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2005年11月28日

本当にこれでいいのか? 人文科学の根が絶えつつある日本

だまらん
 ∟●本当にこれでいいのか? 人文科学の根が絶えつつある日本 [2005/11/23,24]

本当にこれでいいのか? 人文科学の根が絶えつつある日本

1. イントロダクション
2. 吉田氏の視点
3. 吉田氏の視点に欠けるもの
3.1 人文科学系専任教員の削減
3.2 非常勤講師の削減?
4 結論

1. イントロダクション

 10月中旬,かつての教え子A氏から,突然一通のメールをもらった.

 薄紫 今、私が担当している○○大学の非常勤講師の仕事が、今年度いっぱいで終了することになりました。 △△学部が来年度から□□制になるので、それに伴いカリキュラムが見直されました。
(中略)
いまどき珍しい話ではありませんが、こんなに早く、自分のところにこういう事態がやってくるとは思いませんでした。
どこか勤められるところを探すことになります。... 水曜日に◇◇を担当している先生は今年度でおしまい、というような説明を受けました。...

 A氏は,人文科学系の優秀な若き研究者である.将来的には,研究者として活躍できる素養を備えており,大学での教歴を積む一環として,またわずかばかりの経済的支えを得るために2年前から○○大学の非常勤講師を始めた.そして突然の解雇通告.こんな時どうしたらよいのか,他に非常勤講師の口はないものか,という相談だった.このような話は,A氏自らが述べているように,近年,決して「珍しい話ではない」.しかし,大学の非常勤講師をクビになり,その後,働き場所がないというケースを耳にすることが,近年,本当に多くなった.簡単にクビにできる非常勤講師という弱い立場も問題だが,このような状況が続けば,人文科学系の後継者不足という深刻な事態に拍車がかかるのではないか.
 折しも,2005年11月18日の朝日新聞(私の視点)に1つの投稿記事が掲載された.この記事は,吉田量彦氏(倫理学)によって書かれたもので,吉田氏は,現在,ある大学の非常勤講師という身分にある.以下では,まず彼の論点を要約し,このままでは日本の人文科学研究が,本当に根絶するのではないか,という危惧を,現在多くの大学で見られる「改革」と関連づけて考えてみたい.

…(中略)…

4. 結論

 人文系学問が遠からず徐々に死滅していく,これが日本の将来の姿だと思う. 特定分野の研究者が日本から消えていく,これを黙って見ていていいはずがない.人文科学は,「人間」を研究する分野であり,「人間とは何か?」,「人間とはいかにあるべきか?」,「人間社会はどうあるべきか?」というような根本的な問題を扱う.「社会に出てすぐに役立つ知識ではないから」というレッテルを人文科学に貼り,人文科学を冷遇しつづければ,やがて「手軽に手に入るものしか関心のない学生」,「社会なんてどうでもよい自己中心的な学生」,「簡単に扇動されてしまう学生」,「なんの理由も問わない学生」がますます多く大学から巣立っていくことになるだろう.その前に,日本政府は(あるいは,文部科学省は),「科学技術創造立国」を目指して基礎学問を捨てるのではなく,人文科学を救う手だてを考えるべきだと思う(今回は触れなかったが,一部の理学系の基礎学問も深刻な状況になりつつある).
 いったん,根こそぎに引き抜かれた植物は,二度と元の姿に戻ることはない.もう一度,種子から育てるのは多大な時間と労力を必要とする.特定分野の研究者が日本から消える,というのは,まさにこのような状態になる,ということだ.
 最後に,2005年10月に発表された,日本科学者会議・科学者の権利問題委員会による「研究者の権利・地位宣言」の最後の部分を引用しておきたい. ……


投稿者 管理者 : 2005年11月28日 00:09

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