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2006年01月19日

国際人権A規約第13条の会、正式発足とシンポジウムの報告

国際人権A規約第13条の会の発足について

 国際人権A規約第13条の会(以下、13条の会)は2005年12月22日、設立シンポジュウムを開催しました。当日は、記録的な大雪となりましたが、東京、長野、福井、愛媛、鹿児島などからも含め、約120人が参加しました。
 ここで13条の会について少し説明します。13条の会は、「中等教育と高等教育の漸進的無償化」の留保撤回を求める市民的ネットワークとして、10月1日に発足しました。
 1966年に国連総会で採択され、1979年に日本が批准した国際人権A規約(社会権規約)は、第13条第2項において、無償教育について規定しています。同項の(b)では中等教育における無償教育の漸進的導入、同じく(c)では高等教育における無償教育の漸進的導入について述べています。
 この二つの規定は、他のいくつかの条項(第7条(d)、第8条1(d))とあわせて、日本政府が批准の際に「留保」し、今日に至っています。ちなみに、批准の際には、衆参の外務委員会において、留保については諸般の動向をみて検討することが全会一致で附帯決議(1979年6月)されています。また、日本育英会法の審議にさいしては、衆参の文教委員会で「諸般の動向をみて留保の解除を検討すること」が全会一致で附帯決議(1984年7月)されています。
 2001年8月に開催された国連の社会権委員会は、日本政府に対し留保の撤回を検討することを要求しました。そして、2006年6月末までに回答をするように求めました。日本の教育政策は、国際社会から見直しを迫られたのです。ちなみに、国際人権A規約を批准している国のうちで、高等教育における無償教育の漸進的導入について留保しているのは、日本の他はアフリカの2ヶ国だけです。
 シンポジュウムの冒頭で、主催者から、このシンポジュウムに至る経過と故田中昌人氏のことが紹介されました。続いて、三輪定宣氏(13条の会共同代表、千葉大学名誉教授)が、「田中昌人『日本の高学費をどうするか』を読んで」と題して基調講演されました。三輪氏は、田中氏の著書の概要と特徴点をていねいに紹介されるとともに、「『学費』を書名に掲げた著書は希有であり、記念碑的出版といえる」と評されました。
 三輪氏の基調講演を受けて、二人の学生が報告されました。一人は、医学部生の現状と、医学連(全日本医学生自治会連合)のとりくみを紹介されました。もう一人の学生は、私立大学の学費を全額自分のアルバイトで負担している実態を述べ、高学費の深刻さを訴えました。
 つづいて、佐藤和弘氏(龍谷大学)が、EU、とりわけドイツにおける授業料問題の現状について報告しました。その中で、佐藤氏は、ドイツでは、高等教育の有償化の動向がみられることを紹介しました。
 4人の講演と報告を受けて、活発な質疑応答が行われました。学生、市民、大学教員と多様な層からの発言があり、無償教育の漸進的導入についての議論が深められました。シンポジュウム終了後には、「語る会」を開催し、約20人が参加しました。故田中昌人氏のこと、13条の会のことなどについて語り合うことができました。
 なお、13条の会の呼びかけ人は、2005年12月24日現在で65名となっています。共同代表は、次の方々です(50音順、敬称略)。碓井敏正(教員・京都橘大学教授)、重森曉(教員・大阪経済大学学長)、千葉達夫(学生・信州大学理学部)、松本翔子(学生・山口大学医学部)、三輪定宣(教員・千葉大学名誉教授)、森井久美子(市民・NPO団体)。他に1名依頼中です。
 運営委員は、次の6名です(50音順、いずれも教員、敬称略)。今井証三(日本福祉大学)、樫原正澄(関西大学)、佐久間英俊(中央大学)、重本直利(龍谷大学)、細川孝(龍谷大学)、南野泰義(立命館大学)。事務局長は、角岡賢一氏(龍谷大学)です。
 13条の会では、広く呼びかけ人へのご参加を呼びかけています。呼びかけ人へのご参加の連絡は、角岡事務局長(kadooka at biz.ryukoku.ac.jp)までお願いします。
(文責:細川孝(13条の会運営委員会代表))


投稿者 管理者 : 2006年01月19日 00:09

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