個別エントリー別

« 横浜市立大、次期副学長等の決定 | メイン | 京大の任期制めぐり判決 元教授の再任拒否訴訟 »

2005年12月28日

京都大学任期制再任拒否事件控訴審、28日に控訴審判決

Academia e-Network Project
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200512270015.html

抜書『『朝日新聞』関西版 2005年12月27日付
 京大再任拒否訴訟、28日に控訴審判決
 京都大再生医科学研究所(京都市)で「任期制教授」を務めた井上一知氏(60)が、再任を拒否した大学側の決定の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が28日、大阪高裁(武田和博裁判長)で言い渡される。優秀な教員の確保や、教育と研究水準の向上をうたった任期制は、各地の大学で導入が進んでいるだけに、再任審査のあり方を詳細に審理した「初の高裁レベルの判断」(原告側)に注目が集まっている。

■任期制教授 揺れる立場
 「井上一知教授 係争中」
 京大再生医科学研究所3階の教官室。03年4月に教授の任期(5年)が満了した井上氏は今もこの部屋にとどまり、世界水準と言われる膵島(すいとう)細胞移植や再生医療の研究を続けている。正式な立ち退き要求は受けていないが、研究費や給与は支給されていない。

 「再任審査では、審査を受ける人が納得できる明確な基準を示すべきだ。任期制を利用して恣意(しい)的な人事がされれば、憲法が保障する学問の自由が侵される」

■結論正反対 司法の場に
 井上氏は97年施行の大学教員任期法に基づき、98年5月に同研究所の任期制教授に就任した。
 5年の任期満了前の02年8月、学外専門家で構成された「外部評価委員会」(7人)が、研究所の内規に基づき井上氏の再任について検討。井上氏が日本再生医療学会の初代会長を務めたことなどを評価し、全員一致で「再任可」と判断した。

 一方、同研究所教授らでつくる協議員会が同年12月に実施した無記名投票では17人中14人が「再任不可」を投じ、京大側はこれを根拠に井上氏の再任拒否を決めた。

 井上氏側は「業績よりも当時の研究所長の個人的感情に左右された結果だ」と主張、司法の場で争う道を選んだ。

■最大の争点 処分か否か
 28日に判決がある再任拒否処分取り消し訴訟控訴審の争点は、京大側の決定が「処分」にあたるのか否かだ。
 井上氏側は、任期制法は枠組みを定めただけで具体的な制度設計は各大学に委ねられている、と指摘。「京大側は再任申請に対してその可否を判断しており、処分にあたる」と主張している。

 昨年3月の京都地裁判決は、「任期満了によって当然に失職するから再任拒否は処分ではない」とする京大側の主張を認めて訴えを退けた。

 大阪高裁は、一審が認めなかった外部評価委の出月康夫・東京大名誉教授の証人尋問を実施。出月名誉教授は「最初から任期が決まっているのであれば、外部に評価してもらう必要はない」と指摘した。

     ◇

 文部科学省によると、大学教員の任期制を導入しているのは計247大学、8357人(私立大含む、03年10月時点)。今後も大学教育現場の活性化に向けてさらに導入が進むとみられている。

 国立大教授や元最高裁判事らの間には「放置すれば他大学でも多数派に属さない任期制教員の追い出しに使われる」として、井上氏を支援する動きも出ている。

□共通のルール必要では
 高等教育の動きに詳しい山野井敦徳・広島大高等教育研究開発センター教授の話 教員の業績評価はプロの研究者にとっても難しい。任期制教員の場合、契約時にどういう形で業績が評価されるのか、大学側と十分に論議することが重要だ。任期制は使い方によっては優秀な教員の獲得や研究の活性化などに効果的だが、日本の大学は「見切り発車」で導入した印象があり、その後の再任や終身雇用につながるかどうかもあいまいな場合が多い。個々の大学に運用を任せきりにせず、共通のルールづくりを検討する必要があるのではないか。
□京大任期制教授再任拒否訴訟
 98年5月に京大再生医科学研究所の任期制教授に就任した井上一知氏が、「再任不可」を決めた大学側を相手取り、教授の地位確認と決定の取り消しを求める二つの訴訟を起こした。一審・京都地裁は昨年3月、「任期満了によって当然失職した。再任拒否は取り消し対象となる処分にあたらない」として請求を退けたため、井上氏が控訴した。 』


投稿者 管理者 : 2005年12月28日 15:25

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://university.main.jp/cgi4/mt/mt-tb.cgi/995

コメント