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2006年01月17日

「君が代」訴訟(通称「スミぬり裁判」)

法学館憲法研究所
 ∟●「君が代」訴訟(通称「スミぬり裁判」)

「君が代」訴訟(通称「スミぬり裁判」)

大阪府枚方市 松田浩二

 1999年8月に「国旗・国歌法」が制定されてから、またたくまに全国に「日の丸・君が代」強制の波が押し寄せていったことはご存知のことだと思います。東京都では、個人あるいは教員集団による「日の丸・君が代」処分関連の教育裁判が数多く起こされていますが、当「法学館憲法研究所」HPでも、もっとも大規模に争われている「予防訴訟」について「憲法関連裁判情報」のところで紹介されています。
 大阪府も決して例外ではありません。まだ今のところ、都教委の10・23通達(03年)のような指示や職務命令と、それに基づく「君が代」不起立教員の根こそぎ処分という、性急で野蛮な粛清路線を大阪府教委がおおっぴらに採っていないだけのことで、都教委の手荒なやり方を奇貨として、一方で模様眺めをしながら、他方で真綿で首をしめるようにじわじわと強制を押し進めています。
 私たちが知る限り、大阪府内でも「国旗・国歌法」に呼応して突出した動きを見せたのが枚方市教育委員会でした。前教育長(現教育委員長)が1999年1月の定例校長会で出した「3点指示」を皮切りに、「4点指示」「6点指示」へと指示内容をエスカレートさせ、2001年11月には「7点指示」を出すに至ったのです。その後、若干の改悪修正はあったものの、現在もこの「7点指示」が卒業式・入学式に向けて出され続けています(詳しくは「スミぬり裁判をすすめる会」HPをご覧いただければうれしく思います)。
 そして枚方市教委は、この指示を学校現場で完遂させるために、徹底した「調査」を繰り返し行いました。ピークとなった2002年には卒業式・入学式の事前、事後に、式直後の電話報告も含めて計8回もの「7点指示」実施状況調査(校長による文書報告)を行い、その都度、市教委は詳細な一覧表を作成しているのです。このような調査は全国的に見ても今でこそ珍しいものではなくなりましたが、たとえば「7点指示」に則った調査の中の「国旗について」という項目だけでも(1)式場内掲揚場所(2)式場外掲揚場所(3)掲揚時刻(4)降納時刻(5)掲揚者という5点の報告を求めています。さらに「国歌」については、式次第やしおりに歌詞を明記したか、伴奏方法、伴奏者、児童・生徒への指導を社会科、音楽の授業でいつ行ったか、斉唱の指導をするように教員に指示を出したか、教員が起立するように指示をしたか、起立しなかった教員に再度の指示をしたか、児童・生徒、保護者、来賓の起立状況、斉唱状況などなど、微に入り細に渡った点検をして、全小中学校に関する精緻な一覧表を各調査ごとに「丁寧に」作っているわけです。その完成度の高さといい、2000年~2002年当時という時期の先駆性を考えれば、目をみはるものがあるといってもいいでしょう(もちろんこんなことは何の自慢にもなりません)。調査は回数こそ減りましたが今も続けられています。
 これによって、2000年には1校も行われていなかった「君が代」ピアノ伴奏が2005年には枚方市内全小中学校で行われるようになり、小学校で多く採用されていた対面式の卒業式や入学式もすべて壇上形式にむりやり変更されました。「君が代斉唱」についても、ほぼすべての児童・生徒、教職員、保護者が起立せざるをえない状況に追い込まれています。指示に従わない校長は何度も市教委に呼び出されて詰問され、厳しい「指導」を受けています。その証拠書類もつい最近、入手することができました。
 そして問題の2002年の入学式では、とどめを刺すように、卒業式の分も含めた「不起立教職員調査」が行われたのです。起立しなかった教職員はひとりずつ校長室に呼ばれて氏名の確認と「起立しなかった理由」を聴取され、それが市教委に報告されて一覧表になっています。「平成14年度入学式の国歌斉唱時、起立しなかった教職員調査」という一覧表を情報公開請求によって私たちが入手したとき、41名の不起立教職員の「氏名と起立しなかった理由」は真っ黒にスミぬりされて出されました。……


投稿者 管理者 : 2006年01月17日 00:12

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