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2005年07月05日

科学技術・学術審議会人材委員会(第31・32回)議事録

科学技術・学術審議会人材委員会(第31回)議事録
(資料)
研究人材の将来需給 -三菱総合研究所調査より(要旨)-(PDF:80KB)
「研究人材の将来需給調査(概要)」三菱総合研究所(PDF:262KB)

科学技術関係人材の将来需給について

(3) 科学技術関係人材の将来需給について(議題2)

……

 大学全入ということになると、質が悪くなる。それをあえて認めるのかどうか、高等学校の出口で品質管理する必要はないのかどうか。その中で、研究者の質の問題を考えたときに、魅力ある大学院というのは決して日本人ばかりではなく海外からも優秀な人が入ってきて、そこで切磋琢磨が行われる。国境を越えて活躍できるような人材の育成のために幾つか提言が出て、制度は変わったが、結果につながるような徴候が見えているかどうか。実態等についてきちんと検討しなければいけない。今回出た予測をベースに使って、何を議論して何を提言に結びつけていくかを議論していきたい。
 質を上げていくために、小中学校ひいては社会全体の科学の目指す方向性のところから我々が提言してきたことが、具体的に本当に質の向上につながっているのかどうかを確認しておく必要がある。

 途上国では、資源がないにもかかわらず大学がたくさんある国と、資源がこれだけしかないからちゃんとした人を選んで教育をする国というのがあったが、最近は社会的なプレッシャーがあって大学を増やさざるを得ないというところへ来ている。今の日本の状況では、全入するかどうかは関係なく、その中から質を持った人の数の確保か大事な時代になってきている。
 日本は非常に資源が少ないが、その資源を今まで公平に分配してきたところに問題がある。これは今まで日本ではほとんど議論がされてこない領域であったが、いかに質のいい人の数を確保して、そこに資源を配分していくかという話が当委員会の焦点になってきた。いかにしていい人が大学に進み、すぐれた素質を持っている人が博士課程に行くか。大学を卒業した時点で、あとは自分で稼げるという組織にしないとだめだというのが一番の極論になる。ぜひ博士課程に行ってほしいような優れた人には、勤めた人以上の給料が出るような奨学金をつけないと博士課程に進まない。そういう人が進むと、企業から見ても魅力のある人が育ち、大学の教員もそういう人を育てようという気になる。この辺のことをそろそろ議論をする時期に来たのでは。
 
 大学に全入できるような状態で、その入口のところから教育の質を根本的に上げていくことによって、大学を出ていく人、研究者になれる人の構造を変えていく必要があるという議論ではないのか。講座制を課程制にするとか、重点的に研究費を充てて育てていくなどの対策で間に合うかという議論が必要なのでは。

 さきほどJABEEの話が出たが、JABEEというのは第三者評価をするものである。例えば、成績が悪くて退学し、転学していった学生が卒業する際の最低保証をするプログラムであって、国の科学技術を引っ張っていく主導的な人をつくるようなプログラムではない。そういう大学卒の問題は中央教育審議会で議論するもので、当委員会は科学技術創造立国である日本を引っ張っていく人材養成の議論をしている会合である。

 当委員会の三次にわたる提言や総合科学技術会議や、経済産業省の産業構造審議会の産業技術分科会等のいろいろな提言等を含め、メニューというのはもう結構出ている。それを踏まえた具体的なアクションを起こすべきではないか。
 例えば任期付き任用制度というのは本当によかったのだろうか。本来は大学を出てちゃんとした職場が保証されていれば、この制度は必要がなかったのかもしれない。しかし任期付き任用制度にはスクリーニングがきちんとできるという非常にいいところもある。質の高い研究人材の養成、それに当たって、女性・外国人など多様な研究者の活躍を促進させるために当委員会で何か具体的なアクションを起こしたいと思う。
 少子化という問題を考えたときに、再教育も含め人材を投入できるような体制をどのようにしたらよいか。また、科学技術の分野に行くことのインセンティブをどのようにして早目に与えたらいいのかということを、大胆な政策として打ち出すことも重要ではないか。戦略的な研究投資や競争的な資金倍増という政策など様々手を打っているが、関心ある若手の層から見ると、それが自分のところに来るわけではない。若い世代の視線に置いた政策を提言することがこれから重要ではないか。

 ボトムをどうするかという話とトップのエリート層をどうするかという話の2つの議論が混在している。ボトムに関しては、大学の全入の問題、任期制の問題、ポスドクの人がアメリカへ留学して帰ってきた時にポジションがない、それをどこへ流すのか、そうした問題も議論していかないといけない。今年来年ぐらいにはポスドクが大量に余って、今40代のポスドクというのも結構ふえつつあるという状況である。ボトムの中の問題で、女性あるいは若手、高齢者の問題等も含めて議論しなければいけない。
 また数だけでなく質において、いかにしてトップのエリートコースをつくっていくかというトップの議論もしないといけない。一部、飛び級等もできてきたが、大学から出てポスドクが終わった後の研究者のエリートコースは非常に少ない。医学部系の場合だと、最近2年間の医者の臨床研修義務化というのができて実質卒業が2年おくれたため、生活が非常に厳しくなってきてほとんどの人が研究者にならなくなった。これはアメリカでは約10年前から起こってきており、今アメリカの研究者というのはほとんど外国人に置きかわっている。日本でも医学部系を中心として、ライフ分野は日本人が研究者に行かない時代がこのままいくと来ると思う。飛び級的な、30代前半で助手等になれるような仕組みを新しく作っていかないと、医者で研究をやろうという人はいなくなってしまう。ボトムの問題とトップをどう養成するかという問題で、かなり思い切った手を打たないと、どちらもかなり時期的に厳しい状況になってきている。

 ポスドクの給与は結構高くなっている。学生の立場から見ると、実際に就職するよりも給与が高く、研究に集中できるというのは非常にいいが、結局その後が非常に不安定であるというのが問題である。実際その後はどうなるのかというと、競争的資金のつく領域は、自分が研究者として一人立ちしたときには既に別の領域に移ってしまって、自分が選んだ領域とギャップが生じているのではないか。
 またボトムということで、定員割れを起こしているような全入時代の大学院博士課程にまで大学の助成金を配分していく必要があるのか。そのお金をトップの方に回していったり、保証していくことに使えないだろうか。

 いつの間にか国や政策に都合がいいという発想へ傾いていきがちだが、やはり若者にとって都合がいいという視点で議論をちゃんとやらないと、制度はつくったが子どもたちからはそっぽ向かれるというようなことが起こりかねない。 ……

科学技術・学術審議会人材委員会(第32回)議事録
(資料)
ポストドクターをめぐる現状について(調査結果のポイント)(PDF:76KB)
大学・公的研究機関等におけるポストドクター等の雇用状況調査(調査結果概要)
ポストドクターに関する各種審議会等での議論
ポスドク問題およびキャリアパス問題の見方・考え方

ポストドクター等に関する実態調査について

……

 ポスドクには2つのミッションのような考えがある。1つは研究の労働力として研究者や研究補助者として雇いたいという考え。もう1つは、やはり学位を取っただけでは不十分なので、もう少し現実的な研究をできる能力をつけさせる、人材を養成するという考えも雇う側にはあると思う。その2つがある場合に、結論を1つにまとめていこうというのは、ちょっと至難の技なのでは。

 ポスドクの人たちの社会における活動の場は、アカデミックの世界における研究者というのが中心だし、本人たちもそういう希望が強いのだと思うが、産業界の立場でいうと、博士課程の問題と同じく、できるだけ活躍の場をそれ以外にも広げる必要があると思う。
 そのときに一番大きな問題は、産業界とポスドクの接触のルートが難しいことである。博士課程の場合は、産業界と大学との関係があるので、先生との間でいろんな話をすることによって、接触がとれる。例えば現在、インターンシップについて実際に大学と検討を進めていて、その中の1つとして博士課程も当然対象外ではないという形で進めている。
 ところがこのポスドクの人達については、産業界としてはどういう場面で接触したらいいのか、そのルートがよく分からない。これが一番大きな問題である。先ほどの資料2-2にも「主な意見の概要」という括弧で括っているところの一番下側に「研究者に向いていない人でもプラスアルファーがあれば他の職にチャレンジできるのではないか」とあり、それは言葉としてはそのとおりだが、いったいそれは誰が判断するのか。ご本人が「私は研究者に向いていないですから」とはなかなか言いにくい。
 そうすると、個人の希望もあるにせよ、一つの大きな分野としての産業界を含めた中で、これからのキャリアパスを増やしていくということのためには、どうしても接触する機会が必要である。その仕組みを、博士課程については先ほど申し上げたように考えられるのだが、ポスドクについては我々も考えていかなければならない。そういう制度的なものをプールするような形で意見を交換するような場、プラットフォームのような場がないとなかなかこれは実際には難しいと思うので、ぜひそういう方向で考える必要があると思う。

 先程意見にでた、ポスドクで人材養成というミッションは、大学のそれぞれのポスドクを雇っている先生方の認識にあるのだろうか。ないのではと自分は思うのだが、どうか。

 現実問題としてポスドクという人は、非常に大事な次の世代であるという認識で我々はいると思う。ポスドク等1万人支援計画のあとに、その次のステップアップのポストの数はその割合では全く確認しなかったため、より彼らポスドクの競争は厳しくなっている。そのためポスドク時代にどれだけマネジメントまでできるよう修得してもらえるかが大事だと、我々はそういう意識を持っていて、決して非常に下層労働者的な意識をポスドクの人たちに持っているということはまずないと思う。それは本当に研究室によるのかもしれない。

 私はやはりそのような懸念はあると思う。日本の独特のカルチャーかもしれないが、ポスドクの位置づけというのを考えると、現実はもっとシビアなものである。先程議論になっているように自分のキャリアの幅を広げる機会と捉えていることももちろんあるが、もう一方では、博士課程を出た学生の多くはアカデミックポジションに就きたいけれどもすぐにはそれが見つからない、そのため、見つかるまでのつなぎにポスドクを使うというのが、学生のモチベーションのかなりの割合を占めていると思う。自分が在籍していた工学部の中を見ても、やはりそれはかなり現実的であると思う。
 そういう意味で、これは例えばアメリカなどでは見られない現象かもしれないが、日本ではアカデミックポジションに就きたいがゆえに、とりあえずはポスドクに就くというケースが実際にあり得ると思う。しかも今、大学院の学生の数は増やすという一つの政策のもとに現実に増えているわけである。そうすると、ますますアカデミックポジションは狭き門になってきて、何とかそこにしがみつくためにも、多少何年かポスドクでいようという学生が多いのは事実で、それは見逃せない現実であると思う。
 もう1つ、それでいいというわけではないが、博士課程の修了者ももちろんそうだが、ポスドクを経験した人が次に就く場所や、キャリアを積む過程で自分自身がアカデミックポジションに向かないと思っても、企業の方で受け入れるルートが必ずしも整備されていない。これも大きな問題である。実は18期学術会議の化研連の報告書の提言の中でもふれているが、大学院の学生を増やせといっても修了した後の行き場がない。企業がそれを受け入れるという基本的な姿勢をこれから日本はとっていく必要があるだろうということと、それからそれに応えられるだけの大学院、ポスドクの整備も必要だということの両方をその報告書ではうたっている。やはりこれから現実問題として企業とポスドクの接点を構築していくことが必要であり、ポイントになると思う。……


投稿者 管理者 : 2005年07月05日 00:19

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