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2007年5月 2日

龍大9条の会声明

改憲国民投票法案情報センター
 ∟●龍大9条の会声明

龍大9条の会声明

改憲手続法案(国民投票法案)に反対する声明


2007年4月28日
「龍大9条の会」


自民党と公明党は、4月13日、衆議院で憲法改正手続法案(国民投票法案)を強行採決し、参議院に送付した。私たち「龍大9条の会」は、この法案に反対し、参議院が速やかにこの法案を廃案にすることを要請するものである。 私たちが、この法案に反対する理由は以下の通りである。

 まず、この法案は、現在政府与党などによって企図されている憲法9条の改憲を実現するための手続き法案としての意味を政治的に有しているということである。私たちは、憲法9条が戦後における日本及びアジアの平和的秩序の形成に多大な貢献を果たしてきたことを高く評価するが故に、9条の改憲には断固反対であり、したがって、9条改憲の実現につながるような改憲手続き法案にも反対せざるを得ない。

また、この法案は、内容的にも時間をかけてじっくりと国民の間で検討されなければならない多くの問題点・疑問点をもっている。まず第一に、国民投票の投票年齢について、法案は満18年以上の国民としつつも、「附則」で「国はこの法律が施行されるまでの間、満20年未満の者が国政に参加することができるよう、選挙権を有する者の年齢を定める公職選挙法、成年年齢を定める民法その他の法令の検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとする」「前項の法制上の措置が講ぜられるまでの間、これらの規定中「満18年以上」とあるのは、「満20年以上」とする」としているが、このような規定は、本法案がいかに急場しのぎのものであるかを端的に示している。国民投票の投票権者の年齢をどうするかは、公職選挙法のみならず、民法さらには刑法・少年法などにも密接に関連する基本的な法律問題である。このような基本問題に関して、慎重な検討を国民的規模で行うことをせずに、「附則」で処理するような姑息なやり方は、到底認められるものではない。

 第二に、この法案は、国民投票は「憲法改正案ごとに」行うとし、また「憲法改正原案の発議に当たっては、内容において関連する事項ごとに区分して行う」としているが、その趣旨は必ずしも明確ではない。私たちは、憲法96条の趣旨からすれば、当然に条文ごとの投票が必要であると考えるが、このような基本問題について不分明な法案は欠陥法案と言わざるを得ない。

 第三に、この法案は、「憲法改正案に対する賛成の投票の数が、賛成票と反対票を合計した投票総数の2分の1を超えた場合には、当該憲法改正について憲法96条1項の国民投票の承認があったものとする」と規定している。しかし、このよう規定は、憲法96条が国民投票で「過半数の賛成を必要とする」としている「過半数」の母数を有効投票総数という最も低いものとすることによって、改憲を安易に可能とするものであり、到底認めることはできないのである。例えば、韓国では、有権者の過半数が投票しなければ、改憲が成立しないという「最低投票率」制度を設けているが、日本でも少なくともそのような制度を設けることが、憲法がわざわざ国民投票を規定している趣旨からすれば、必要であろう。

 第四に、この法案は、公務員や教員が「(その)地位にあるために特に国民投票運動を効果的に行い得る影響力又は便益を利用して、国民投票運動をすることができない」と規定しているが、その規制内容はきわめて漠然不明確である。このような漠然不明確な規定によって公務員や教員が国民投票運動に参加することを禁止することは、明らかに憲法21条に違反するといわなければならない。たしかにこの規定に関して罰則規定はなくなったが、行政上・民事上の処分を受ける可能性はあり、公務員や教員が主権者の一員として国民投票運動に参加することに対して萎縮的な作用をもたらすことは確実である。私たちは、大学に籍を置く者としてこのような規定を含む法案に強く反対せざるを得ない。

 第五に、この法案は、憲法改正の発議がなされた場合に国民に対してその広報を行うために国民投票広報協議会の設置を定めているが、協議会の構成は国会における各党の所属議員数に応じて配分される仕組みになっている。これでは、国民投票広報協議会の広報活動は改憲のための広報活動が国費を使って行われることになりかねないであろう。改憲広報協議会として機能しかねないこのような国民投票広報協議会の構成に私たちは、反対せざるをえない。

 第六に、この法案は、マスコミなどの報道規制の問題に関しても少なからざる問題点を含んでいる。法案は、政党などが行う有料のテレビ・ラジオCMの投票期日前14日間の禁止を規定しているが、これは、放送の自由と放送の公平性の確保とに関わる微妙な問題を含んでいる。このような微妙な問題に関しては、広くマスコミ関係者をも含めて慎重な議論がさらになされることが必要であり、法案のような規定では、放送の自由も放送の公平性の確保も共に侵されることになりかねない。

 最後に、この法案によれば、国会が憲法改正の発議を行ってから60日以降180日以内に国民投票を実施するとしているが、国民に対する周知期間としてはあまりにも短いといわなければならない。民主主義は単なる多数決ではない。国民の間で十分な討議がなれれてはじめて民主主義はよく機能する。憲法改正の発議の意味内容や意図について2ヶ月ないし6ヶ月の間で国民に周知徹底させ、国民的な討議を十分に行うことはほとんど不可能といってよい。この法案は、この意味で、民主主義の何たるかをもわきまえないものといわなければならない。

以上のように数多くの問題点・疑問点を含むこの法案については直ちに廃案にすることを、私たちは、参議院に対して要請するとともに、廃案のための運動に参加することを広く全国の市民に呼びかけるものである。

以上

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