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2006年12月05日

滋賀県立大学教職員有志、教育基本法「改正」に反対するアピール

教育基本法「改正」に反対する滋賀県立大学教職員有志のアピール

 去る11月15日、「教育基本法改正案」が、与党による単独採決によって衆議院を通過しました。現行の教育基本法は、1947年の制定以来、日本社会の幅広い構成員から支持され、また、その内実が鍛え上げられてきました。いくつかの時代的制約を受けた限界を内包しているとはいえ、そのような現行の教育基本法が、なぜ、このような強引かつ拙速な手続きで、「全面的に」改定されなければならないのでしょうか。現在審議中の改定案を見る限り、わたしたちは強い憤りを抱かずにはいられません。

 第一に、その内容の如何にかかわらず、「教育の目標」を国家が法で規定する際には、教育の自由、思想・信条の自由の尊重の観点から、抑制的であるべきです。にもかかわらず、改定案は、戦前の「教育勅語」に逆戻りするかのように、社会的にも異論の多い徳目を「教育の目標」として20以上も挙示しています。国家が恣意的に解釈・判断する態度の「達成」を教育に求める改定案のあり方は、日本国憲法が認める精神的自由を著しく侵害するものです。

 第二に、改定案は、学問の自由・大学の自治を奪い、国家による大学の教育・研究に対する強力な介入を可能にするものです。そこでは、大学の教育・研究は、時々の政府が国会の審理すら受けずに策定する「教育振興基本計画」における目標・評価に従わねばなりません。教育・研究の自由が失われるのはもちろんのこと、短期的な成果達成が金科玉条になり、長期的な見通しをもった研究がやせ細っていく恐れがあります。

 第三に、性別によって教育機会に差ができることを禁じた「男女共学」条項の削除、新設された障害児教育条項に特に顕著にみられる能力差別的な教育の肯定など、改定案は、これまで日本社会に生きる無数の人々が、歴史に学び、不断の努力で獲得してきた価値や理念をないがしろにするものです。また、現在の日本の公教育が抱え、克服しなければならない差別・選別、格差をさらに強化しようとするものです。

 滋賀県立大学は、開学以来、「キャンパスは琵琶湖、テキストは人間」をモットーにしてきました。わたしたちは、自らが学び、研究する琵琶湖周辺の地域に、またここに繋がる広い世界に多種多様な人々が存在し、それぞれの文化を育み、社会生活を営んでいることを深く理解し、その姿に学びながら平和で民主的な社会の形成に寄与することをめざしています。改定案は、こうした滋賀県立大学の教育・研究理念と真っ向から対立するものと考えざるを得ません。ここに、わたしたち滋賀県立大学教職員有志は、「教育基本法改正案」に反対の意を表明し、同案を廃案にすることを強く求めます。

2006年12月3日
滋賀県立大学教職員有志

「呼びかけ人」事務局
竹下秀子・京樂真帆子・河かおる・松田洋介

2006年12月4日現在の賛同者数 計55名(名前は省略)

[新聞報道]

以下は,京都新聞(12/04)より

教基法案の廃案を訴え 滋賀県立大教職員有志

 彦根市の滋賀県立大教職員有志は4日、「教育基本法『改正』に対するアピール」を公表し、参院で審議中の同法案の廃案を訴えた。

 竹下秀子・人間文化学部教授や京樂真帆子・同助教授ら4人が呼びかけ人となり、教職員計55人が賛同した。

 アピールは、教育基本法の改正案について「学問の自由・大学の自治を奪い、国家による大学の教育・研究に対して強力な介入を可能にする」など3点の反対理由を挙げた。その上で「平和で民主的な社会の形成に寄与することをめざす滋賀県立大の教育・研究理念に真っ向から対立する」としている。


投稿者 管理者 : 2006年12月05日 00:04

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