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2007年5月 8日

全国憲法研究会、日本国憲法施行60周年にあたって

http://www.jicl.jp/now/jyoukyou/backnumber/20070507_2.html

日本国憲法施行60周年にあたって

2007年5月3日

1 日本国憲法は、本日、施行60周年を迎えた。この機会に、全国憲法研究会は、代表の名において、この60年の歩みをふり返り、日本国憲法の積極的意義をあらためて確認するとともに、引き続きこれを堅持し発展させるべきであると考え、以下の所見を明らかにしたい。

2 大日本帝国憲法(明治憲法)のもとでの日本は、個人の尊重、自由と平等、民主主義などの近代憲法の諸原理を欠いたまま、やがて侵略戦争に突き進み、膨大な加害責任を残して1945年の敗戦に至った。日本国憲法は、このような歴史を反省し、主権在民、人権保障、民主主義といった近代憲法の諸原理を受け入れるとともに、軍事によらない平和、人間的生存の権利の保障といった現代的要請をも盛り込んで成立した。それは、世界憲法史に新たな画期を開いたものでもある。
こうして誕生した日本国憲法の60年におよぶ歩みは、決して平坦ではなかった。憲法の諸原理の定着を妨げる政治の荒波は絶えることなく、今日まで及んでいる。しかし他方でこの60年は、主権者が基本的人権を行使しつつ、憲法の諸原理を定着させる「不断の努力」を重ねてきた歴史でもあった。

3 全国憲法研究会は、1965年に「平和・民主・人権を基本原理とする日本国憲法を護る立場に立って学問的研究を行なう」ことを目的として結成された「憲法を研究する専門家の集団」による学会である(規約第1条)。当時、政府のもとに置かれていた「憲法調査会」が、1964年に報告書を提出し、日本国憲法が、その基本原理を放棄・縮減する方向で改変される可能性が高まる中で、この学会は誕生した。以来、全国憲法研究会は、この基本原理を護ることの学問的意味を究明するとともに、この基本原理にもとると思われた立法・行政・司法の諸事例に対し、そのつど、学問的な批判的検討を重ね、その一部は、さまざまな形で社会的に公表してきた。

4 施行60周年を迎えた憲法に対して、これを「改正」してその基本原理に「引退」を迫る政治状況が、急速かつ本格的に展開している。憲法と一体のものとして制定された教育基本法が、昨年末、基本原理において改変されたことは、このような展開の象徴的事態であった。

5 こうした動きは、全国憲法研究会結成の原点に立ち返るならば、深い憂慮の念を抱かせる。全国憲法研究会は、引き続き、平和・民主・人権を基本原理とする日本国憲法を護る立場に立って学問的研究を展開する。

以上、全国憲法研究会運営委員会の議を経て、表明するものである。

全国憲法研究会  運営委員会代表 森 英樹

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