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2006年02月04日

首都大学東京の「固有職員」制度は立命館モデル? 大学職員における有期契約労働者

 東京都立大・短大教職員組合は,機関紙「手から手へ」最新号(2395号、1月25日付)において,首都大学東京にいる「固有職員」の労働条件問題についてニュースを発行している(固有職員のみなさん 4月から年次有給休暇が半日単位で取得可能となりました!)。
 ここでは「派遣法」により派遣されている東京都職員の2007年度末での派遣期間の終了,「団塊世代」の大量退職を迎えるにあたり,「現在雇用されている固有職員すべてを3年の任期切れで「雇い止め」にして、大学の事務体制を 維持するのは困難」であり,「固有職員を期限の定めのない雇用に」すべきと主張している。また,「大学が、労働条件の『格差社会』であってはな」らず,「慶弔休暇を付与することを始め、賃金を含めた労働条件を改善し、2008年以降も安定した大学運営ができるようすることが法人当局に求められて」おり,そのためにも固有職員の組合への結集が大事で「重ねて,組合への加入を呼びかけ」ている。

 首都大学東京の職員には,(1)都からの派遣職員(公務員),(2)法人固有職員、(3)アルバイト等、(4)派遣会社社員という多様な形の勤務形態が存在するようだ。(2)の法人固有職員は,「1年ごとの有期雇用で3年まで更新可というもの」であり,「法人の当初案では、将来的に有期雇用の法人固有職員のみで法人を運営するという構想であった」が、教職員組合によれは,そうした構想は「大学の特性からみて全く非現実的であることがようやく認識されてきた」として「希望する固有職員の常勤化を要求している」。

 ところで,首都大において,東京都からの職員派遣は一定の期限で終了することが初めからわかっていた。そのうえで採用した法人固有職員について,これを全て1年任期(更新を2~3回に制限)の有期雇用にするという構想は,それ自体,実現可能性も含めてどこから生まれたものであろうか。この点について,大学管理本部と教職員組合との交渉過程で,次のようなやり取りがあったことが知られる。「手から手へ,2343号」によれば,管理本部は「任期付職員だけで運営している大学もある」などと主張し,その例として立命館アジア太平洋大学(APU・大分県)における職員の雇用形態をあげたというのである。組合は,これを確かめるため「法人のある京都の立命館大学に調査に行ったところ、立命館大学から派遣されている職員はもちろん、APUが独自に雇用する職員のかなりの部分は、期限の定めのない職員である」ことがわかったという。

 APUの職員が全員,有期契約労働者であるか否かという正確な事実関係(2005年5月1日現在,APUでは役職者を除き期間の定めのない事務職員は75人,契約職員は53人であり,後者は全体の約4割を占める)は別にして,東京都大学管理本部の役人の頭のなかでは,APU(あるいは立命館大学と言い換えることも可能である)はまさに有期雇用体制の「先進的」モデルとしてインプットされていたと言えよう。実際,APU(あるいは立命館)の構造的差別雇用は,他大学を抜きんでており,またどこの大学よりも意識的に作り上げてきた「実績」をもつ。したがって,この側面での立命館の影響力は,関西地域にとどまらない。おそらく,現在問題になっているAPUの「常勤教員」解雇問題によって,その影響力や悪評判は国際レベルにまで達するであろう。

 では,立命館大学は,どのようにしてこのような構造的差別雇用体制を確立しえたのだろうか。この問いは,川本八郎を中心とした理事体制という一方的要因だけでは説明できないように思える。ここには私立大学における正規雇用労働組合の対応(単組レベルのみならず日本私大教連を中心とした連合体レベルの体質も含む)やその下での労使関係のあり方が根深く関わっている。これに対して,国公立大学法人の場合は,概して,上記都立大教職員組合のように,自らの組合に有期雇用者を組織化し改善を図ろうと努力している。

[首都大固有職員問題の参考文献]
「手から手へ」(2343号)
「手から手へ」(2361号)
「手から手へ」(2367号)
「手から手へ」(2370号)
「だまらん」

投稿者 管理者 : 2006年02月04日 03:07

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