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2006年07月28日

立命館大学従業員過半数代表者選挙、分裂選管

 現在,立命館大学では,労基法等に定める協定を結ぶために,従業員過半数代表者を選ぶ手続きが進んでいる。

 ゼネラルユニオン立命館大学支部(GU)は, これまで学校法人立命館では非正規労働者や外国人労働者を含んだすべての従業員の代表者を選ぶ手続きが行われていないとして,「2006立命館従業員代表選挙管理委員会」を独自に発足させ,7月1日付けにて,従業員代表選挙立候補届出を告知している。

 他方,立命館大学の正規教職員から構成される立命館大学教職員組合(RU)は,これとは別個に7月20日に選挙管理委員会を発足させ,過半数代表者選出の手続きを開始した。すでに,RUは自ら独自に推薦する代表者も決めているようだ。

 こうした従業員の側における分裂選管の状態と選出手続きの分断化は,今の立命館大学における労使関係の内実をよく物語っているように思われる。

 従業員過半数代表者の選出方法については,1998年改正労基法に伴い「労働基準法施行規則6条の2」において明記された。ただし,内容的には「監督又は管理の地位にある者でないこと」「法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること」だけが明記されている。従って,代表者を選出するにあたって,規模が大きく,多様な雇用形態の労働者が存在する場合,具体的にいかなる民主的な手続きを踏むべきかについては当然ながら書かれていない。

 そもそもこの従業員過半数代表という制度は,過半数で組織する労働組合がない場合の補完的な機能という性格をもっている。しかし,現実は法の想定とは逆行し,わが国の主流となった本工(正職員)組合から成る企業別組合が衰退していること,他方で就労・雇用形態の多様化が進展することにより,本工組合だけでは労働者の利益を代表することが不可能になりつつある。そして,本工(正職員)組合が,非正規雇用者を同じ事業所で働く利害関係者として位置づける観点が弱ければ(あるいは一方に排除する労働慣行が続けば),立命館のような結果となる。

 過半数で組織する労働組合がない事業体において,従業員の中から過半数代表者を選出する方法に関して,実際のやり方を推測するに,おそらく多数は事業主自らが選出手続きをお膳立てするのが一般的なのだろうと思われる。この場合,選出のための手続きは統一されている。他方,一番問題になるケースを想定してみると(実際,このケースは多数存在すると思われるが),それは一つの事業体の中に複数の労働組合が存在しているケース(例えば,教員組合と職員組合,非常勤組合の併存など)である。しかし,この場合においても,代表者を選出する手続きと機関が分裂したという話はあまり聞かない。相互に調整する機構を制度的にもっているか,あるいはそれぞれの組織の中から候補者を推薦し,あるいは未組織労働者の自主的立候補をも保障しつつ,全体として統一的な投票手続きをとるといった一定の(暗黙の)ルールが確立されている場合が多いからだ。

 その意味で,今回の立命館大学のケースは極めて異様な光景に見える。こうした労使関係の分断化とそれがもたらした結果そのものが,究極的に言えば,意識するしないに拘わらず,大学人の世界において,同大の華々しい教育の商品化とともに,何かにつけ「あの立命館か」といった一種の羨望とは正反対の心性を生み出す元となっているのかもしれない。

投稿者 管理者 : 2006年07月28日 01:18

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