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2006年12月06日

横浜市立大、昇任人事・教員評価制度問題の回答 新たな考えの提示

大学改革日誌
 ∟●最新日誌、12月4日(4)
横浜市立大学教員組合
 ∟●組合ウィークリー(2006.12.4)

最新日誌、12月4日(4)より

 12月4日(4) 教員組合ウィークリーが届いた(Pdf版)(教員組合HPにも掲載とのこと)。

 これによれば、任期制に関するきわめて重要な当局の態度(変更)が示された。「任期制に同意しないでも昇任」とのこと。

 これは、公立大学法人発足以前の公務員としての教員身分(昇任基準・手続き等、教育公務員の身分に付属する諸権利・諸保証)を確認するものとして、朗報である。法人経営者が責任ある自立的態度を確立しつつあるものとして、また、これまでの組合との交渉を踏まえながら、合理的合法的判断を示すようになったこととして、すなわち労使関係における正常化(の一歩前進)として歓迎したい。組合執行部の奮闘に感謝したい。

 将来への不安で困惑していた教員にとっては、今回の法人の態度表明は本学に留まって前向きに教育研究活動に専念する意欲を回復させる重要な要因となろう。、したがって、建設的な相互関係を構築していくことを可能にする重要な確認として、今後の多くの昇任候補者とともに、ひとまず、この一歩前進を喜びたい。

 それにつけても、当面の社会的経済的等の不利益をものともせず(いつこのような法人の態度変更があるかまったく分からない不安な状態で)、任期制に同意しなかった教員に、その筋を通したことに対して敬意を表したい。その筋の通った態度こそが、背後に控える数多くの教員の気持ちとあいまって、法人の態度を一定程度、合理的合法的なものに変化させたものと解釈したい。合理的合法的な態度は、法人経営においても大学の教育研究においても、構成員の健全な総力の結集において不可欠であろう。

 ウィークリーが伝える法人サイドの態度には疑問もある。
 任期制に「同意したもの」と「同意しないもの」との間には、賃金面での差別をつけるという。
 その場合、問題は、そのやり方が真に任期制の趣旨に合致しているかどうかである。教員の教育研究の活性化、意欲増進・実績増進につながるかどうか、そのことが問題となるであろう。北九州市立大学における実際では、教員評価のあり方が賃金や研究費に直接的に反映されるやり方は、高い評価を受けたもの(研究費増額のもの)にとっても不評である。

 その意味では、「制度に同意すれば賃金をプラスアルファする」ということが、はたして活性化につながるか、疑問である。良く検討してみる必要がある。ウィークリーから読み取れるかぎりでは、「同意か不同意か」が、各教員個人の研究教育の実績や活性化とどのように結びつくのか、提案の趣旨(内容)は理解しがたい。

 賃金の引き上げ(プラスアルファ)は、やはり妥当な実績(適正な評価)に基づかなければならず、「単に任期制に同意すれば賃金がプラスアルファ」というのは、法人の政策に「同意する忠実・従順なものには褒美をあげる」ということになる。そうであれば、活性化というよりは、従順さ・忠実さのみが評価基準ということになりはしないか。教育研究の実績との関係はどうなっているか?

 今回示された提案(あるいは構想)は、教育と研究の実績を上げるということ、その意味での活性化の手段の一つという制度・法の趣旨に合致しているとは思えないが・・・。教育研究における実績ではなく、管理体制・「お上」への従順さと忠実さがプラスアルファ評価の対象となるとすれば、大学は堕落するであろう。真の意味での活性化とは正反対となろう。

 任期制に同意し、種々の管理職に任命されているものは、すでに管理職手当てとして、プラスアルファが出されているはずである(ただし管理職手当ては一般のこと、任期制導入以前からのもので、管理職「在職中」・管理職「任期中」のプラスアルファだが・・・したがって本来は「任期制への同意」の有無とは関係がないはず、・・・その意味では「任期制への同意」を管理職任命に結び付けているとすれば、公務員時代に比べて、管理職任命における不利益措置である、それとも任期制に同意した管理職には、同意しない管理職に比べてプラス・アルファがあるのか?)。その管理職手当てと見合うような意味での教育・研究専念教員の業績(研究・教育実績)が適切に判断できるかどうか、といったことも問題になりうる。管理職は、教育負担を軽減されており、その負担軽減は実質的には彼らへのプラス評価となっている。

 とすれば、管理職負担にともなう担当コマ数削減(給与の実質プラスアルファ)に見合って、教育における負担コマ数の多いものが実績としてプラス評価されるということも必要となろう。そのためには、まず、負担コマ数の基準・平均(受講者数なども勘案する必要があるかもしれない)も確定する必要があろう。何故なら、この間、不安定な雇用関係、不安定・不確実な昇任基準(制度)、不安定・不確実なカリキュラム体系(移行期における問題)もあって、かつて確立され了解されていた負担に比べて過剰に負担している教員も見られる。しかし、その過剰負担に関して、プラスアルファが支給されているという話は聞かないのである。かつて、私学に在職していた時の経験では、ノルマ(基準コマ数―4コマ)を越えるコマ数は、オーバータイムと評価され、一定額のオーバータイム手当てが支給された。私学においてはごく普通のことであろう。それはまた普通の職員(管理職以外の職員)における残業手当に見合うようなものである。

 以上でもなお、研究実績に見あうプラスアルファをどのように評価するかということが問題として残る。いずれにしろ、教員組合での真剣な検討を期待しよう。


投稿者 管理者 : 2006年12月06日 00:00

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