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2007年01月17日

国際教養大学の全教員任期制・年俸制と横浜市立大学の類似点、TOEFL進級基準・教授会の人事権剥奪など

 秋田県の国際教養大学で採用されている全教員任期制について,開学後初の契約更新で4分の1の教員が再任を果たせず退職に追い込まれた事件を最近の記事で紹介した。いま,同大学の人事を含めた組織運営について強い関心を持つ。

 この問題について,Wikipedia(国際教養大学)は,「教員陣は開学時に「更新の可能性ありの3年契約」で雇用されたが、個々の教員の研究や教育における業績不足、特に博士号未取得を理由に、2006年度末には英語集中プログラム(EAP)の教員の14人中7人(その全員がアメリカ国籍)、EAP外では35人中4人(その内2人は外国人博士、2人は日本人修士)が1期生の卒業も見届けられないまま解雇される。これらのポストの後任者は2006年夏、秋の2度にわたるThe Chronicle of Higher Education(en:The Chronicle of Higher Education)などの国際専門誌、および各種国際学会・研究会のウェブサイトやメーリングリストを利用した大規模な公募で決定された。
 解雇の根拠とされた教員評価の手法の公正性、最高学位が修士であるTESOL(en:TESOL)において実務経験よりも博士号の有無や博士課程に在籍中か否かを重視することの意義、その一方で博士号どころか修士号さえ持たない日本人教員が豊富な実務経験を理由に部門責任者などの役職を更新されている事実などが明らかになり、学内外で議論を呼び起こしている」と説明している。

 また,BLACKLIST OF JAPANESE UNIVERSITIESは次のように報告している。

Akita International University

Despite wanting PhDs (or the equivalent) for faculty, AIU offers 3-year contracted positions with no mention of any possibility of tenure, plus a heavy workload (10 to 15 hours per week, which means the latter amounts to 10 koma class periods), a four-month probationary period, no retirement pay, and job evaluations of allegedly questionable aims. In other words, conditions that are in no visible way different from any other gaijin-contracting "non-international university" in Japan. Except for the lack of retirement pay.

 これを読む限り,再任の基準はそれほど明確ではないようだ。加えて,週10コマの講義ノルマ。 参考資料として,Chronicle Forums での議論もある。

 同大学の場合,全教員に教員評価制度を導入し年俸制を採用する。この点について新聞報道は次のように書いている。

「2004年4月の開学当初から、教員の年俸制、任期制とともに、人事評価制度も導入している。課程長ら責任者が教員の自己評価や同僚、学生の評価を判断材料に、教育や研究、地域貢献などの項目ごとに点数化。これを基に、学長が最終的にS、A~E、Xの7段階で絶対評価する」(読売新聞2006/10/28)

「正規の教職員はすべて三年の任期制で、年俸制が適用される。教員については、授業に関して学生、同僚、自己がそれぞれ評価を行う。学生は学期ごとに授業評価表を提出、同僚教員は月に一回程度、二、三人で評価にあたる。そのうえで、課程長ら責任者が総合的に判断する。授業以外の教員の活動については、報告を受けて判断する。
 評価は教育活動や研究活動などについて、百点満点で採点。その点数により、A―Eの五段階に分ける。実績によっては、これをさらに上回るSと下回るXとする。Sは翌年の年俸が二割増となり、Xは二割減となる仕組み。」(読売新聞2006/02/11)

「評価基準には「研究活動」や「地域貢献」など六つの項目があり、学生らは5分の1以上の配点が敷かれる「教育活動」講義部門の評価を担当。教材や授業の分かりやすさ、質問への受け答えなどを判断する。本人申告も含めた評価は所属長が総合評価し、最終的に学長が判断するという。」(毎日新聞2004/02/11)

文科省、公立大学の法人化を契機とした特色ある取組(詳細)

(公立大学法人国際教養大学)
○教員については、業績評価、事務職員については業績評価および能力評価(スタッフ層のみ)を実施している。評価期間は暦年(1月~12月)とし、最終評価は翌年2月中に行われ、3月に各人へ通知することとなる。業績評価は通常5段階評価であるが、特別な業績がある場合には、さらに2段階の特別評価枠が加わり、これら評価結果に応じて翌年度の年俸が上下最大20パーセントの範囲内で変動する。大学側の契約時の期待を満たすことが標準評価(プラス・マイナス・ゼロ)となる前提であり、契約時の合意年俸額が維持されることとなる。

公立大学法人国際教養大学役員報酬等支給基準(PDF:41KB)
公立大学法人国際教養大学教職員給与規程(PDF:141KB)

 これらを読んでいくと,国際教養大学は横浜市立大学と非常に類似した大学のように思える。類似点は,まずどちらも公立大学法人で,国際教養を教育の柱に掲げていること,全教員を対象にした任期制を導入していること(因みに,全教員任期制は全国国公立大学で他に「北見工業大学」「首都大学東京」「横浜市立大学」「長崎県公立大学」の4大学),全教員対象の年俸制を導入していること(因みに,全教員年俸制は他に「首都大学東京」「横浜市立大学」),学生にTOEFL取得を強制的に義務づけていること,教授会の人事権を剥奪していること(国際教養大では,「人事の決定権も、教授会による合議制ではなく、学長を含む8人の理事(長)・委員による「大学経営会議」が決定する」と報じられている(朝日新聞2004/02/07),などである。国際教養大学の場合,まともな教授会が機能し,自治が確立しているのだろうか。

投稿者 管理者 : 2007年01月17日 00:00

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