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2005年12月02日

日本私大教連、国際人権規約「高等教育漸進的無償化」条項の留保撤回を求める決議

日本私大教連
 ∟●国際人権規約「高等教育漸進的無償化」条項の留保撤回を求める決議

国際人権規約「高等教育漸進的無償化」条項の留保撤回を求める決議

2005年11月20日
日本私大教連第18回定期大会

 日本私大教連は、父母・学生の経済的負担の軽減と私立大学の教育・研究条件の充実を求めて「私大助成運動」を組合活動の重要な一環として続けてきました。周知のように私立大学に対する国からの経常費補助は、私立学校振興助成法と国会附帯決議によって「経常費の2分の1補助」を早期に達成することとなっています。しかし、ここ10年間の補助率は12%前後が続いており、法の目的と現実が著しく乖離しています。

 こうした状況を生み出している原因は、高等教育に対する公財政支出が圧倒的に少ないことにあります。日本の高等教育に対する対GDP比0.5%は、OECD加盟国30カ国平均の半分で、データのないルクセンブルグを除き28位の最低クラスです(文科省も「日本の高等教育に対する財政支出は諸外国に比べて極めて低い」と述べています)。また、学生1人当たりの公財政支出高等教育費は、OECD諸国平均が7523ドルに対し、日本は4900ドルの最低クラスに属しています。したがって、高等教育費支出の公私負担割合で、日本は私費負担率の最も高い国の一つになっているのです。すなわち、学生の修学費は、勤労者の平均年収629万円の32%を占め、家計を圧迫し、その経済的負担は限界に達しています。

 日本の高等教育に対する公財政支出の水準が、「経済大国」にもかかわらず国際水準から大きく遅れている原因は、わが国が国際人権規約の「高等教育漸進的無償化」条項(A規約13条2項C号)について「留保宣言」していることと深くかかわりがあります。日本国政府は1978年、国際人権規約を批准するに際し、「留保宣言」をしたのですが、2005年現在、「留保宣言」を続けているのは「経済大国」の日本と発展途上国のマダガスカルとルワンダの3カ国のみです。

 2001年、国連社会権規約委員会が「批准時ならともかく、20年以上もたった今も経済大国の日本が留保し続ける理由が見当たらない」として、留保の撤回の検討を求める強い勧告を日本国政府にしたのは当然のことといえます。国連社会権規約委員会は同時に、検討にあたっては「市民社会の構成員」と協議をすることと、検討結果の報告書を2006年6月30日までに提出することを勧告しています。これが「2006年問題」です。

 1979年の国際人権規約批准時の国会で、当時の園田外務大臣は「留保なしで批准するのが望ましいが、政府部内の意見の統一がとれず、恥じている。当然、将来、解除する方向で努力をし、その責任もある」と述べています。また、国会はその時を含めて「諸般の動向を見て留保の解除を検討すること」とする国会附帯決議を2度にわたってあげています。日本私大教連は全大教と共同で国会要請・署名活動を始めています。「国庫助成に関する全国私立大学教授会連合」や「大学評価学会」は「留保撤回」に向けて「2006年問題」特別委員会を設け運動を進めています。「留保撤回」の機は熟しているといえます。

 しかし、政府に「留保撤回」をさせるためには、できるだけ多くの国民がその強固な意志を示さなければなりません。日本私大教連は私学振興助成法と国会附帯決議(経常費の2分の1補助)の完全実施と、公財政支出高等教育費の対GDP比1%(OECD平均)への増額を求めるとともに、「高等教育漸進的無償化」条項の「留保撤回」に向けて全力を尽くす決意です。


投稿者 管理者 : 2005年12月02日 00:07

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