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2007年4月20日

東和大、理事会決定に現場混乱 文科省 静観

■毎日新聞(2007/04/19)

大学経営新時代:第3部・生き残りをかけて/3 監視役不在

 ◇理事会決定に現場混乱
 07年度から学生募集を停止し、09年度末で廃校にする――。
 昨年8月、学校法人福田学園(現・純真学園)の臨時理事会で、運営する工学部単独の東和大学(福岡市)を事実上の廃校とする福田庸之助理事長の提案が4対1で承認された。反対したのは、東和大学長を兼ねる理事一人だけだった。
 提案に賛成した山崎正行常務理事は「工学系大学は急速に悪くなる。行き詰まる前にやめた方がよい」と決定の妥当性を強調するが、大学存続を求める学生や保護者、教員との間で対立が今も続いている。
 東和大は67年に開学。少子化や学生の工学部離れで05年度に、借入を除く収入から支出を引いた「帰属収支差額」が「赤字」に転落し、06年度には学生数が定員割れした。しかし、福田理事長と現場の教授会は、長年にわたって経営の主導権を巡って綱引きを続けており、経営改善策も双方の対立でまとまらなかった。元理事の一人は「学園全体で特別チームをつくるなどして考えるべきだった」と悔やむ。
 福田理事長の経営権掌握のきっかけになったのは、05年4月の私立学校法改正。学校法人の経営責任を明確化し、意思決定を迅速化するため理事会を「学校法人の業務を決し、理事の職務の執行を監督する」と定義。企業の取締役会同様、経営の重要事項を決める最高意思決定機関とした。
 福田理事長はこれを受け、理事7人のうち傘下の大学・短大学長ら最低でも3人の枠が確保されていた教員出身の理事の定数を「1~2人」に削減。また、自らが外部から2人をスカウトし、理事に据えた。その後、教員出身理事が相次いで退任したが補充せず、8月には5人に減った理事会の過半数を押さえ、経営権を完全に掌握した。
 「廃校」決定後、20人以上の教員が解雇され、学生の卒業に必要な授業が一時休止するなど混乱が続く。元理事は「株式会社の株主総会のように、経営陣を監視する仕組みがない」と法改正のデメリットを指摘する。
 法改正に向けた04年の国会審議では、理事長の独断専行を懸念する議員から「監督官庁の文部科学省の関与を強めるべきではないか」との指摘が出た。しかし、文科省側は「私立学校の自主性を尊重し、関与はできるだけ抑制する」と答弁。経営の「監視役」不在のまま、改正法が成立した。
 今回も、文科省は「学校が募集停止を表明したのに、国が存続しろというのはおかしい」と静観している。


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