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2006年02月24日

湘南工科大学解雇事件、糸山理事長 東京高裁判決に対して無謀にも最高裁に上告

湘南工科大学事件

(2006.02.22)
 2006.02.21 湘南工大糸山理事長は02.08の東京高裁判決に対して、無謀にも、最高裁に上告手続きを取った。
 2006.02.16 「湘南工科大学の解雇撤回闘争を支援する会」は大学正門前で「高裁判決を伝える」PDFビラを配付した。

◇◆◇河口先生が完全勝訴◇◆◇
「懲戒解雇は違法」の判決
東京高裁が学園の訴えを棄却

理事会の訴えを認めず、懲戒解雇が「違法であることは、明らか」との判決くだす

 2006年2月8日、東京高等裁判所(以下「東京高裁」)は、情報工学科の教授である河口央商先生の懲戒解雇事件について、理事会の訴えを棄却する判決を下しました。東京高裁判決は、河口先生に対する懲戒解雇は「懲戒解雇事由が存在しない」から「無効」とし、「雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認するとともに、本案判決が確定するまでの賃金・一時金及び慰謝料の支払い等を認める」旨の横浜地方裁判所(以下「横浜地裁」)の判決を明確に支持しました。
 東京高裁判決は、理事会が懲戒解雇事由とした「交通費不正受給」について、横浜地裁判決よりもいっそう明確に全面否定し、学生の勉学条件や教職員の働く条件を改善して学園を発展させるために活動している教職員組合への不当な攻撃であることを認めました(裏面の「判決文からの抜粋」をご覧ください)。

理事会は最高裁判所に上告するな!!
 上告は湘南工大の社会的信頼を著しく傷つけるもの

 最高裁判所(以下「最高裁」)が上告を受理するのは、判決に憲法違反がある場合、裁判上の手続きに重大な法律違反がある場合などに限られています。今回の東京高裁判決には、そのようなことはまったくありません。
 もし理事会が最高裁に上告するとすれば、それは、来年3月に定年退職となる河口先生の教壇復帰を実現させないための極めて悪質な嫌がらせ、組合攻撃であり、訴訟をいたずらに長引かせ、湘南工大の社会的地位・信用を著しく傷つけるものです。

湘南工大のすべての教職員・学生のみなさん!

 教職員組合は、理事会(糸山英太郎理事長)に対し、上告することなく判決を履行し、河口先生の解雇を撤回して、教壇に復帰させるよう申し入れています。全国の私立大学教職員組合からも同じ要請が寄せられています。
 私たちは、河口先生をすみやかに教壇に戻し、教職員が不当に解雇されるような不正常な状況をなくすことが、湘南工大の教育・研究の発展に資するものであると確信しています。
 湘南工大のすべての教職員・学生のみなさんに、ご理解とご協力をお願いするものです。

判決文からの抜粋

<不当な懲戒解雇をした理事会の責任と慰謝料についての判断>
以上の説示によれば、控訴人(湘南工大)は被控訴人(河口先生)に対して、懲戒解雇事由がないのに本件懲戒解雇をしたものであり、これが違法であることは、明らかである。また、本件懲戒解雇の経過に照らせば、控訴人において被控訴人の交通費の受給を不当とするのであれば、交通費の算定方法を周知させ、誤解があるようであれば、その精算、承認の手続において是正する等の措置を講ずべきものであり、また、交通費の差額の横領を問題とするのであれば、自宅からの実費を精算した場合には受給額が増加する場合を含めて、その行為の実質的違法性を検討すべきものであった。しかるに、上記の周知手段も採らず、長年にわたり精算を承認してきた交通費につき、約12年前に遡り、実質的違法性を十分に検討することなく、故意による不正受給と断定し、懲戒処分の最も重い懲戒解雇にしたことからすると、本件懲戒解雇は、本件救済命令取消請求事件(「組合員であることを理由とした教授任用差別事件」)でも敗訴したのにもかかわらず、被控訴人を学外に放逐するためのものと評されてもやむを得ないものである。また、本件処分の理由は、長年にわたりわずかな旅費差額を大学の取扱に反して故意に私していたとするものであり、被控訴人の大学人としての社会的名誉を損ない、また、研究、教育に多くの支障を生じさせたものというべきである。
 これらの事情を考慮すると、被控訴人の精神的苦痛を慰謝するためには、300 万円をもって相当と認める。(判決文11 頁)

<交通費を不正受給したといって河口先生を懲戒解雇したことについての判断>
横浜地裁判決の判断に加え、
○手続の適正及び懲戒処分事由とされた事実の存在については、懲戒解雇をする被控訴人(湘南工大)において立証することを要する。しかし、本件懲戒解雇の事由とされた20件にのぼる旅費不正受給の事実については、これを認めるに足りる証拠はないというほかない。(判決6~7頁)
○旅費、日当等における実費精算の原則の実施方法については、その費用の性質、一般的金額、審査、精算の便宜等から、決せられる面があり、実費精算の原則も必ずしも一義的なものではない。平成10 年10月13日の団体交渉において、旅費規程における「出張の起点」は「本学」であることが確認されたことが認められ、昭和56 年9月1日当時の出張報告書には「発駅」として「本学」と記載した書式が使用されていた。本件各出張の精算については、いずれも所属長の承認済みであったことが認められる。よって、旅費の起点が事実と異なるものがあったことを前提としても、これを本件懲戒処分事由である「職務に関し不当に金品その他の利益を収受したとき。」及び「重大な反社会的な行為があったとき。」に該当する故意による不正受給と認めることはできない。
○以上によれば、本件懲戒解雇は、その手続の適否を判断するまでもなく、懲戒解雇事由の存在が認められないから、無効というべきである。(判決文7~10 頁)

<憲法が保障する「学問の自由」により、司法審査は理事会の懲戒処分を尊重すべきとの理事会主張についての判断>
○控訴人(湘南工大)の主張が前提とする事情は、一般私企業と共通するものである。本件の懲戒解雇事由は旅費の不正受給であり、(中略)この事実の審査に関して、「学問の自由」として検討すべき事情はない。
○教育、研究機関としての大学における学問の自由は経営方針からではなく,教育,研究の主体たる教授会の判断に委ねられる事項が多いと考えられ,控訴人の学則も,「教授及び助教授の新任及び退任については,学長は教授会に諮らなければならない。」と規定しているところ,本件でこの手続が履践されていないことは,本件懲戒処分が学問,教育,研究の観点からではなく経営の観点からされたことを推認させるものである(控訴人は,懲戒解雇は「退任」に含まれないとの運用が定着していると主張するが,このような運用がされていたとすれば,それは,懲戒解雇事由が学問の自由と無縁な社会的にも非難されるような非違行為であることを前提とすることに求められよう。)(判決文4~5頁)


投稿者 管理者 : 2006年02月24日 00:06

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