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2007年03月08日

自由法曹団、「学校教育法の改正の方向について」等への意見

自由法曹団
 ∟●「学校教育法の改正の方向について」等への意見

「学校教育法の改正の方向について」等への意見

第1 今回のパブリックコメント募集について

1 自由法曹団は、全国で約1700名の弁護士が加入する法律家団体であり、憲法問題、労働問題等と並んで、教育をめぐる諸問題についても取り組んでいる。昨年末に成立した「改正」教育基本法については、成立前から、長年に亘り、その問題点を指摘し続けてきた団体である。

2 教育基本法「改正」を巡っては、愛国心教育を含む徳目教育、国家による教育への過度な介入の許すことになるとして、国民的な反対議論が巻き起こったが、最終的に与党による強行採決という形で教育基本法は「改正」された。
 しかし、教育基本法が変容したからと行って、具体的な教育法令が直ちに変更されなければならないというものではない。その法令が具体的なものであればあるほど、国民への影響は大きく、どのような施策をとることが適切であるかをより慎重に議論されなければならないはずである。
 ところが今般、文部科学省は、学校教育法「改正」、地教行法「改正」、教員職員免許法「改正」についてのパブリックコメントを求め、そのパブリックコメント期間を、2007年2月22日から28日までの6日間と設定している。
 わずか6日間で、3つの教育法令の改正案について意見を述べよというのは、あまりにも横暴なものというほかない。このような短きに失する期間では、国民は十分な議論を行うことすらもできず、同期間中に意見がなかったとして、これら法案「改正」のエクスキューズに用いようとする意図があるものと解する他ない。真実、国民の意見を聴取したいのであれば、パブリックコメント募集の期間について相当長期間の期間を設定し、再度パブリックコメントの募集行うべきである。
 以下、学校教育法「改正」について、私たちの意見を論じるが、地教行法・教員職員免許法についても、異論があることを付言しておく。

第2 学校教育法「改正」について

1 義務教育の目標に関する事項について

(1) まず、「我が国と郷土の現状を歴史についての正しい理解」を「養う」という趣旨を義務教育の目標に掲げるとあるが、「正しい」という評価は誰が行うのであろうか。現状や歴史の評価は様々であり、何が「正しい」のかを決めて評価することは、子どもたちや教師の内心の自由の侵害になりかねず、「改正」後の教育基本法が禁止している、教育行政による不当な支配が生じかねない。

(2) 次に、「国を愛する態度」を「養う」という趣旨を目標に掲げることは、様々な問題がある。
 第1に、教育現場で「国を愛する態度」を「養う」ことは、一定の国についてのイメージや考え方を、子どもたちや、それを教える教師に押し付けることになる危険性が極めて高い。このことは、第二次世界大戦前の日本の教育を見れば一目瞭然である。このような一定の国についてのイメージや考え方の押し付けは、憲法が保障している子どもたちや教師の内心の自由を侵害することになりかねない。
 「改正」教育基本法も日本国憲法の精神に則ることを明言しているのであり、子どもたちの内心の自由、教師の内心の自由は断じて尊重されなければならない。また、子どもたちの内心の自由については、日本が批准し、法律よりも上位にある子ども権利条約でも保障されており(同条約第14条)、その点も十分に配慮されなければならない。

 第2に、学校教育法で「国を愛する態度」を「養う」ことが教育の目標とされた場合、東京都等で起きているような度を越した日の丸・君が代の強制が、全国的に波及する可能性が高い。東京都の日の丸・君が代の強制については、昨年9月21日の東京地方裁判所で、憲法等に違反すると明快に判断されたのは記憶に新しいところである。また、通知表で「国を愛する態度」を評価するという、通知表での愛国心評価がより一層多くの小学校等で採用されてしまう危険もある。この愛国心評価については、昨年の通常国会において、小泉総理大臣(当時)が、小学生の子どもたちにはこのような評価は必要ない旨を明言しており、その発言は多くの国民の共感を呼んだ。

 第3に、現在の日本の義務教育及び高等教育に数多く在籍している外国籍の子どもたちにとって、「国を愛する態度」を「養う」という教育がなされ、日本という国について一定のイメージや考え方を押し付けられることは、内心の自由が侵害されることであるだけでなく、疎外感を持たされることになりかねない。
 このように、「国を愛する態度」を「養う」ことを教育の目標に定めることは、多くの問題点を抱えている。昨年末までの間に、多くの国民・市民が教育基本法「改正」反対を表明したのも、これらの問題点があったからである。
 文部科学省は、多くの国民・市民が反対したことを謙虚に受け止め、学校教育法の教育の目標に「国を愛する態度」を「養う」ことを定めるという提案を、即刻取りやめるべきである。

2 学校の評価等に関する事項、及び、副校長その他の新しい職の設置に関する事項について

 学校が、当該学校の教育活動等について評価を行うという趣旨の規定を盛り込むことは、教育現場で実際の教育にあたる教職員が、学校の評価ばかりを気にして萎縮してしまい、適切な教育ができなくなることに繋がりかねない。
 また、副校長、主幹及び指導教諭を置くことができるという趣旨の規定を盛り込むことは、教職員に対して官僚的な管理・統率をしようという狙いの表れであり、賛成できない。
 教育は、本来、個々の教職員と子どもたちとの相互のふれあいによってなされるものなのであるから、現場の教職員の自主性は尊重されるべきものである。 よって、私たちは、学校教育法に「学校の評価等に関する事項」及び「副校長その他の新しい職の設置に関する事項」を規定することには反対する。

以上


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投稿者 管理者 : 2007年03月08日 00:05

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