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2006年03月09日

日本科学者会議、声明「東京都による国分寺市人権学習講座の講師委託拒否に抗議する」

日本科学者会議
 ∟●声明 東京都による国分寺市人権学習講座の講師委託拒否に抗議する(2006.3.5)

東京都知事 石原慎太郎殿
東京都教育委員会教育長 中村正彦殿
東京都教育委員会委員各位

東京都による国分寺市人権学習講座の講師委託拒否に抗議する

 報道によれば、東京都国分寺市が、東京都の委託で計画していた人権学習の講座で、上野千鶴子・東京大学大学院教授(社会学)を講師に招こうとしたところ、東京都教育庁が「ジェンダーフリーに対する都の見解に合わない」と委託を拒否したため、国分寺市は講座を取り消したとのことである。
 東京都教育委員会は、2004 年、「ジェンダーフリー」という用語が「男女の性差までも否定する過激な男女平等教育の背景になっている」として、教育現場から排除することを決めた。東京都教育庁は、このような東京都の方針に基づき、上野教授の講義がこの方針に抵触しないか国分寺市に「問い合わせ」、その結果国分寺市は計画を中止した、という経緯が明らかにされつつある。
 「ジェンダーフリー」という用語は女性学研究者の間でも解釈が定まっておらず、さまざまな議論がされている。しかし、最近一部のグループは「ジェンダーフリー」という用語は「行き過ぎた男女の同一化につながる」などと主張して、自治体などに対してこの用語の使用禁止を求める活動を進めており、さらに、国際的な共通認識のもとに使用されている「ジェンダー」という言葉の使用禁止や女性学の廃止までをも主張している。
 今回の東京都と東京都教育庁の主観と偏見に基づいた解釈と規制は、性差別の生じた歴史的、社会的背景の認識を歪めるものである。「男女共に、性別による差別的取扱いを受けない社会の形成」を掲げる「男女共同参画社会基本法」の理念にも反するものである。21 世紀に踏み出した今日、安全・安心・平和・環境保全など、人類の平和と福祉に貢献する科学・技術に対する国民の信頼と期待に応える研究者の役割はますます重要となっており、国民に負託された社会的責任を果たすためには、研究者の積極的な権利や地位の保障とその責任と能力ゆえに高い倫理が求められている。
 日本科学者会議はこの観点に立って発言し行動してきたが、さらに発展させるため「研究者の権利・地位宣言」および「研究者の倫理綱領」を確立し、国民的合意をめざして討議をすすめているところである。今回、東京都が国分寺市の人権学習講座講師選定へ介入し、講座中止に追込んだことは、単に上野教授個人に対する人権侵害であるばかりか、日本国憲法や教育基本法で保障された学問・研究、思想・信条・表現の自由を侵し、自治体の啓蒙活動の自由、市民の学習活動の自由を侵害すものであり、強く抗議する。

2006 年3月5日
日本科学者会議

投稿者 管理者 : 2006年03月09日 00:13

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