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2007年01月30日

APU常勤講師解雇事件、地位保全仮処分裁判 即時抗告申立書

立命館教員ネット
 ∟●即時抗告申立書 抜粋
 ∟●福岡高裁 即時抗告事件 主張書面( 抗告人1)抜粋

即時抗告申立書より

……

第4 争点(4)解雇権濫用法理の類推適用の有無について

1 原決定の特徴
 解雇権濫用法理の類推適用に関する原決定の特徴は、まず抗告人の主張する積極事情から有意な事情を選びだし、その有意な事情と、消極事情を比較考量し、継続雇用への合理的期待があったか否かを判断している点である。

 雇い止めの裁判例中、このような判断枠組みをとっているものは見あたらない。書証として提出している裁判例を見ても(甲第37号証ないし39号証)、すべて積極事情、消極事情を並列的に列挙した上で、総合考慮の上、判断をしている。

 原決定の判断枠組みは、積極事情、消極事情を平等・対等に評価せず、結局のところ、積極事情を過小評価し、消極事情を過大評価(消極事情を判断するに際しては、債務者主張事実のうち、何が有意な事情で、何が有意でない事情なのかすら、判断していない)するために用いられており、抗告人の主張を認容しないために考え出された、特異な判断枠組みである。

 以下においては、上記特徴を踏まえ、まず抗告人が積極事情として主張した事情は、すべてが継続雇用への客観的合理的期待を裏付ける事実関係であることを明らかにした上、積極事情・消極事情を総合考慮すれば、抗告人には継続雇用への客観的合理的期待があったことを明らかにする。

2 講習会における説明以外の積極事情について
(1) 原決定の内容
 原決定は、抗告人が主張する継続雇用への合理的期待を抱かせる事情のうち、有意なものは、*教授の講習会における説明だけであり、その余の事情は、何ら継続雇用への合理的期待を抱かせるものではないとする。

 しかし、以下に述べるように、講習会における説明以外でも、抗告人指摘の事実関係は、抗告人の継続雇用への合理的期待を抱かせる事情になるものである。原決定は、それらの事情を有意な事情でないとして捨象することによって、抗告人に不利な判断に至っており、明らかに不当である。

(2) 着任時の説明
 原決定が指摘するとおり、着任時は、雇用契約は当然に更新されるのではなく、募集に応じれば再雇用されるとの説明に後退している。しかし、かかる説明によっても、「再雇用」があるとの説明には、なんら変更はない。

 確かに、*教授の説明とは若干相違があるが、抗告人らから見れば、「再雇用」の道が保証されているか否かが重大関心事であり、その形式が、「当然更新」なのか「公募・再雇用」なのかは重大な事柄ではなかった。

 よって、着任時の説明は、十分、抗告人らの継続雇用への合理的期待を生じさせるものである。……

主張書面( 抗告人1)より

……

第2 抗告人の雇用の継続に関する合理的期待は正当なものであり、保護され るべきものである。

1 原決定の「債務者が、学生定員の増加を図りつつ教育の質向上を図るため、教員組織整備計画のもと、常勤講師の職位を廃止したことには必要性・合理性が認められる。」との認定(23ページ、「キ」)は誤りである。
(1)APUの教員組織整備計画は教育の質の向上のためと言えず、必要性も 合理性もない。
 日本語常勤講師の雇用契約が、99年の説明通りに継続されれば、常勤講師は長期的視野でAPUの教育に取り組み、教材・教育方法などAPUの教育のための様々な蓄積を行い、改良し続けることができる。実際に、原決定も認めている99年の説明会における*教授の説明(「一応任期はあるが、本人が望めば60歳の定年まで更新ができる。2期目に入っても昇進、昇給はない。この繰り返しで何回更新しても昇進・昇給はないが、それでも良ければどうぞ定年まで働いて下さい。」)を信じて着任した常勤講師たちは、自分の研究や生活の時間を削ってまでもAPUの教育のために尽くしてきた。日本語担当の常勤講師はよくやってくれている、とAPU側も認めていたくらいである(甲46(第一回面談報告書)の4ページ)。

 ところが、教員組織整備計画に基づき、2006年度から常勤講師制度を廃止し、それに代えて、上級講師・嘱託講師制度が導入された。これによって、2006年4月から日本語担当者として上級講師1名と嘱託講師4名が雇用された。この上級講師・嘱託講師制度は常勤講師制度の時よりも教育の質を向上させるものとなりえない。なぜなら、上級講師・嘱託講師はいずれも「任用期間:1年(以降、双方の合意により1年間の任用期間で2回を上限に更新することがあり得る)」(甲27の5ページ)とされている。つまり、着任して1年後あるいは2年後に契約終了とされる可能性も大いにあるということになり、3年後には確実に契約終了とされる。このような雇用条件に置かれた教員が、果たしてAPUの教育について長期的視野から考え、そのために尽力するということが考えられるか。当事者の立場になって考えれば、着任してすぐに他の就職先を探し出すであろうことは必至である。また、時間を置かずして他大学に移らなければならないことが目に見えているので、それを可能にするために自分の研究業績を増やすことを重視しなければならず、それを差し置いてAPUの教育の質の向上のために時間を割いて取り組むことなど到底望むべくもない。

 また、嘱託講師は一週間に12コマの授業+オフィスアワー1コマ(1コマ95分)を担当することになっているが、これは尋常ではない重い負担である。高校の教員であれば、一週間に多くて16コマ(1コマ50分)だということなので、これはAPUの授業担当コマ数に換算すれば約8コマに当たる。嘱託講師の13コマ担当は高校の教員のコマ数に換算すれば26コマということになる。高校の教員よりも一週間に10コマも多く担当している計算になるのである。ベテランの教員がこのような悪条件で勤務したいはずがなく、自ずと教育経験の少ない教員が教育経験を積むために着任することにならざるを得ない。

 APUの教員組織整備計画に基づいた上級講師・嘱託講師制度には以上のような致命的な問題がある。これが本当に教育の質の向上のための制度変更であると見なせるか。教育の質の向上など微塵も関係なく、いつでもクビを切れる教員を雇いたいという教育機関としてあるまじきエゴのための制度改悪である。

 このような制度改悪のつつがない遂行を、99年の継続雇用の説明を行うことによって着任させた日本語常勤講師の身分を保障することに優先させることには、全く合理性がない。……


投稿者 管理者 : 2007年01月30日 00:05

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