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2005年10月20日

日本私大教連、私立学校法第47条にもとづく財務資料一斉開示請求運動

日本私大教連
 ∟●私立学校法第47条にもとづく財務資料一斉開示請求運動
請求運動結果一覧(中間集約)PDF  Excel

私立学校法第47条にもとづく財務資料一斉開示請求運動

 日本私大教連は、改正私立学校法第47条にもとづき、6月1日付けで財務資料を開示するよう全国一斉に要求する運動を呼びかけました。
 その結果、8月末現在、54単組が要求を提出し、うち半数以上の法人で財務資料のコピーを組合に手交し、開示範囲も計算書内訳表や明細表まで広がるなど、前進をかちとっています。
 しかし一方で、一部資料の閲覧しか認めないなど、私学法に規定される最低限の開示しか行わない法人が約25%あり、中には就業時間内の教職員の閲覧を禁止するなどの規程を設け、事実上閲覧を拒否する法人も現れています。
  ■ 請求運動結果一覧(中間集約)  PDF  Excel
 日本私大教連はさらに状況調査を進め、事実上非開示に固執する法人に対しては対策を講じるよう文部科学省に要請するなど、運動を進めていきます。

【一斉開示請求に関する解説】

1、私立学校法第47条

1、学校法人は、毎会計年度終了後2月以内に財産目録、貸借対照表、収支計算書及び事業報告書を作成しなければならない。
 2 学校法人は、前項の書類及び第37条第3項第3号の監査報告書(第66条第4号において「財産目録等」という。)を各事務所に備えて置き、当該学校法人の設置する私立学校に在学する者その他の利害関係人から請求があった場合には、正当な理由がある場合を除いて、これを閲覧に供しなければならない。

2、開示要求書類について
(1)学校法人会計基準第4条に規定される計算書類
 学校法人会計基準第4条は、次のように規定されています。

第4条(計算書類)
学校法人が作成しなければならない計算書類は、次に掲げるものとする。
一 資金収支計算書及びこれに附属する次に掲げる内訳表
 イ 資金収支内訳表
 ロ 人件費支出内訳表
二 消費収支計算書及びこれに附属する消費収支内訳表
三 貸借対照表及びこれに附属する次に掲げる明細表
 イ 固定資産明細表
 ロ 借入金明細表
 ハ 基本金明細表


 文科省は改正私立学校法の説明会等での開示書類の説明で、学校法人会計基準で会計を処理している学校法人は、それを開示すれば足りると説明しています。日本私大教連との折衝でも、文科省担当部局は「少なくとも大学法人は学校法人会計基準で示すよう指導する」と述べています。
 なお開示要求年度は、平成16年度(04年度)分からとなりますが、過去10年分の財務資料を公開させてそれを分析する必要性が「私立大学の財政分析ができる本」(大月書店、野中、山口、梅田)に指摘され、実際10年分を開示させている大学も生まれていますので、思い切って10年分を要求してはどうでしょうか。今回の私学法改正により財政公開が義務づけられた趣旨からすれば、過去分についても当然に開示すべきであると要求できます。
(2)○○○○年度財産目録
 財産目録は、学校法人会計基準には作成書類として記載されていません。文科省は改正私立学校法の説明会で財産目録の作成例を提示していますので、最低、その内容で作成された書類の開示を要求することになります。なお、財産目録とはすべての資産および負債について、種類別にその数量と価額を記載した一覧表と定義されています。土地、建物、構築物などがその種類ごとに、名称、大きさ、帳簿価格、取得価額、取得日が明示され、現金や有価証券については預入先の名称と金額と利率などが記載されていることが求められます。
 開示要求年度は上記と同じ趣旨で、過去10年分を要求する意義は十分あるといえます。
(3)○○○○年度事業報告書、事業計画
 事業報告書は、新しく作成を義務付けられる書類です。上記の財産目録同様、文科省は改正私立学校法の説明会で事業報告書の作成例を提示していますので、最低、その内容で作成された書類の開示を要求することになります。
 私立学校法の附則において、事業報告書は平成16年4月1日以後に始まる会計年度に係わる事業報告書ついて適用すると定められていますので、最低でも04年度事業報告書は開示要求の対象になります。もっとも、法人によっては、過去このような報告書を作成している例もあるかもしれませんので、そのような法人は過去分の開示も要求しましょう。
 また事業計画は、平成17年4月1日以後に開始する事業計画について、あらかじめ評議員会の意見を聞かなければならないと規定されているものです。私立学校法第47条が規定する「閲覧に供しなければならない」書類に含まれるものではありませんが、理事会が事業計画を立てている場合は開示するよう積極的に要求しましょう。
(4)○○○○年度監査報告書
 この報告書は、私立学校法第37条第3項「監事の職務は、次のとおりとする。」の第1号に「学校法人の業務を監査すること」と規定し、第3号に「学校法人の業務又は財産の状況について、毎会計年度、監査報告書を作成し、当該会計年度終了後二月以内に理事会及び評議員会に提出すること。」と規定されているものです。また第47条で閲覧に供さなければならないものの一つに定められています。
 開示要求年度は上記事業報告書と同様で、04年度監査報告書とならざるを得ないでしょうが、過去10年分の監査報告書を要求することは十分意味がありますので頑張って開示要求しましょう。
(5)私立学校法第26条に規定する収益事業に係る○○○○年度財務書類
 文科省は、都道府県知事にあてた「私立学校法の一部を改正する法律等の施行に伴う財務情報の公開等について(通知)」(平16,7.23、私学部長名)のなかで「エ 法第26条3項に規定する収益事業に係る財務書類についても、閲覧の対象となるものであること。これら財務書類については、その事業に応じて適宜作成されたいこと。」と指示しています。
 学校法人によっては株式会社を設立し収益事業を展開していると思われますが、株式会社化せず収益事業(学生寮、駐車場、学バス、自販機、物品販売など)を営む事例も多いのではないでしょうか。この財務情報も開示しなければなりません。

3、開示方法
 開示方法は、私立学校法第47条は「閲覧」としていますが、文科省の改正私立学校法の説明会等では、「財務書類のコピーを交付することや、更に進めて、学内報や広報誌等の刊行物に学校法人の財務情報や事業の状況等を掲載したり、インターネットのホームページに掲載すること等、より分かり易い内容の公開や方法を工夫し、これら財務情報を積極的に公開していくことは、公共性の高い法人として望ましいことです。」(改正私立学校法の説明会資料Q&A)としています。
 もともとコピーの手交を義務付けなかった理由は、幼稚園などの小規模法人では負担が重くなるという理由でしたので、大学・短大法人ではコピーの手交はいわば当然のことです。

4、「利害関係人」について
 利害関係人について、2004年9月21日の文科省担当部局との折衝において、「組合も利害関係人であることを確認し、あわせて財務情報について検討し、理事会(学校法人)に対して意見をのべることは社会通念上当然のことであって『誹謗中傷』にはあたるものではないと」の確認をしています。

5、既に学校法人会計基準第4条の計算書類を公開させている単組
 既に第4条の計算書類を公開させている単組では、第1項目の計算書類はあえて要求する必要はないでしょう。それ以外の書類の開示要求をするようにしましょう。なお、これまでの開示範囲を狭めてくるような対応も予想されますから、手を抜かずに要求しましょう。

6、開示させた資料を私大教連へ集約してください
 学校法人によっては、さまざま理由をつけて自己流の「必要最低限」で公開してくることもあり得ます。どのような資料を開示させるべきかは、他私大の公開資料とつきあわせて比較しないとわかりません。とりわけ、財産目録や事業報告書、監査報告書については、定められた形式がないため、その必要性は高いと言えます。私大教連に集約し、他私大と比較して、財政公開のいっそうの前進を勝ち取りましょう。


投稿者 管理者 : 2005年10月20日 01:26

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