個別エントリー別

« 高知工科大、授業評価を点数化し給与に反映 | メイン | その他大学関係のニュース(主に大学別) »

2006年09月06日

大学の正式機関で教基法改悪反対の声明を

新首都圏ネットワーク
 ∟●大学の正式機関で教基法改悪反対の声明を

 佐賀大学の豊島です.

 大学の独法化は教育基本法をないがしろにし,実質改悪するものでしたが,今度はその教基法自体が明文改悪をされようとしています.民主党案も同様ですから,もし与党がこれを「丸のみ」すれば即成立し,憲法にならぶわが国の貴重な財産が一瞬にして失われてしまいます.このような情勢にも関わらず,このメールリストを含め,大学関係者は極めて「冷静」のように見えます.

 原因の一つは,憲法九条と違って,教育基本法が何かと言うことが,大学教員の間でさえほとんど知られていないということにあるでしょう.例えばその10条が何を意味するかなどは,義務教育でもほとんど教えられないし大学入試にも出ないので,これは当然かも知れません.さらに,これが学校で教えられない理由は,文部省,文部科学省が10条違反の行政をやり続けて来たためでしょう.自分の不正に気付かせるような教材はできるだけ隠しておきたいのでしょう.

 しかしこの問題で大学の果たすべき役割は重大だと思います.このまま行けば日本社会が本格的なファシズムに転換してしまいます.それに対する警告を発するのは,それこそ最低限の大学の「社会貢献」です.したがって,教基法の内容の普及と,改悪反対の運動とを同時に,急速に作り上げなければなりません.

 国会が始まる前に,あるいはその出来るだけ早い時期に,教授会や学長など,大学の正式機関で反対声明を出すように努力しましょう.通常の教授会の会議の時間枠や開催のペースではおそらく間に合わないので,臨時教授会を開く必要があると思います.以下は,それを呼びかけるために,組合ニュースに投稿した文章です.発行前ですが,是非このメールリストの皆様に読んでいただきたいと思います.

 どうか,教授会メンバーの方は個人としての責任を果たしていただきたいと思います.また関係諸団体も,単に反対声明や抗議声明を出せばいい,といった官僚的態度をやめ,実際にどうしたら改悪が阻止できるか,その方策を真剣に考えて欲しいと思います.

      豊島耕一
      http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp
      http://www.geocities.jp/chikushijiro2002/Default.html
      http://blog.so-net.ne.jp/pegasus/
      佐賀大学理工学部物理科学科
      840-8507 佐賀市本庄町1
      phone/fax: +81 952-28-8845


(以下は佐賀大学教職員組合のニュースへの投稿です.)

教育基本法改正で日本は北朝鮮化する*

理工学部 豊島耕一

この秋の国会で,教育界の憲法ともいうべき教育基本法が変えられようとしていますが,これには,教育と国家の関係を180度変えてしまうという大きな問題が含まれています.

日本教育法学会は5月27日に政府案の廃案を求める会長声明**
 http://homepage2.nifty.com/1234567890987654321/kaichou~seimei.pdf
を出しましたが,その冒頭で「国民一人ひとりの自主的・自律的な人格形成の営みを保障している現行法を、国家による教育の権力的統制を正当化する法へと転換させている」ことを「看過することのできない重大な問題点」の第一として指摘しています.要するに,教育が「国民のもの」から「国家のもの」へと変えられるのです.これは戦前回帰そのものです.民主党案も同様です.

このような「改正」案が秋の国会で通ってしまえば,東京都の「君が代・日の丸」の強制などに象徴される教育の場の「戦前化」ないし「北朝鮮化」*が,全国に蔓延していくことが懸念されます.しかし問題は決して「君が代・日の丸」に限られるものではありません.教育内容一般が基本的に国の統制下に置かれてしまいます.

このような時に,まさに教育の当事者である我々が,また機関としての教授会や大学が,明確に声を上げることはまさに社会的使命であり最低限の「社会貢献」ではないでしょうか.98年の「ユネスコ高等教育世界宣言」の2条b項はつぎのように述べています.

(高等教育機関およびその職員と学生は)内省、理解、行動を促すために社会が必要とするある種の学術的権威を行使することによって、倫理的、文化的および社会的問題について完全に独立に、そしてその責任を十分に自覚して発言する機会を与えられなければならない。

本学の場合は何よりも,本学の目的を定めた学則の条文の中に「教育基本法の精神」を掲げているのです.これを政府が勝手に改正しようとしているにも関わらず何ら異を唱えないというのは極めて不自然です.

  学則第2条(目的)
  本学は,教育基本法(昭和22年法律第25号)の精神に則
  り,国際的視野を有し,豊かな教養と深い専門知識を生かし
  て社会で自立できる個人を育成するとともに,高度の学術的
  研究を行い,さらに,地域の知的拠点として,地域及び諸外
  国との文化,健康,社会,科学技術に関する連携交流を通し
  て学術的,文化的貢献を果たすことにより,地域社会及び国
  際社会の発展に寄与することを目的とする。

報道によれば,政府は「共謀罪」を棚上げにしても教育基本法改正案を最優先で通過させる決意のようです.是非ともそれぞれの教授会でこれを批判する声明を出しましょう.(9月の教授会でないと間に合わない恐れがあります.)また,学部長,学長など責任ある地位の方々も,是非とも発言する責任を全うしていただきたいと思います.

このような,政府への批判や反対の行動に対しては,「文部科学省から不利な扱いを受けるから止めた方がいい」という声がすぐに聞こえてきます.つまり「大学の生き残りのためにはリスクは避けるべきだ」という「論理」ですが,しかしこの「論理」によって,というよりは臆病さ,腰抜けぶりによって,十数年前には信じられなかったようなところまで,大学は後退して来たのではないでしょうか.また,現行の教育基本法を失うという巨大なリスクと秤にかけられるようなリスクとは一体何でしょうか?

万難を排して,戦争や内乱による多くの生命の損失という以外の,ありとあらゆるリスクを受け入れる覚悟で,全力を挙げて教育基本法の改悪を阻止しなければならないと思います.
-----------------
* この言い方は排外主義につながる恐れがありますが,しかし何と言っても今の私たちにとってもっとも身近な独裁国家は北朝鮮でしょう.右派の言説との重なりを気にしすぎると,表現の幅が狭まります.
** この声明と,8月26日に出された教育学会歴代会長声明は,日本教育法学会 教育基本法研究特別委員会のサイトにあります.
http://homepage2.nifty.com/1234567890987654321/kyokihou.index.htm


投稿者 管理者 : 2006年09月06日 00:00

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://university.main.jp/cgi4/mt/mt-tb.cgi/2261

コメント