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2005年09月29日

都立大・短大教職員組合、教員の人事給与制度についての中央執行委員会の現状認識

都立大・短大教職員組合
 ∟●手から手へ2363号(9月27日)

教員の人事給与制度についての中央執行委員会の現状認識

2005年 9月27日
東京都立大学・短期大学教職員組合中央執行委員会

・異常な事態が続く教員の人事給与制度 
 4月の法人発足以来、法人当局は組合との協議が尽くされていないにもかかわらず、いわゆる「旧制度」、「新制度」にもとづいて、人事給与制度の運用を行っています。それにより、就業規則、給与規則のいずれにも明確に述べているわけではないものの、「旧制度」では昇給・昇任なしという措置がとられ、実際に「旧制度」を適用されている教員については4月、7月分の昇給は行われませんでした。また「新制度」を適用されている教員に関しても、再任の基準や業績給・職務給算定の指標が決まっていないという状況です。まさに法人の人事給与制度は、異常な事態が続いています。
 6月21日の団体交渉において、法人当局は「旧制度」の昇給・昇任を求めた組合の要求を拒否し、この問題をめぐる団体交渉は決裂をみました。
 
 こうした状況のなかで、多くの教員が雇用契約書を提出していない状態が続いています。組合は、当局が組合との誠実な協議に応じないまま各教員に対して雇用契約書を配布し、提出を促したこと自体が不当であると考えており、かつ契約書を提出することで、労働条件の不利益変更に同意を与えてしまう可能性が高いという見解をとっています。「旧制度」については、契約書に給与額の具体的数字が書かれており、給与がこの額に固定されてしまう可能性があります。また「新制度」についても契約書に記載された任期を認めてしまうことになる可能性があります。契約書を提出しないことをあらためて訴えます。なお契約書を提出していなくとも、4月から授業などの業務を行い賃金も支払われています。したがって実態として雇用関係は生じており、そのことは法人も認めています。不提出を理由とする解雇はできない状況にあります。
 当局が、不当にも「旧制度」教員の昇給・昇任なしという態度に固執し、実際に4月、7月の2回にわたり、「旧制度」教員の昇給が行われなかったことは、多くの教員の怒りを買っています。組合としても事態をこのまま放置することはできません。中央執行委員会は、教員の人事給与制度、とりわけ「旧制度」教員に対する差別的な措置を打開する取り組みを展開するため、法人の人事給与制度の問題点をあらためて確認しておきます。

・合理性のない法人の人事給与制度 
 法人化に至る過程における組合との団体交渉において、大学管理本部の宮下参事、泉水副参事らが回答した内容は、法人の人事給与制度が合理性のない、ずさんなものであることを示しています。例えば「旧制度」において、いくら業績をあげても昇給・昇任なしとする合理的理由は何かという組合の質問に対して、業績をあげている教員、昇任を希望する教員は、「新制度」の方を選択できる仕組みとなっているからだと回答しました。また、これらの措置が教員に対する労働条件の不利益変更にあたらないのかという質問に対しては、「現行の給与水準を切り下げていないので、不利益変更にはあたらない」と回答しています。他方、「新制度」を選択した場合任期制になるが、期限の定めのない雇用から有期雇用になるのは、労働条件の不利益変更になるのではないか、という質問もしました。これに対して当局は、有期雇用になるにしても本人が了解の上であれば不利益変更とはいえない、また「旧制度」という期限の定めのない雇用を選択する道もある、との回答をしました(「2004年12月20日新法人における賃金雇用制度に関する緊急解明事項に対する回答」)。
 要するに、昇給・昇任のない「旧制度」をとりたくなければ任期のある「新制度」を選択すればよい、任期のある「新制度」をとりたくなければ、昇給・昇任のない「旧制度」をとればよい、さらに現行の給与水準を切り下げていない、だから法人の給与制度は総体として労働条件の不利益変更にあたらないという回答なのです。
 「新制度」について、有期雇用になるにしても本人の了解があるから不利益変更ではない、期限の定めの無い雇用を希望するなら「旧制度」を選択すればよい、という回答にも驚きます。なぜならもうひとつの選択肢である「旧制度」は昇給、昇任なしという懲罰的措置なのであり、昇給、昇任を望めば本人が希望しなくても「新制度」に移行せざるをえないからです。この場合、本人の「了解」は当然、自由意思ではありません。こうした大学管理本部の回答は、法人の人事給与制度がいかに合理性を欠くものであるかを示しています。さらに付け加えれば、「新制度」についても給与規則のなかに昇給の規定はなく、理事長の判断でその額が決まると書かれているだけであることも注意する必要があります。
 以上のように法人の人事給与制度は内容に大きな問題をいくつも抱えておりますし、こうした制度について詳細な説明を求めた組合に対する大学管理本部の回答自体が、誠意のないものでした。

・勤務条件は労使協議で決めなければならない 
 法人の人事給与制度は、内容に問題があるばかりではありません。その導入の過程にも大きな問題があります。大学管理本部・法人当局は、組合との協議を十分に行わないまま労働条件を一方的に決定しました。法人発足後に行った組合の要求(「教員給与制度に関する要求について」2005年4月14日)についても、当局は「東京都職員として適用されていた労働条件がその身分とともに包括的に移行するものではない」ことを理由に、「旧制度」教員の昇給実施を拒否しました(6月21日)。この当局の見解は、地独法審議の際の政府側答弁を念頭に置いたものだと思われます。地独法第66条の権利義務の承継の規定は、教職員の労働条件をそのまま承継するということを必ずしも想定しない、したがって労働条件の設計は法人が行うことができるというのが大学管理本部・法人当局の解釈のようです。
 しかし労働条件が必ずしも承継されるとは限らないという政府答弁が、直接に大学管理本部・法人が強行しようとしている労働条件の一方的な切り下げ、それも「旧制度」では永久に「昇給なし」のまま固定されるという労働条件の最も重要かつ甚だ不利な改変を正当化する理由にはなりません。なぜなら同委員会の政府答弁も、法人が教職員の労働条件を恣意的に決定できるなどとは述べていないからです。むしろ森清総務省自治行政局公務員部長は、法人における労働条件については労使間の交渉を尊重し「労働協約」に基づき定められると明確に述べているのです(衆議院総務委員会第16号 平成15年5月29日)。したがって、一方的に労働条件の切り下げを強行しようとする大学管理本部・法人の手法は、労働条件改変のプロセスに関する政府答弁に即してみても、何らの正当性もないのです。こうした大学管理本部の一方的なやり方が、社会的に認められるものではないと考えます。

・事態の打開をはかるために
 以上、人事給与制度の内容、導入の仕方について大学管理本部・法人の態度を批判してきました。現在のところ、交渉はいわば決裂した状況にあります。また7月にも人事異動があり、総務部長、総務課長、人事担当課長の異動がありました。大学の運営、法人経営に責任を持つべき幹部職員が頻繁に異動するなかで、この7月には2003年8月以来、大学の解体を画策してきた都庁幹部職員もすべて他局に移りました。
  こうした状況をふまえ、中央執行委員会は法人当局に対して「旧制度」に関する協議をあらためて申し入れます。先にも述べたように、法人当局は「旧制度」における4月以後の昇給、昇任なしという措置について、その合理的理由を説明していません。今後当局が先に示した政府答弁をふまえ、組合との誠実な協議に応じることを要求します。
  さらにこの秋には、人事給与制度について「年俸制・業績評価検討委員会」などの場で再検討が行われるはずです。当局に対して、人事給与制度に関する教員の要求を突きつけていく運動も必要となります。
 今後、もし今年3月までに大学管理本部がとっていた態度と同様の態度を法人がとるのであれば、組合は別の枠組による事態の打開をはからざるをえません。しかし法的手段に訴える以前に、できる限り労使交渉でこの問題を解決していきたいと考えています。その際、私たちの力は、なんといっても圧倒的多数の教員の団結です。今後の交渉過程において、私たちの団結を崩すための圧力が加えられる可能性があります。組合や組合員個人への何らかの干渉は、不当労働行為となる場合もあります。もし、お気づきの点がありましたら執行委員または組合事務室までご連絡下さい。
 依然として多数の教員が雇用契約書を提出していないという事態は、法人に対する大きな圧力です。様々な事情からやむを得ず雇用契約書を出した教員も含め、人事給与制度をめぐるこの秋の運動に、ともに団結して臨むことを強く訴えます。


投稿者 管理者 : 2005年09月29日 01:39

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