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2006年01月27日

ジェンダー研究者、都知事・都教育委員会に抗議文

■「意見広告の会」ニュース322より

ジェンダー研究者の呼びかけで、都知事・都教育委員会に抗議文
「東京都に抗議する!」抗議文賛同者一同 1/24

記者会見には、
○都庁記者クラブ会員以外のメディアから取材にこられる方は、同記者クラブ幹事社にお問い合わせの上お出かけください。電話は、東京都庁03-5321-1111内線58315です。
○趣旨に賛同の方は、どなたでも直接ご参加ください。賛同署名が未だの方は、ぜひ署名してください!
http://www.cablenet.ne.jp/~mming/against_GFB.html

■記者発表資料

ジェンダー研究者の呼びかけで、都知事・都教育委員会に抗議文:上野千鶴子さんの国分寺市「人権に関する講座」委託拒否に対する抗議の意思表示のお知らせ

2006年1月24日

「東京都に抗議する!」抗議文賛同者一同(別添資料II参照)
呼びかけ人:
若桑みどり(イメージ&ジェンダー研究会・ジェンダー史学会・美術史学会・歴史学研究会)
米田佐代子(総合女性史研究会代表)
井上輝子(和光大学)
細谷実(倫理学会・ジェンダー史学会・関東学院大学)
加藤秀一(明治学院大学)

同時資料提供:東京都庁記者クラブ 他(別添資料VI参照)

 1月10日の毎日新聞夕刊によって、東京都教育庁が、国分寺市が都の委託事業として計画していた人権学習の講座で上野千鶴子・東大大学院教授(社会学)を講師に招こうとしたところ、「ジェンダー・フリーに対する都の見解に合わない」などとして、委託を拒否していたことが公になりました。
 
 同報道(別添資料III)によりますと、委託拒否の一因として、上野さんがその講演において「ジェンダー・フリ-という言葉を使うかも」という危惧があったことがあげられています。ひとりの学者/知識人がその専門的知見において、その著書または講演のなかでいかなる用語を用いるかは、学問・思想・言論の自由によって保証されています。まして、その講演が開催され実際に発話されたのではないにもかかわらず、その用語が発せられるだろという「憶測」によって、前もってその言論が封じられたとことに、ジェンダー研究者とジェンダー研究に関心をもつ私たちは、民主主義社会の根幹が揺らぐ危機を覚え、言論・思想・学問の自由の侵害として抗議します。

 抗議は文書(別添資料I)にし、意思表示は、(1)来る1月27日(金)11:50に代表者が東京都庁総務部教育情報課(第二本庁舎27階第4会議室)に赴き責任者にこれを手渡すこと (2)1月27日(金)13:00から都庁記者クラブにおいて大小メディアに対して記者会見し、広く社会に公表すること (3)ウェブサイト(http://www.cablenet.ne.jp/~mming/against_GFB.html)などを通じ、私たちの抗議にさらに多くの賛同者を募ること によって行います。

 お忙しいこととは存じますが、関係各位の取材、会見へのご出席を切にお願い申し上げます。


別添資料I:国分寺市「人権に関する講座」委託拒否に対して「東京都に抗議する!」抗議文
別添資料II:賛同者名簿(1月24日13:28現在340余名)
別添資料III:2006年1月10日毎日新聞(夕刊)
別添資料IV:上野千鶴子さん自身による公開質問状
別添資料V:「東京都の人権意識を考える市民集会」実行委員会の公開質問状
別添資料VI:同時資料提供先一覧

【抗議文】
東京都知事         石原慎太郎 殿
東京都教育委員会 教育長  中村 正彦 殿
東京都教育委員会 各位

抗 議 文

上野千鶴子東大教授の国分寺市「人権に関する講座」講師の拒否について、
これを「言論・思想・学問の自由」への重大な侵害として抗議する

1 言論の自由の侵害について

 報道によれば、今回の拒否の一因として、同教授がその講演において「ジェンダー・フリ-という言葉を使うかも」という危惧があった故だとされている。ひとりの学者/知識人がその専門的知見において、その著書または講演のなかでいかなる用語を用いるかは、学問・思想・言論の自由によって保証されている。学問・思想・言論の自由は、民主主義社会の根幹であり、なんぴともこれを冒すことはできない。

 まして、その講演が開催され、実際に発話されたのではないにもかかわらず、その用語が発せられるだろうという“憶測”によって、前もってその言論を封じたということは、戦前の「弁士中止」にまさる暴挙であり、民主憲法下の官庁にあるまじき行為である。

 このような愚挙がまかり通れば、今後、同様の“憶測”、”偏見 ”に基づいて、官憲の気に入らぬ学者/知識人の言論が政治権力によって封殺される惧れが強くなる。日本が戦前に辿ったこの道を行くことをだれが望むであろうか。それが日本の社会に住むひとびとの幸福な未来を描くと、誰が思うであろうか。

2 学問と思想の自由の侵害について

 ジェンダー理論は国際的に認知された思想・知見・学問である。現在欧米及びアジアの主要大学において、ジェンダー理論の講座を置かない大学はなく、社会科学、文化科学の諸分野でジェンダー理論を用いずに最新の研究を開拓することは困難である。

 いっぽうでは、それは1975年、第一回世界女性会議以降、世界のいたるところで太古から実行されてきたあらゆる種類の女性への差別を撤廃し、人間同士の間の平等を実現するという国際的な行動と連動し、その理論的な基盤を提供してきた。学問と社会的改良とは両輪となって人類の進歩に貢献してきたし、これからもそうである。

 しかしながら、「ジェンダー理論」は、同時期に国際的に認知された「ポストコロニアル理論」と同様に、3~40年の歴史しかもっていない。したがって日本の人々のあいだにその用語および理論への理解が定着するにはまだまだ時間がかかるであろう。

 しかし、それは喧伝されているように「日本の伝統に反する」「外国製の」思想ではない。なぜならば、すでに明治時代からわれわれの先輩たちは、女性もまた参政権を得るために、また女性としての自立権を得るために血のにじむ努力をしてきたからである。この人々は新憲法によってその権利を保証されるまでは、弾圧と沈黙を強いられてきた。いまだに、在日朝鮮人をはじめとする外国籍市民は、参政権すら得ていない。日本の、また世界のひとびとが平等な権利を獲得するための、長い旅程の半ばにわれわれはいる。

 そのようなわれわれ自身の知見と努力の歴史の上に、国際的な運動のうねりと学問の進歩によって、われわれは国際的な用語としての「ジェンダー」とその問題を解明し、解決することをめざすジェンダー理論を獲得したのである。思えば、日本社会に生きるわれわれは、常に有用な智恵を世界に学び、これを自己のうちに内在する問題と融和させ、独自のものとして実践してきたのではなかったか。そこにこそ日本の社会の進歩があった。女性学・ジェンダー研究者は、今まさにそのために研鑽、努力している。その教えをうけた無数の学生、教育現場で実践する教師、地域で活動する社会人は、グローバルな運動の広範な基盤をなしている。上野氏はその先駆的なひとりである。今回の事件についてわれわれは強い危惧の念を覚えている。先人の尊い努力によってようやくに獲得できた思想、学問、行動の自由の息の根を止めさせてはならない。

3 ジェンダーへの無理解について

 ジェンダーは、もっとも簡潔に「性別に関わる差別と権力関係」と定義することができる。したがって「ジェンダー・フリー」という観念は、「性別に関わる差別と権力関係」による、「社会的、身体的、精神的束縛から自由になること」という意味に理解される。

 したがって、それは「女らしさ」や「男らしさ」という個人の性格や人格にまで介入するものではない。まして、喧伝されているように、「男らしさ」や「女らしさ」を「否定」し、人間を「中性化」するものでは断じてない。人格は個人の権利であり、人間にとっての自由そのものである。そしてまさにそのゆえに、「女らしさ」や「男らしさ」は、外から押付けられてはならないものである。

 しかしながら、これまで慣習的な性差別が「男らしさ」「女らしさ」の名のもとに行われてきたことも事実である。ジェンダー理論は、まさしく、そうした自然らしさのかげに隠れた権力関係のメカニズムを明らかにし、外から押し付けられた規範から、すべての人を解放することをめざすものである。

 「すべての人間が、差別されず、平等に、自分らしく生きること」に異議を唱える者はいないだろう。ジェンダー理論はそれを実現することを目指す。その目的を共有できるのであれば、目的を達成するためにはどうすべきかについて、社会のみなが、行政をもふくめて自由に論議し、理解を深めあうべきである。

 それにもかかわらず、東京都は、議論を深めあうどころか、一面的に「ジェンダー・フリー」という「ことば」を諸悪の根源として悪魔化し、ジェンダー・フリー教育への無理解と誤解をもとに、まさに学問としてのジェンダー理論の研究および研究者を弾圧したのである。このことが学問と思想の自由に与える脅威は甚大である。

 以上の理由をもって、われわれは東京都知事、教育庁に抗議し、これを公開する。

2006年1月23日

呼びかけ人  若桑みどり(イメージ&ジェンダー研究会・ジェンダー史学会・美術史学会・歴史学研究会)
 米田佐代子(総合女性史研究会)
 井上輝子(和光大学・日本女性学会)
 細谷実(倫理学会・ジェンダー史学会・関東学院大学)
 加藤秀一(明治学院大学)


投稿者 管理者 : 2006年01月27日 00:23

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