個別エントリー別

« 国家公務員、5年間で3万3,230人削減 政府が合理化計画を決定 | メイン | 横浜市立大、現場の教員に単位認定権を与えず外部試験を進級・卒業要件にすることの問題性 »

2005年10月07日

九州大学教職員組合、九州大学における給与支給基準についての見解

九州大学教職員組合
 ∟●九州大学における給与支給基準についての見解

2005年9月29日
九州大学における給与支給基準についての見解

九州大学教職員組合執行委員会

 大学当局は、9月22日付けで「給与の支給基準の検討について(お知らせ)」という文書と参考資料として05年人事院勧告等を本学ホームページに掲載した。この文書の内容は、本学における給与の支給基準について「人事院勧告も参考にしつつ、本学固有の事情も考慮し、本学の財政状況を見据えながら、『社会一般の情勢に適合したもの』であるための検討を関係委員会等で行う」というものである。
 九州大学教職員組合は、この「お知らせ」に対して以下の見解を明らかにする。

1.本学における給与支給基準は本組合との交渉によることが前提
 給与などの労働条件の不利益変更は労働組合との交渉によるのが法人化後の労使関係の原則であり、本組合との交渉により決定されるものである。この「お知らせ」は「検討することの通知」の体裁を取りながらも検討の方向性を明示してそれを受容せしめんとする意図が明白で、労使交渉を軽視するものと言わざるを得ない。そもそも、今回の人事院勧告は、まだ、閣議決定も国会も通過していない。

2.人事院勧告は根拠薄弱であり、その目指すものは本省キャリア組の優遇
 国公労連と人事院との度重なる交渉で明らかになったように、国家公務員と民間との給与格差を裏付ける明確なデータは無い。さらに、関東地区以外の国家公務員の給与を下げる一方で、本省課長適用の現行11級の滞留者を救済するために現行12級にあたる級を新設し、今回批判を受けて導入を見送った「本府省手当」についてもなお、今後の導入を示唆している等、キャリア組の給与を実質的に引き上げ、若手キャリア組の民間への流出を防ぐことが真のねらいであることが明らかになり、今回の「給与構造の見直し」は地方切り捨て・中央優遇の究極の姿である。大学当局が金科玉条のごとく主張する「社会一般の情勢」=人事院勧告とは、斯くの如く、不当極まりのないものである。

3.文科省は人事院勧告と運営費交付金とは連動しないと明言
 文科省は全大教との交渉で、人事院勧告があっても運営費交付金を減額することは無いと明言したのであって、九州大学への運営費交付金は人事院勧告とは連動しないのである。大学当局が人事院勧告に準拠して法人職員の給与を下げる方針を示すことは、文科省の意図に反するのみならず、運営費交付金の減額を自ら要請するという愚作の最たるものである。

4.本学教職員の給与水準は低い
 法人の給与を決定する場合に「社会一般の情勢」に配慮するというであれば、法人職員と国家公務員との比較(ラスパイレス指数)を考慮するのが誠実な対応というものであろう。文科省の資料によると、本学職員の給与水準は、ラスパイレス指数で国家公務員を100とした場合、88.6 であり11.4ポイントも低い。教員の給与水準についても、国立大学の給与水準は都市部の私立大学と比べて大きな格差(月給で約10万円)があることが指摘されており、こうした格差が国立大学において優秀な教員の人材確保を困難にしている。「社会一般の情勢に適合したもの」であるならば、こうした格差を是正することこそが良識ある法人経営であろう。本学で働く教職員の給与の引き下げは、国家公務員の身分を失った教職員の士気の低下を招き、結果として、九州大学の発展にとってマイナスとなることを指摘せざるを得ない。

5.財政状況を考慮するなら給与を引き上げるのがスジ
 本学の16年度決算では、60億円超の黒字となっている。黒字決算の実態を見た場合、組合としては必ずしもそのことが給与の引き上げに結びつくとは考えないが、公表された財政状況を考慮するというのが本学の方針ならば、少なくとも、給与の引き下げにはならないのが素直な経営手腕であろう。逆に、給与の引き下げを提示するようなことがあった場合は、その合理性の説明責任を組合のみならず学内外に果たす義務が生じることを指摘しておく。

6.人事院の外郭団体へ委託した国大協
 国大協は教育職のあるべき給与構造について、人事院の外郭団体である日本人事行政研究所に委託した。委託する前から結果が予想されていたように、その中身は基本的に人事院勧告への準拠そのものである。日本人事行政研究所へ委託することによって自らは責任逃れをするというこのやり方は、国大協の十八番であり、この参考資料は何の権威付けにもならないであろう。

7.成果主義は働く意欲を失う
 すでに、富士通(株)の失敗例でも明らかなように、成果主義の導入は働く意欲を失わせ、組織の崩壊をも招きかねない制度である。私たち組合員は雇用不安が無く、安心して働ける職場や働き甲斐のある職場を求めているのであって、不当な評価制度の下で賃金格差が生じるような職場を決して望んでいない。私たち組合員は九州大学の教育・研究・医療の発展とその支援のために働くことを自らの生き甲斐としたいと真に望んでいるのである。


投稿者 管理者 : 2005年10月07日 00:28

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://university.main.jp/cgi4/mt/mt-tb.cgi/588

コメント