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2006年12月05日

岩手大学教職員有志、教育基本法「改正」案の廃案を求めるアピール

■「意見広告の会」ニュース378より

「教育基本法『改正』案の廃案を求める岩手大学教職員有志アピール」の取り組みの結果について

  2006年12月2日    

同アピール・呼びかけ人代表 横山英信
    (岩手大学人文社会科学部)

 「意見広告の会」ニュース376号で御紹介いただいた,「教育基本法「改正」案の廃案を求める岩手大学教職員有志アピール」の取り組みは11月30日に賛同者の集約を行いました。
 その結果,135名の方から御賛同をいただき,呼びかけ人18名と合わせて153名の連名で12月1日に以下のアピールを発表しました。
 岩手大学の全教職員は約810名ですので,153名はこの約2割に相当します。とくに人文社会科学部と教育学部ではそれぞれ教員の過半数が呼びかけ人・賛同者になって下さいました。
 私たちの取り組みは,「改正」案が11月16日(木)に衆議院本会議で強行採決されたことを受けて,11月21日(火)に全教職員に向けて「アピール」への賛同を呼びかけ,30日(木)に賛同者の集約を行うという,「勤労感謝の日」,土・日を除く正味7日間の「短期決戦」でした。
 このような短期間にも関わらず,135名もの方が賛同者(名前公表)になって下さったことは,「改正」案の内容と審議過程がいかに多くの問題点を抱えているかを岩手大学教職員の皆さんが認識しているかを示すものです。
 集約日翌日の12月1日(木)に,岩手県庁で「有志アピール」についての記者会見を行いました。これについては,12月1日の「岩手日報」夕刊,12月2日の「朝日新聞」岩手県内版などに掲載していただきました。また,1日付で「有志アピール」を参議院教育基本法特別委員会委員長,参議院議長,各政党に送付しました。
 この「有志アピール」の取り組みを踏まえて,今後も学内外で「改正」案廃案に向けて様々な取り組みを行っていくつもりです。
 全国の皆さん,情勢は厳しいですが,御一緒に最後の最後まで頑張りましょう。



教育基本法「改正」案の廃案を求める岩手大学教職員有志アピール

2006年12月1日

 岩手大学に学び,働く,学生・教職員の皆さん。岩手県民の皆さん。私たち岩手大学の教職員有志は,学校教育に携わるものとして,現在,参議院に送付されている教育基本法「改正」案が,その内容,審議手続きから見てあまりにも多くの重大な問題を含んでいると考え,国会に対してこれを廃案にするよう強く訴えるものです。

「改正」の目的はどこにあるのか
 現行の教育基本法は,日本国民をアジア・太平洋戦争に駆り立てた一因が教育勅語を中心に据えた戦前の国家主義的教育にあったという反省を踏まえ,主権在民・基本的人権の尊重・平和主義の3原則を根幹とする日本国憲法の理念を実現するため,国民を個人=人間として尊重し,一人一人の豊かな人格を形成することを目的として制定されました。

 しかるに今回の教育基本法「改正」案は,この理念を180度転換し,子どもたちの健やかな成長を保障するための教育ではなく,国家のための教育を行おうとしています。これは,「改正」案が,第2条(教育の目標)において,「公共の精神」や「我が国と郷土を愛する態度」を養うなど,その内容が多義的な文言を法律に明記することによって,政府がその意味・内容を定め,国民に押しつけることになりかねないものとなっていること,また,第16条(教育行政)や第17条(教育振興基本計画)において,政府が教育に関する多様な意見に耳を傾けることなく,教育内容を上から定め,それを評価と財源配分によって全国津々浦々まで徹底させようという内容になっていることなどに明瞭に見てとることができます。これは大学における学問の自由にとっても大きな問題です。

今求められていることは現行教育基本法の理念に沿った教育行政ではないか
 現在の日本社会における子どもたちをめぐる様々な問題については,私たちも心を痛めており,またこれに対する早急の対応が必要だと考えています。しかし,これらの問題は,現行教育基本法が原因で起きたものでしょうか。

 子どもたちをめぐる問題は一般社会と切り離されたところに存在するわけではありません。子どもたちの世界は大人社会の反映です。子どもたちをめぐる諸問題を根本的に解決しようとするならば,競争第一主義,経済第一主義の中で人が人として尊重されていない今の日本社会そのものを見直すことが必要でしょう。

 また,教育の側に問題があるとするならば,その責任は現行教育基本法にあるのではなく,基本法の理念に一貫して背を向けてきた現行の教育行政にあると言うべきです。教育現場で実際に行われてきた教育は,基本法の理念に沿った教育を望む多くの国民・教職員の声を無視した,政府方針に沿った教育行政が色濃く反映されたものだったからです。教育分野で今求められているのは,基本法を「改正」することではなく,基本法の理念に沿った教育行政を行うことです。

教育基本法を「改正」する合理的な理由は示されたのか
 今国会で教育基本法「改正」案が上程されて以来,いじめ自殺や単位履修不足などの問題が次々に発覚しました。これらは現在の教育をめぐる矛盾が集中的に現れた問題です。しかしながら,「改正」案の国会審議において,教育基本法の「改正」によってこのような問題が解決されるかとの質問に対して,政府は「基本法とは別問題だ」とするだけでした。ここから見えてくるのは,基本法を「改正」しようとしている政府・国会議員たちは実際に起きている問題にどう対処するかにはほとんど関心が無く,ただただ教育への国家統制を強めたいがためだけに基本法を「改正」したがっている,という事実です。

 また,この間の国会審議の中で,内閣府の「教育改革タウンミーティング」において文部科学省が教育基本法「改正」に賛成する「やらせ質問」を行っていたことが発覚しました。これは政府による完全な世論誘導であり,民主主義の原則からも許されるべきことではありません。このような民主主義に反する行為を行っていた政府に,そもそも教育の根幹に関わる法案を提出する資格などないと言っていいでしょう。

 政府・与党は,11月15日の衆議院特別委員会での与党単独採決,16日の衆議院本会議での与党単独採決にあたって,「前国会から100時間を超え,審議を尽くした」と言っていますが,「現行教育基本法のどこが問題か」「なぜ,変えなくてはいけないのか」について政府からの説得力のある説明はほとんどありませんし,先に触れたように現在起こっている諸問題の解決と教育基本法「改正」は無関係だとも言っています。いまだ,基本法を「改正」する合理的な理由は何一つ示されていないのです。

教育基本法「改正」案は廃案に
 このような中で,「この機を逃したら2度と改正ができなくなる」「成立させられなかったら内閣の求心力が落ちる」「党のイメージダウンを避けるために,来年の統一地方選挙,参議院選挙の前に成立させておきたい」などの理由で,今国会で「改正」案成立を強行するなど言語道断です。

 世論調査を見てみても多くの国民は今国会での成立を望んでいませんし,また,11月15日の衆議院特別委員会での採決にあたっては,多くの新聞が社説・論説で,「改正」案の内容や国会審議の進め方について批判しています。

 私たち岩手大学教職員有志は,今国会において政府提出の教育基本法「改正」案を廃案にし,教育をめぐる国会での論議については一から出直すことを求めるものです。

教育基本法「改正」案の廃案を求める岩手大学教職員有志アピール
  呼びかけ人・賛同人

  【呼びかけ人】18名(名前は省略)
  【賛同人】 135名(名前は省略)
  合計 153名


投稿者 管理者 : 2006年12月05日 00:03

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