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2006年12月13日

龍谷大学教員有志、教育基本法「改正」案の廃案を求める声明

■「意見広告の会」ニュース384より

教育基本法「改正」案の廃案を求める龍谷大学教員有志の声明

12/11

 安倍内閣は、発足以来、教育基本法「改正」案の成立を最優先の政治課題としてきました。政府・与党は、その成立に向け「子どものモラルや学ぶ意欲が低下している」、「個性の尊重や個人の自由が強調されすぎ、規律や責任、『公共の精神』が軽んじられてきた」といった「改正理由」を喧伝しています。
 このような問題は、教育基本法の「改正」で解決するものではありません。むしろ、この「改正」案が成立することによって、教育における市民の自主と独立は否定され、この種の問題はいっそう深刻になるに違いありません。
 審議されている教育基本法「改正」案の第1の問題点は、「国を愛する態度の涵養」をはじめとする膨大な徳目の列挙による人格形成規範の明文化です。「国を愛する」こと自体については、多様な理解がありえましょう。しかし、どのような理解に立つにせよ、法律上・教育行政上の力で「国を愛する態度」を強要することがあってはなりません。ましてや、教育基本法は、その制定経緯から明らかなように、不戦を誓った日本国憲法と一体のものとして制定されたものですから、なおのこと、このたびの教育基本法「改正」案は、憲法の不戦の誓いを放棄する流れの一環にほかならないと思わざるをえません。

 第2の問題点は、新自由主義的・競争主義的な教育への「構造改革」が強く意識されている点です。このような「改革」は、ただでさえ競争主義的教育によって格差が拡大されつつある社会の現状を改善するどころか、いっそう悪化させるように思われます。私たちは、このような方向性をもったこのたびの「改正」案に強い懸念を覚えます。

 第3の問題点は、教育現場の自主性が奪われ、教育行政による中央集権的な支配が導入されることです。政治・行政が教育に介入することを禁じている現行法第10条は「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」と定めていますが、このたびの「改正」案はこの教育の自主性の見地を転換し、法律や「教育振興基本計画」の策定を通して、政府・文科省による教育内容への介入を強力に押し進めようとしています。

 第4の問題点は、このたびの「改正」案が「大学」についても規定を新設して、「成果の社会への提供」の名のもとに、大学を産学協同・連携に動員しようとしていることです。私たちは、こうした「改正」案によって、均整をとるべき科学・学問の発展が歪められ、ひいては大学の自治・学問の自由が根底から覆されることを強く懸念しています。

 このたびの「改正」案は以上のような重大な問題点を含んでいます。加えて、政府自体がタウン・ミーティングで「ヤラセ質問」を繰り返すなど、不祥事が激発しているなかで、国民的課題であり将来を左右する教育基本法の「改正」を拙速に行うべきではありません。今からでも遅くありません。私たち龍谷大学教員有志は審議中の「改正」案を直ちに廃案とするよう求めます。同時に、今こそ日本国憲法・教育基本法に基づく教育の実現をはかることを訴えるものです。

 2006年12月11日


投稿者 管理者 : 2006年12月13日 00:03

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