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2006年02月22日

国際人権条約、「経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会」の一般的意見 「学問の自由と大学の自治」

日弁連「国際人権ライブラリー」
 ∟●「経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会」の一般的意見
 一般的意見第13 (1999): 教育に対する権利(規約13 条) (E/C.12/1999/10)第21 会期,1991 年) 1)

 下記に,国際人権条約における「経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会」の一般的意見のうち,現在問題なっている「無償教育の漸進的な導入」の13条(b)以外の13条関係を抜粋する。
  特に「教育職員の物質的条件」の保障,および「学問の自由」と「高等教育機関の自治」を示す。

第13 条2項(e) : 学校制度, 十分な奨学金制度, 教育職員の物質的条件

25 「すべての段階にわたる学校制度の発展を積極的に追求し」なければならないという要請は、締約国には学校制度について総合的な発展戦略をもつ義務があるということを意味する。 この戦略はすべての段階の学校を包含したものでなければならないが、規約は締約国に対して、初等教育を優先するよう求めている(パラグラフ51 を参照)。 「積極的に追求」 するとは、この総合的戦略には政府による一定の優先順位が与えられるべきであり、かつ、いかなる場合でも、精力的に実施されなければならないことを示唆するものである。

26 「適当な奨学金制度を設立し」なければならないという要請は、規約の無差別及び平等条項とあわせて読まれるべきである。 奨学金制度は、不利な立場におかれた集団に属する個人による教育上のアクセスの平等を高めるものであるべきである。

27 規約は「教育職員の物質的条件を不断に改善すること」を求めているが、実際には近年、多くの締約国において、教員の一般的な労働条件が悪化し、容認できないほどの低水準に至っている。 これは第13 条2 項(e)に合致しないのみならず、教育に対する生徒の権利の完全な実現にとっての重大な障害でもある。 委員会はまた、規約第13 条2項(e)、2条2項, 3条並びに、教員の結社及び団体交渉の権利を含む第6~8条の関係に留意し、教員の地位に関するユネスコとILO の共同勧告(1966 年)及び高等教育職員の地位に関するユネスコの勧告(1997 年)について締約国の注意を促し、かつ、締約国に対し、すべての教育職員がその役割に相応する条件及び地位を享受することを確保するために取っている措置について報告するよう強く求める。

学問の自由及び機関の自治17)

38 委員会は, 多数の締約国の報告書を検討してきた経験に照らし、教育に対する権利は職員及び生徒の学問の自治が伴わなければ享受できないという見解を形成するに至った。従って、たとえこの問題が第13 条に明示的に触れられていなくとも、委員会が学問の自由について若干の所見を述べることは適当かつ必要である。 以下の所見は、高等教育機関に特に注意を払っている。 それは、委員会の経験では、高等教育の職員及び生徒は学問の自由を阻害する政治的その他の圧力に特に弱い立場にあるからである。 しかし委員会は、教育部門のすべての職員及び生徒が学問の自由についての権利を有しており、以下の所見の多くは一般的に適用されるものであることを強調したい。

39 学問の世界に属する者は、個人的又は集団的に、調査、教授、研究、討論、執筆又は製作を通じて、知識及び考えを自由に追求し、発展させまた伝達することができる。 学問の自由は、個人が、自分が働く機関又は制度について自由に意見を表明し、国又はその他のいかなる主体による差別又は圧迫の恐れもなく職務を遂行し、専門的な又は代表制に基づく学術団体に参加し、かつ、同じ管轄に属する他の個人に適用される国際的に認められたすべての人権を享受する自由を含む。 学問の自由の享受には、他の者の学問の自由を尊重し、反対意見の公正な議論を確保し、またすべての者をいかなる禁止事由に基づく差別もなく取扱う義務のような義務を伴う。

40 学問の自由の享受のためには、高等教育機関の自治が必要である。 自治(autonomy)は、学問的な活動、基準、道営及び関連の活動に関して高等教育機関が効果的な意思決定を行うために必要な程度の自己統治(self-governance)である。しかし、自己統治は、特に国によって提供されている資金との関連で、公的な説明責任(accountability)の制度に合致したものでなければならない。高等教育において相当の公的投資が行われていることをふまえれば、機関の自治と説明責任の間には適切なバランスが見出されなければならない。 単一のモデルはないものの、制度的取決めは公正、公平かつ衡平であるべきでありかつ、できる限り透明で参加型のものであるべきである。


投稿者 管理者 : 2006年02月22日 00:08

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