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2007年01月11日

国際教養大学全教員任期制、開学後初の契約更新 教員4分の1退職へ

 秋田県の国際教養大学は,全教員を対象にした任期制(3年契約)を採用する数少ない大学の一つである。開学時に採用された教員の契約が今年度末で切れる。結局のところ,同大学の任期制では,契約更新対象者27名のうち12名を退職させることになったという(約半数近い)。
 この退職者数は,下記新聞にもあるが,全教員45名のうちの4分の1に当たる。自分が関わった学生の卒業を見ることなく退職させる,こうした極めて流動性の高い人事を実施して,学生に責任をもった教育はができるのだろうか(無理であろう)。先進性を売り物にする大学であるが,実質はいわばパートタイマー教員大学のように見える。
 他方,大学行政に忙しいはずの役職者は全員再任されたという。「契約更新しなかったのは、もっといい人材がいると思ったからだが、何をどう頑張れば更新されるのかを、もっと明確にすることが今後の課題だ」という同大担当者によるコメントを読む限り,契約更新(再任)基準がそれほど明確ではないようだ。いずれにしても,全教員任期制の本質をものの見事に表す事例と思われる。
 因みに,同大学の教員構成はここ

教員、4分の1退職へ 国際教養大、開学後初の契約更新 /秋田県

■朝日新聞(2006/12/17)

 国際教養大学(秋田市雄和椿川)で、開学した04年に採用された教員27人のうち11人が、今年度末で退職することになった。全教員45人の4分の1にあたる。同大では3年契約で教員を採用しており、今年度末が初めての更新期。契約書には「契約更新も可能」と書いてあることから、退職教員の中には「更新できるだろう」と思っていた人もおり、学生の間にも波紋が広がっている。

 「教員として成績が上がっていたのに、大学を去るなんて想像できなかった……」

 退職が決まった米国人教員の1人は、今回の結果にため息をつく。学生の授業評価などがもとになる勤務評定は、04年度は中ぐらいのランクだったが、翌年度は1ランクアップ。「これなら更新できる」と思っていたという。
 同大によると、今年度末で契約が切れる27人には今年7月末、「カリキュラムなどの変更を見越し、人事を刷新する」と明言して、「自動的な契約更新はしない」と伝えた。
 しかし、管理職などの教員11人については契約を更新した。残りのポストについては、契約更新しない16人にも応募資格を与えた上で公募した。
 16人のうち15人が、外部から応募した約400人とともに受験した。4人は合格したが、11人は大学を去ることが先月末に決まった。
 「ほかの先生より学生の関心を引きつけるのがうまかったのに」。退職する教員に教わったことのある1年生の女子学生は、突然の展開に戸惑う。
 中嶋嶺雄学長は「契約が3年で切れるというのは大前提で、何度もそう伝えてきた」と話す。今回は開学して初めての更新期。大学による一方的な「解雇」と誤解されないよう、「教員の任期制など、本学の特色を理解してほしい」と学生向けに通知文を出した。
 ただ、「更新も可能」という契約書のニュアンスを巡っては、大学と教員の間で温度差があったようだ。同大の担当者は「契約更新しなかったのは、もっといい人材がいると思ったからだが、何をどう頑張れば更新されるのかを、もっと明確にすることが今後の課題だ」としている。



評価制導入の国際教養大 更新かなわず 教員4分の1退職

■産経新聞(2006/12/26)

 ◆レベル競い合い学内活性化

 公立大学法人として全国で初めて大学教職員の任期制を導入した国際教養大(秋田市、中嶋嶺雄学長)が実施した初の契約更新で、全教員45人のうち教授、助教授を含む12人を退職させることが25日までに分かった。大学教員の任期制は各地で導入され始めているが、実際に“大量退職”が実施されるのは異例。大学教員の競争はますます激しくなりそうだ。
 (大坪玲央)
 大学教員の任期制は一般に、特定のプロジェクトの教員などに適用されることが多いが、国際教養大は平成16年の開学から教職員全員に任期3年の契約制度を適用。来年3月末に最初の雇用契約が切れる。
 大学では今年7月末に、19年3月で契約が切れることを全教員に通知。教員評価作業を進める一方で、その後、国際専門誌などで教員募集をしたところ、米国をはじめ世界各国から402人が応募。研究や教育実績で書類選考し、34人が同大で実際に模擬授業や面接などを行い、20人と新たに契約を結んだ。この結果、契約が更新されずに退職させられる教員は、全教員45人のうち約4分の1の12人(外国人10人、日本人2人)に達した。
 国際教養大では毎年春と秋の各学期後に講義の内容などの教育活動、学術著書の執筆や学術会議の主宰などによる研究・国際貢献活動など、37項目で教員評価を実施。学生も各学期後に教材の分量や課題の内容、成績評価など27項目で授業を評価している。
 今回の契約更新では、以前から在籍していた教員については、学生や学長らによる評価が加味されたが「学生の評価がすべてではない。論文執筆などの実績や模擬授業などで総合的に評価した」(同大)という。再任用されないことに学生から不満の声が上がった教員もおり、学長が直接、学生たちに説明した一幕もあったという。
 中嶋学長は「残念ながら、3年間で1本も論文を書かない教員や、教え方のレベルが、トップクラスの大学を目指す国際教養大としては通用しない教員もいた。今回の新規採用でさらに学内が活性化すると信じている。形だけの公募ではないし、優れた教員が獲得できた」と話している。

 全教員に任期制を導入する試みは、地方で動き出している。国立大学法人・北見工業大(北海道北見市、常本秀幸学長)は、16年度から新規の全教員に5年任期制を適用した。
 常本学長は「地方では、学生にとって魅力ある大学にするためには内部からの競争、改革が絶対に必要だ」と訴える。北見工業大では、学生の評価が契約更新だけではなく、任期中の研究費配分にも直接響く。厳しさを背景に「学生の授業評価や研究評価は年々上がってきている」(常本学長)という。


投稿者 管理者 : 2007年01月11日 00:04

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