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2006年11月01日

秋田県内の国公立・私立大学の教員評価制度、ほんとうにやる気が向上したのか?

■東京読売新聞(2006/10/28)

やる気向上「教員評価制」 学生満足度もアップ 国際教養大が先行導入=秋田

 ◇教育ルネサンス
 県内の国公立・私立大学で、教員の評価制度を導入する大学が増えている。給与や雇用契約に反映させ、教員のやる気と、教育の質を向上させるのが狙いだ。「管理目的の制度」との批判もある中、成果主義は、年功序列で評価されてきた日本でなじむのか。(伊藤崇)

 秋田市雄和椿川の国際教養大学の教壇に立つ山本尚史助教授(41)(経済学)は「学生が退屈にならないように」と常に心がけている。26日午後の講義は「米国の経済政策」。事例にしたのは、農業国のポテトチップと、工業国のICチップだ。学生たちの視線に「厳しさ」をひしひしと感じると山本助教授は言う。学生の評価も、教員評価に加味されるからだ。
 同大は2004年4月の開学当初から、教員の年俸制、任期制とともに、人事評価制度も導入している。課程長ら責任者が教員の自己評価や同僚、学生の評価を判断材料に、教育や研究、地域貢献などの項目ごとに点数化。これを基に、学長が最終的にS、A~E、Xの7段階で絶対評価する流れだ。
 「これまで教室は、教員たちの『王国』という雰囲気があった」という同大の佐々木昌良事務局次長は、「教員と学生のギャップを埋めるには、評価制度は避けて通れない」という考え方だ。評価制度の導入で、学生の満足度も、教員の向上意識も高まったと言うが、それは無理もない。
 各年度の評価は、次年度の年俸に反映され、SとXの年俸差は最大40%。しかも任期3年の雇用契約の更新にも影響しかねない。
 04年度のマイナス評価(D、E、X)は教員32人中5人だったが、05年度は41人中2人、しかもD評価だけだ。一方の標準評価以上は27人から39人に増加しており、効果が現れていると大学側は見ている。
         ◇
 県立大学も06年度の法人化に併せ、評価制度を導入した。教育の質の向上に加え、「県費がつぎ込まれている以上、透明性を高める必要もある」と柚原義久副理事長は話す。年俸制、任期制(教授で5年)も導入。学生評価はないが、有識者による外部評価を組み入れている。

 秋田経済法科大学と、系列の秋田看護福祉大学は今冬の賞与からの導入を決め、秋田大学も検討している。
 先行して成果主義を導入した国際教養大の教員陣は、評価制度が定着している米国で教べんを執った経験者が多く、「日本の国公立大の教員は保護されすぎている」「年功序列ではなく、成果で評価するやり方はいい試み」とおおむね好意的だ。
 学生評価も、学生に迎合した授業を懸念する声もあるが、熊谷嘉隆助教授(46)は「毎回同じ授業ができない緊張感がある。楽しみでもあり、大変でもある」と言う。同大の学生評価には自由記入欄もあり、指摘は千差万別。「学問的にしっかり腰を落ち着けた授業をし、厳しくてもフェアな評価に徹すれば、学生たちも受け入れてくれる」と話す。
 これまで“一方通行”の授業に慣れていた学生にとっても、意識変化はある。国際教養学部1年の藤田武士さん(19)は、「ただ授業の中にいるのではなく、メリット、デメリットを考えるようになった」と実感している。

 ◆「役立たぬ」一部反発も 
 だが、全国では反発も起きている。
 学生評価や論文本数などを基に評価し、研究費を傾斜配分する制度を05年度から設けた北九州市立大学。同大教職員組合が今春実施したアンケートで思わぬ結果が出た。
 評価制度が、教員の能力や資質向上に「役立つ」と回答した人は16・2%だったのに対し、「役立たない」は83・9%に上った。
 「北九州市政を批判した研究でも、評価してくれるのだろうか。評価が管理の手段に使われ、教員の意欲は下がるだけ。本当にいい研究を模索する方向にはいかない」。制度撤廃を要求している組合長の小賀久・助教授(48)はそう懸念している。


投稿者 管理者 : 2006年11月01日 00:01

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