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2006年04月14日

大学教育崩壊、非常勤講師の雇止め 教員の委託契約

首都圏大学非常勤講師組合
 ∟●『控室』第58号 PDF版280KB (2006.03.26)

 首都圏大学非常勤講師組合の機関紙『控室』第58号を読んだ。最近とくに関心をもつ非常勤講師の雇止め問題と大学教員の委託契約問題の実態が報告されている。後者の委託契約は,人材派遣会社によるもの,つまり労働者派遣の形態をとるものと,株式会社大学のLECのように個人請負契約によるものがある。
 『控室』第58号では,LECの実態も報告されている。職場でどのような問題が発生し,いかなる時に契約打ち切りとなるかがよくわかる。また,同誌では上智短大の雇止めの事例も報告されている。

 以下,最近の非常勤講師問題の変化を取り上げた記事を転載。

大学教育崩壊

 大学非常勤講師給のみで生活する者たちが中心になって組合を作ってから10年の年月がたった。大学非常勤講師は時間給のパートタイマーである。1コマ(9 0分)の月給は、最低給2万円から3万円である。もちろん保険も保障もましてや研究費もボーナスも退職金もない。しかし相変わらず、学生にとっては専任教員と非常勤講師の区別はない。その教科を教え、学期内に評価を出すという教育条件も、履歴書に学歴、業績を問われ、教授会を経て採用されるという採用条件も全く同じであるからだ。

 この10年間に、私たちの組合と関西の大学非常勤講師組合、外国人大学教員組合などが連携して、文科省、厚労省交渉を何度も試み、ついに私学助成金の大学非常勤講師の補助単価増額に成功した。

 ところが最近この大学非常勤講師に異変が起きている。つまりカリキュラム改正に伴いコマ数が減ったり、雇い止めされたりする講師が増えてきたのである。

 例えば、何年間も外国人非常勤講師として大学で学生を指導してきた者が、大学が外部委託を取り入れたから、もういらないといわれる。委託会社から派遣される講師も同じく外国人講師である。

 ところで外部委託の場合には雇用者は委託された派遣会社となるため、その会社の取り扱う教科の教育責任は大学ではなくなる。つまり教員採用権も、教科の教育内容も学生評価もすべて委託会社の責任となり、大学側の完全な教育責任放棄が明白になる。

 いや大学は教育責任放棄などしていないといって大学側がその委託会社の人事や教育内容に干渉するようなことになると、委託会社の雇用権は侵害され、法律上問題になるはずだ。

 ところが現実には、この外部委託は今から10年ほど前から、大学の教育責任放棄を隠すようなやり方で立教大学などで始まっており、当時は多くの語学の非常勤講師がそのため雇い止めになっていた。それが外部委託は大学経営にとって経費削減の良い方法だとばかりに、あからさまに大学の英語教育を丸投げしたのは首都大学東京であった。

 委託会社から派遣されてくる教師の給与は、委託会社が会社の利益を含んで派遣社員の給与を決めるから、低賃金の我々の給与よりさらに低いことは必然的である。非常勤講師はまだ大学の教育責任で採用されているから、同じく低賃金であっても、文科省や大学の裁量が及んでいる。しかし派遣社員は大学生を教えているにもかかわらず大学に雇われてはいないのだ。

 また、かつての一般教養科目の第2語学は、学生の著しい学力低下を理由に廃止され、そのため非常勤講師が雇い止めになったりする。語学は委託会社に任せるか、コールシステムといって、パソコンを使い語学を自習させ授業に代える大学もある。その場合の教師は、語学を教えるというよりパソコンの使い方を指導することになる。

 そして、科学史、数学、歴史、法学なども、高校レベルのことも分からない学生に、教えても無駄だから高校の教師が教えることになったと、非常勤講師が雇い止めになる。

 国公立が法人化されてから、授業料は私立大学並となり、金持ちでなければ大学に入れなくなってきている。学生の学力低下はむしろ大学のこのような学生蔑視、学生はお客様だという、教育とはかけ離れた考え方から起きているものと考える。学生からは高い授業料を取り、学生が気に入らない授業はなくし、非常勤講師をなくして委託に任せ、教授までも任期制にして、ついに教授会の教学権、人事権を奪う国公立法人も現れる始末だ。

 大学は私立であろうと、法人であろうと、教育研究機関である。教育は貧しい者、体の不自由な者、外国人、年齢の高い者、すべての人が平等に受ける権利があり、学問の自由が守られなければ研究は成り立たない。

 勝ち組にならなくとも、生き甲斐を求めて懸命に努力してきた大学非常勤講師たちの生活権を、経営の論理のみで切り捨てる大学の今のあり方を問いたい。


投稿者 管理者 : 2006年04月14日 01:36

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