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2006年12月07日

全大教、「今なぜ改正か」及びやらせタウンミーティング問題、いじめ自殺、必修科目未履修問題の解明無しで、教育基本法「改正」案を強行する愚行は許されない

新首都圏ネットワーク
 ∟●「今なぜ改正か」及びやらせタウンミーティング問題、いじめ自殺、必修科目未履修問題の解明無しで、教育基本法「改正」案を強行する愚行は許されない

「今なぜ改正か」及びやらせタウンミーティング問題、いじめ自殺、
必修科目未履修問題の解明無しで、
教育基本法「改正」案を強行する愚行は許されない

2006年12月5日 全国大学高専教職員組合中央執行委員会

 教育基本法「改正」案は、安倍内閣の最優先課題に位置づけられて、11月16日に衆院で強行採決された。これほど重要な法案を強行するだけの正当性を疑問とする社説、投稿意見は少なくない。現在の衆院議員は小泉郵政解散選挙で選ばれた人々であり、また、教育問題はマニフェストにも無かった。一転して、安倍首相はその総裁選公約において新憲法を目指し、第9条を改めて「戦争をできる国」を、そしてそれを担う人づくりには教育基本法「改正」が必要であると唱えだした。

 当初の世論では、教育基本法「改正」が、つぎつぎと起きる教育問題解決に役立つという幻想を持つ意見が多かったが、安倍内閣の新憲法への準備としての教育基本法「改正」強行という本質が明らかになり世論にも変化がみられる。

 個々人の人格・可能性を尊重し、権力の教育への介入を制限する現行教育基本法を葬り、教育を国家の政策達成への手段に歪めるという意図を危惧する世論が急速に広がっている。遅ればせながらも衆院での強行採決あたりからマスコミ等も教育基本法「改正」の狙いの反教育性を指摘するものが多く書かれるようになった。

 全大教は、「改憲に道をつける教育基本法『改正』に反対する」という立場を明確にして、広く大学内外での反対の取組むことを提起してきた。教育関係団体との共同の必要性を訴えて、日教組や全教、私大教連、公大連等との共同の取組みをすすめてきた。

 衆院での審議では「改正」の根拠となる立法事実を具体的に示せず、また、なにを目指す改正かもまともに示さずに、ただ「制定後、60年を経たから」という説明にもならない言辞を繰り返している。やらせタウンミーティングやいじめ自殺、必修科目未履修問題などの教育問題とこの「改正」とは別である、と逃げている。教育基本法「改正」は、これらの根本的理解、解明なくして、何のための「改正」か、疑問である。これまでのところ教育基本法「改正」の目的、改変の構造などの審議が深まったとは言えず、人間教育の理解を欠いた政略的な法律の文言、制度いじりのごまかしの説明に終始している。

 ここで大学・高等教育について教育基本法「改正」がもたらす基本的問題について確認しておきたい。

(1)「改正」案は、第7条に大学の条を新設したが、このことは「改正」案の法構造の点では第2条の問題のある教育目的の教育システムに編入させられることになり、国策教育システムに組み込まれ、ひいては学問の自由(日本国憲法第23条など)に依拠する大学、高等教育の基本原則の形骸化を招くものである。

(2)「改正」案は、公教育システムを自主的、自立的な営みと位置づけるのではなく、「この法律及びその他の法律の定めるところにより行われるべきものであり」(第16条)とする。さらに、「政府」(内閣の意味になる)は教育の総合的かつ計画的な推進を図るために、「教育振興計画」を定めることにしている(第17条)。法律に基づくものであれば、大学・高等教育への介入も正当とされ、かつ、時の政府が学問、研究教育へ計画で指示を行うことが可能となる仕組みを備えている。

(3)大学・高等教育の目的、役割は、「改正」案の教育目的に拘束され、法律や振興基本計画に誘導されて、科学、学問が持つ少数意見からしか始まらない真理の発見という特性や権力や多数意見への疑問、批判というこれまで確認されてきた人権としての「学問の自由」の公の目的が許容されなくなる。学問、科学の開かれた発展は阻まれることになる。

 教育基本法「改正」のこの国会での審議中に重大な教育課題として浮上してきた、やらせタウンミーティングの世論操作、いじめ自殺、必修科目未履修と「改正」問題を切り離そうとしているが、こうした現前の課題に向き合わずに、教育基本法「改正」を語ることは許されるだろうか。それとも、「改正」の先取り的に政府の教育再生会議に丸投げで法律も無視するということなのか。3つの課題のうち、大学・高等教育に重要な関連をもつ必修未履修の問題について、対岸の火事として見過ごすことはできない。

 必修科目未履修問題が公表され、それに対して、教育委員会の学校教育への調査、監督責任、生徒への進学保障上の責任感から校長の自殺を生むなどの学校長のカリキュラム監督責任、大学進学競争での高校教育の歪みの指摘、週5日制とゆとり教育のひずみの影響などが糾弾を含めてかまびすしく指摘された。そして、生徒の進学保証や修学保証責任として、卒業までに不足授業時間数を補習で埋めることとする措置がとられることになった。学習指導要領を教育内容の国家基準として必修科目、時間数などに法的制裁を課しうるどうか、に疑問の声も少なくないことも触れておく。

 この問題の原因、要因の解明には、学校教育の体系、階梯のあり方に関わる重大な問題が関わっている。教育基本法「改正」は、学校階梯の接続を含めて子どもの学習、教育を受ける権利の保障の原則が欠落しており、とりわけ、高校教育のゆがみを解明しなければ、わが国の教育の基本問題の解決はありえない。また、大学のあり方が中等教育、初等教育のあり方を規定すると言われてきた。大学の入試制度が高校教育のあり方、内容に大きな影響をもたらしている。必修科目未履修問題は、大学入試のあり方も問われることであり、また、大学教育の導入教育等の課題とも密接に結びつく課題である。

 今、参議院での審議が続き、かつ、臨時国会の日程も少なくなる中で、大学、高等教育を担う教職員を組織する全大教として、教育基本法「改正」が持つ問題性を指摘し、大学、高専等で抗議の取組みを広め、強めることを訴える。かつ、参議院での審議でまっとうな教育論議を求め、会期などに拘泥する愚かな判断をしないように強く要請活動に取り組むことを呼びかける。


投稿者 管理者 : 2006年12月07日 00:01

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