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2006年06月02日

東京私大教連、私大教職員は教育基本法改悪法案の廃案を求めます

東京私大教連
 ∟●私大教職員は教育基本法改悪法案の廃案を求めます

私大教職員は教育基本法改悪法案の廃案を求めます

2006年5月19日
東京地区私立大学教職員組合連合
中央執行委員会

 政府・与党は5月16 日、教育基本法改悪法案の上程に反対する国民の声を無視し、衆議院本会議で審議入りを強行しました。全国民的な課題である教育の基本を定める重要な法案を、与党一部議員のみによる密室協議で作成した上、特別委員会の設置により短期間での強行成立を謀ろうする政府・与党・文科省に対し、私たちは満腔の怒りをもって厳しく抗議します。

 現行教育基本法は、日本国憲法に立脚し、教育の目的を、「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期する」と規定するとともに、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべき」であり、「教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行する必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない」と、教育行政の役割を限定しています。これは、侵略戦争の反省にたち、教育行政による教育への「不当な支配」を排し、教育を国家が統制する体制を一掃したものです。また、現行教育基本法は、教育の機会均等、義務教育9 カ年制、男女共学、社会教育の奨励などの原則を掲げて教育上の差別を禁止しています。さらに、「教員は、全体の奉仕者であって、自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。このためには、教員の身分は、尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない」ことを強調しています。

 審議入りした法案は、現行教育基本法の理念を投げ捨て、国家による教育統制に道を切りひらく全面的改定と言わざるを得ません。

 国家の教育への介入を否定した現行第10 条について、教育は「この法律及び他の法律の定めるところにより」行われるものとの文言を挿入し、条件整備への限定を解除しました。「不当な支配に服することなく」という文言は残されましたが、それは国家統制に服さない教育を排除することを正当化するためにほかなりません。また、公教育を主体的に担う教員が、直接国民に対してその責任を負うことを意味する「全体の奉仕者」という言葉を削除し、教育行政に対する責任にすり替えることにより、教育の自由を制限しています。

 法案が掲げる「教育目標」は、国家に「必要な資質」をもった人間、すなわち「真理と平和を希求する」のでなく、国策に従順な人間を育てることにあります。「愛国心」を強制し、能力主義的教育を前提とした義務教育年限の弾力化をねらって「九年の普通教育」を削除し、また「男女共学」を削除するなど、新自由主義的かつ新保守主義的な施策が随所に盛り込まれています。さらに、「教育振興基本計画」の新設は、行政に教育内容を決定し実行する権限を与え、教育への制限のない支配介入をねらうものとなっています。

 法案で新設された条項のなかに、「大学」と「私立学校」があります。「大学」に関する条文は、大学の目的として現行学校教育法にはない「社会の発展への寄与」を新たに規定し、市場原理を至上の価値とする新自由主義的政策を、いっそう容易かつ直接に現場に持ち込むことを可能としています。これは、学問の自由と大学の自治を侵害する重大な問題です。

 「私立学校」に関する条文は、私立学校法が私学の自主性を「重んじ」と規定しているものを、法案は「尊重しつつ」と相対的に弱めていることを除けば、私立学校法や私立学校振興助成法と大きく異なるものではなく、法案の問題性を隠蔽し、批判をかわすための作為と断じざるをえません。むしろ、国際人権規約の高等教育無償化条項を留保し、私学助成を著しく低い水準に放置してきた政府がこうした条文を法案に盛り込むことの欺瞞性を指摘せざるをえません。

 また、現行教育基本法が教員について、国公私の別なく学校教育が国民全体のものであるという認識のもとに規定している「全体の奉仕者」という文言を削除したことについて、5月16 日の衆院本会議で小坂文部科学大臣は、「私立学校の教員についても対象とする」ことが理由であるとの答弁を行いました。これは、私たち私立大学教職員を「国民に対して直接責任を負」う公教育の担い手ではないとする重大な発言です。

 政府・与党は、現行教育基本法「改正」の理由として、「時代の要請にこたえる」ためと称し、それ以上の立法趣旨・理由を明らかにしていません。現行教育基本法のどこがどう時代にそぐわないかもまったく不明です。現在の学校教育の現場で起こっている諸問題は現行教育基本法に問題があるためではなく、むしろ現行教育基本法の重要な理念を投げ捨て、「競争原理と管理教育」を押しつけてきた教育行政にこそ根本的な原因があります。

 法案のもつ重大な問題性、憲法違反の内実を徹底審議によって国民に明らかにすることを通し、教育基本法改悪案を廃案とすることを私たちは強く求めます。

以 上


投稿者 管理者 : 2006年06月02日 00:00

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