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2006年04月04日

自由法曹団、東京都教育委員会の「日の丸」「君が代」強制に抗議し、教育基本法の改悪に反対する声明

自由法曹団
 ∟●東京都教育委員会の「日の丸」「君が代」強制に抗議し、教育基本法の改悪に反対する声明

東京都教育委員会の「日の丸」「君が代」強制に抗議し、教育基本法の改悪に反対する声明

1 東京都教育委員会は、2003年10月23日付け通達(「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について」)に基づき、昨年までの間に延べ300名以上の教職員を処分した。さらに、東京都教育委員会は、今年3月13日、「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の指導について」という通達を出して、校長に対し、「学習指導要領に基づき適正に児童・生徒を指導すること」を教職員に徹底することを命じた。この通達は、今年の卒業式において生徒の不起立が発生したことを理由に、2004年3月11日付けの通知(「入学式・卒業式の適正な実施について」)を通達に格上げしたものであり、これに違反する教職員に対する処分を可能にするものである。このような通達を用意したうえで、都教委は、今年の卒業式について、「君が代」斉唱時の不起立者等に対し、新聞報道で明らかになっている限り少なくとも33名の教職員を処分した。思想・信条の自由を保障した憲法や教育基本法の理念に反する極めて不当かつ常軌を逸した措置といわざるを得ない。

2 そもそも「日の丸」「君が代」に対して、どのような意見・思想を抱くかは、国民一人一人の内心の問題であり、自己の思想・信条に基づき「君が代」斉唱に際して「不起立」とした教職員らに対して、行政が「起立」することを命令し、これに従わなかったことゆえに処分することは、憲法の保障する「思想・信条の自由」を明らかに侵害するものである。さらに、これらの通達は、生徒を「教師のためには起立して『君が代』を歌わざるを得ない」という立場に追い込むものであり、生徒らの「思想・信条の自由」をも侵害するものである。

3 1999年のいわゆる「国旗・国歌法」の制定に対しては、多くの国民から「国旗・国歌」の強制につながるとの批判の声が上がった。同法を審議した第145回国会で政府は、そうした批判に対して「学校における国旗・国歌の指導は内心にわたって強制するものではない」、「学習指導要領は、学校すなわち校長や教育に対しての指導の基準」であって、「直接、児童生徒に対して拘束力を持つものではない」旨を明確に答弁した。今回の通達は、この政府見解をも否定するものである。

4 東京都教育委員会の上記各通達等によって損なわれたのは、個々の教職員や子どもたちの思想・信条の自由だけではない。教育という人間的営み自体が破壊されているのである。教職員は、自分が処分を免れるためには、生徒に対して「起立して『国歌』を歌わせる」ことを強要せざるを得ない状況に追い込まれている。本来、子どもたち、保護者、教職員らにとって大切な節目の行事である卒業式・入学式が、東京都教育委員会幹部や指導主事らの監視・立会いのもとにおこなわれるという異様な事態が生じている。これはまさに「教育の破壊」であり、教育基本法が禁じている教育に対する行政権力の不当な介入そのものである。

5 今、文部科学省は教育基本法を「改正」して、教育の目標に「国を愛し」ないしは「国を大切にし」という文言を盛り込むことをねらっている。このことは、自民党がすすめる憲法9条を改憲して世界各地でアメリカとともに戦争ができる国に改変しようとする動きと連動するものであり、教育を戦争の道具にしようとするものである。石原都政は改憲・教育基本法「改正」を先取りして、教育の現場に一連の異常な事態を引き起こしているのである。

6 自由法曹団は、東京都教育委員会に対し、上記各通達の撤回、及び同各通達違反により教職員らに対してなされた処分の撤回、並びに今年の入学式での不起立者等について一人も処分しないことを強く求める。また、教育基本法の改悪に断固として反対するものである。

2006年4月3日 自由法曹団団長 坂 本 修
自由法曹団東京支部長 松 井 繁 明


投稿者 管理者 : 2006年04月04日 00:00

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