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2006年05月18日

都立大・短大教職員組合、評価制度の試行にあたっては労使合意を遵守せよ

都立大・短大教職員組合
 ∟●手から手へ、2407号
【投稿】大学になじまない業績評価とその賃金への反映

評価制度の試行にあたっては労使合意を遵守せよ
あくまでも試行であり、全教職員による監視と事後評価、改善を保障せよ
評価制度フォーマット案と制度運用案は、未完成のものとして、試行の経過を踏まえて、評価者と被評価者との信頼関係、労使の信頼関係の両面が維持される内容に改良を前提としたものである

2006年5月12日 東京都立大学・短期大学教職員組合中央執行委員会

  
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 法人当局は、在籍の全教員を対象に、平成18年度の試行実施として、「教員評価制度の導入について」なる冊子の配布と同時に、平成18年度教員自己申告用紙の配布を予定している。また4月28日付の日本経済新聞に「18年度試行の評価結果は19年度給与に反映する」という団体交渉での合意内容に反する内容の報道も出ており、あたかも、この「試行」が本格実施であるかような誤解が蔓延しかねない状況である。組合は、すべての教員に、事態を正しく把握し、「試行」をあくまでも試行として意味のあるものにするための警戒と注視、そして積極的な発言を呼びかける。

 この件について、組合は、法人当局に対しては、この試行実施案の一部に労使合意に反する部分があることを指摘し、それらの解決なしで見切り発車の試行に反対である。それは主として二点、①「試行」を進める主体となる組織の問題、②評価を公正、透明に行うための、本人開示と苦情処理の具体的方策の欠如、である。
 また、教員諸氏に対しては、今回行われる個人向け自己申告用紙を使った評価の試行があくまでも「試行」であって、法人が一方的に実施するものではなく、この一年間の試行を通して、今後給与制度が改善されるように、また、ともに教育・研究に携わるものとして、評価者と被評価者との信頼関係が維持されるように、必要な見直しと改善がなされるべきものであることを、あらためて強調するものである。

***評価制度の試行に関する労使合意***

 今回の評価制度の試行に至までの過程に、旧大学管理本部が設計し、法人自身が否定した人事給与制度をめぐる混乱があり、2年間におよんで紛糾した労使交渉があることを忘れてはならない。教員敵視とも言える粗雑な旧人事給与制度が教員の大量の流出の原因の一つにもなって来た。組合は、これを厳しく指摘し、当時の法人が提示した非合理的な人事給与制度提案を批判すると共に、再考を求めて来た。そして首都大学の発足後、組合委員長と理事長との直接会談および2度に及ぶ徹夜交渉などの労使の自主的交渉によって、2005年11月30日と2006年1月17日の2回の団体交渉で、新たな人事給与制度についての基本合意に達した。
その際、基本合意の前提として、評価制度については、
 ・教員側が選んだ委員で構成する「年俸制・業績評価検討委員会」で十分に検討すること
 ・評価結果の本人開示や苦情処理制度を確立させ、評価者と非評価者との信頼関係および労使の信頼関係が維持される内容であることを労使で確認している。


***試行を運営する機関を一方的に変えるのは合意違反***
 
 しかし、現在法人側が用意している試行のための機関については、労使の基本合意に照らせば、次の諸問題がある。
 1) 組合と合意した検討機関である、年俸制・業績評価検討委員会(以後、検討委員会と略称)での最終結論であるのかどうか不明なまま、具体的な教員評価制度の試行案と制度の運用案が「人事委員会」で策定されたとする点である。
 2) 2005年度の試行に当り、その運用主体が「人事制度等検討委員会」となるとされているが、これまでの検討委員会そのままで行うことが出来ない事情がある場合には、その理由を明らかにすると共に、新委員会の権限、選出方法、運営方法について、教員側の意思が十分に反映されるものとなるように、事前に組合との協議を尽くすべきである。

****本人開示、苦情処理を欠いた評価制度は合意違反****

 「試行」を意味のあるものとするためには、試行に参加する教員に対して、「高い信頼関係を維持する評価制度を構築するための検討課題の洗い出しへの参加」を呼びかける、法人の姿勢を明確に打ち出すことが必要である。
 1)2007年度の本格的実施というタイムテーブルのみにとらわれて、拙速な試行を行う場合には、評価の本来の趣旨から逸脱するだけでなく、労使関係や教員の士気に悪影響を与えかねない。その結果は事態を一層悪化させるだけである。一番大事な点は、強い信頼関係に基づく評価制度が機能する条件整備を行う努力を惜しまないことである。
2)試行に当り、前提条件として組合が要求した三点を早急に具体化すること要求する。
評価を受ける教員の立場からは、公平で公正な評価方法で透明性の高い運用が堅持されることと同時に、本人への評価経過と結果の開示および苦情処理システムの完備が必要になる。しかしながら、現行では、教員個人が提出した自己申告書は、学部ごとの評価委員会で集約後、新たに立ち上げる人事制度検討委員会に付されることが一方的に決められている。しかも、本人への開示や苦情処理システムについては、人事制度検討委員会で今後検討する、としているだけに留まっており、いつ、いかなる方法で開示され、公平な苦情処理が行われるのか、なんら明らかとなっていない。したがって、①本人開示の次期および方法、②苦情処理方法の次期と方法、③評価結果の給与への反映時期と方法、の三点については直ちに具体化すべきである。

**組合は、評価制度の試行について、労使の基本合意に基づく運用を注視する**

 2006年度の評価制度の試行とその結果は、今後の教員の教育研究および雇用、給与などの労働条件に直接関連するもので、当然ながら組合との交渉を必要とする問題である。組合は、教員諸氏が意欲を持って勤務できる大学であり続けられる様に、今回の評価制度の試行が労使合意に沿って行われることを注視することを宣言する。もし試行の経過と結果について、全教員による十分な検討と改善がなされず、いつの間にか「本格実施」にしてしまう動きがあるなら、また、労使合意の範囲を超えて法人が不当な制度運用を行う意図を持つことがある場合には、安心して働ける大学を維持する立場から、評価制度そのものに反対せざるを得ない。

投稿者 管理者 : 2006年05月18日 00:03

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