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2006年12月18日

自由法曹団、教育基本法「改正」案の強行採決に断固抗議する

自由法曹団
 ∟●教育基本法「改正」案の強行採決に断固抗議する

教育基本法「改正」案の強行採決に断固抗議する

 与党は、2006年12月14日、参議院教育基本法特別委員会で、引き続き、同月15日参議院本会議で、野党全議員の反対を押し切って、教育基本法「改正」案を強行採決した。国民世論を無視し、民主主義を蹂躙するこの暴挙に、自由法曹団は断固抗議する。

1 国民の声を無視した暴挙

 11月28日付日本経済新聞の世論調査によれば、「今国会で成立させるべき」との回答が19%、「今国会にこだわらず慎重に審議を」との回答が55%という結果が出ている。NHKの調査では、この法案に賛成する人の中でも66%が「今国会に限らず慎重にすべき」と答えている。慎重審議を求めるこのような世論は、衆議院で法案が審議されていたときから一貫している。
 11月25日付朝日新聞の世論調査は、教育基本法を変えると「よくなる」が4%、「悪くなる」が28%、「変わらない」「わからない」が68%である。教育基本法を変える必要を認める国民は極めて少なく、逆に悪くなる・変わらないと考える国民が圧倒的多数であることを示している。国会周辺で連日にわたる座り込みやヒューマン・チェーンの行動が展開され、全国各地に法案反対の運動が広がったのは、こうした世論のあらわれである。
 日本の弁護士が全員加入している日本弁護士連合会は4度にわたって反対の意見を発表し、全国の52単位弁護士会のうち50弁護士会が反対・慎重審議を求めて意見書を公表した。自由法曹団は、法案が参議院に移った11月17日、「弁護士からみた教育基本法『改正』の問題点」を全議員に届けたのをはじめ、「立法事実の再検証を求める-『やらせ』タウンミーティングが意味しているもの」を発表し(12月4日)、文部科学省・自由民主党・公明党に対し憲法との関係を中心に法案の問題点について「公開質問状」を送付する(同月12日)など、問題の指摘を続けてきた。
 研究者・教職員など教育界は一致して反対を表明し、反対の声は学生・生徒にも広がった。新聞・テレビなどのメディアも批判の声をあげ続けている。
 与党の採決強行は、こうした国民の声を一切無視し、数の論理にだけ頼って法案の成立を図ったものである。国民を無視し、民主主義を踏みにじるこのような暴挙に対し、強く抗議する。

2 行政の責任を隠蔽した道理なき採決

 国会審議が始まって以来、学校でのいじめ自殺問題、高校必修単位未履修問題、タウンミーティングでの「やらせ質問」等、文部科学省や教育委員会・学校管理者の無責任な体質が明らかになっている。
 12月13日、タウンミーティング174回についての調査報告書が公表された。それによれば、国が出席者に対して発言の依頼をなし、これを受けて一般参加者を装った「さくら」発言が105回にのぼっている。政府は担当省庁のリードのもとに内閣府主催の「やらせ」「さくら」発言を積み重ねて、「国民の声を聞いた」と称しているのであり、このことは教育改革についてもまったく同様であった。
 このような文部科学省の無責任な教育行政の責任、タウンミーティング時の官房長官であった安倍首相の責任は重大である。その責任を曖昧にしたままの採決強行は、明らかに道理に反する行為である。

3 「戦争する国」は許さない

 法案は、国家の教育への介入を許し、愛国心をはじめとする徳目教育を法定化することによって、「あるべき」国民の姿を作り出そうとするものである。憲法9条の改悪を中核とする自民党新憲法草案が発表され、軍事大国化が進められようとしている今、「あるべき国民」をつくりだそうとする教育基本法「改正」は、このような新憲法草案と一体となって、我が国を「戦争する国へ」と導くものであり極めて危険なものである。このことは、「新憲法草案との整合性はチェックしている」と答弁した政府・文部科学省が自認しているところでもある。
 自由法曹団は、こうした教育基本法「改正」案を数の力で成立させた暴挙に怒りをこめて抗議するとともに、今後とも「戦争する国づくり」「戦争する人づくり」にあらゆる機会を捉えて反対し、憲法を守り抜いていく決意を表明する。

2006年12月15日

自由法曹団
団 長 松井繁明

投稿者 管理者 : 2006年12月18日 00:05

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