキャンパスの統廃合が起きています。第2次大学新設ブームと言われる1996年から2002年までに開学した80校が平安女学院と同じように、自治体から補助金を受け地域振興の名の下に設置されているようです(『大学激動 転機の高等教育』朝日新聞社出版、2003年)。少子化が進み学生数が減ると見込まれている現在においても新設大学は増え続けています。このように競争が激化するなかでも守られなければならないのは学生の就学権です。平安女学院大学のように、教育を極端に商品化し、ビジネスのごとく振る舞う大学が今後も出てくることでしょう。このような大学は、短期的に「採算が合わない」と判断したら、学生の意向など無視してどんなことでも行うかもしれません。そうした場合、学生の学ぶ権利や就学条件はどこまで守られるのでしょうか。在学契約の趣旨はどこまで保障されるのでしょうか。これが私の訴訟における問いかけです。この就学権確認訴訟は全国でも初めての例で極めて公共性が高い事件とされているため、判決は平安女学院だけの問題ではなく私立大学全体に関わってくることでしょう。

自治体から補助金を受け設置された大学に見る学生の就学状況

 大学倒産時代が現実となった今日、キャンパスを廃止したのは平安女学院大学ばかりではありません。しかしながら、ここで問題とすべきは平安女学院のように学生を無視した対応が他の大学においては見られないということです。
 ①石川県の七尾市が約10億円の補助金を投じて設置された七尾短大は、募集停止を余儀なくされましたが、2003年の春に最後の在学生を同大キャンパスからしっかりと送り出しています。
 ②北見市が約25億円を投じて1977年に設置された北海学園北見大学は、自治体の了承を取り付けたうえで、2006年3月末をもって北海学園北見大学を北見キャンパスから撤退させ、同年4月より札幌市内のキャンパスに移転させることを決めました。入学前に移転を知らされなかった学生は、北見キャンパスで卒業まで就学することになっています。
 ③山口県と萩市が40億円の補助金を投じ1999年に開学した萩国際大学は、今年6月に民事再生を裁判所に申請しました(定員割れが直接の理由で民事再生に至ったのは初めてのケース)。その際の報道によると、安部一成同大学理事長は「責任持って卒業まで面倒を見ることが社会的責任」、「学生や保護者には申し訳ない。学生が卒業するまではきちっと面倒をみる」と述べています。さらに、これを受けて中山文部科学相は会見で「教育的な観点に立った再生計画」の必要性に言及しています。
 このように在学契約を遵守することは、私立大学としての社会的責務(USR)であるということが浮き彫りになってきています。就学権確認訴訟において学ぶ権利が認められなければ、在学生の就学条件(教育環境)が卒業までの最短期間さえ保障されないということになります。

経営破綻した立志館大学に見る学生の就学状況・転学支援措置

  私立大学として初めて経営破綻した(2003年)立志館大学の場合、在学生のうち希望する学生は近隣の呉大学に転学することができました。文部科学省高等教育局私学部長は、衆議院文部科学委員会(第156回国会第1号 平成15年2月25日)において、「・・・一つには、学生本人の同意が得られた場合には在学生をこの呉大学へ転学させること、二つには、卒業まで現在の立志舘大学のキャンパスで授業を実施すること、三つには、転学にかかる入学金、委員御指摘の入学金の件でございますが、免除するということなどを前提に、すなわち在学生の負担が少しでも軽減されるような配慮を」と答弁しています。

 平安女学院大学には、このような就学上の不利益を考えた的確な措置が行われていなかったため、なかには退学せざるを得ない学生や転学費用をアルバイト代で賄った学生もいました。学院側には、このように学生に対して入学前に示した学びの条件を卒業まで保障することを前提とした経営改善計画が求められるべきであると思います。
 大学全入時代(2007年)を前に、この裁判においてキャンパスで学ぶ権利が認められなければ大学破綻やキャンパス閉鎖の際に学生は救済されないことになり、今後の教育現場に大きな打撃を与えることになるでしょう。私は、私たちと同じ思いをする学生が出て欲しくないという気持ちでいっぱいです。

この事件についての詳しい情報は、次のホームページをご参照下さい。

平安女学院大学守山キャンパスの存続を守ろうの会
http://www.geocities.jp/ncgqg099/index.html
全国国公私立大学の事件情報
http://university.main.jp/blog/
平安女学院大学守山キャンパス就学権確認訴訟を支援する大学人の会
http://university.sub.jp/shomei/daigakujinnokai.html


投稿者 管理者 : 2005年09月21日 02:19

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