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2007年8月 9日

社会権規約第3回政府報告作成に関する市民・NGOとの意見交換会に参加して(投稿)

社会権規約意見交換会に参加して

細川孝(龍谷大学)
大学評価学会2006年問題特別委員会委員
国際人権A規約第13条の会運営委員会代表

 2007年8月7日に開催された「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約第3回政府報告作成に関する市民・NGOとの意見交換会」に参加する機会を得た。以下、参加しての感想を簡単に記したい。

 意見交換会は、16時半から18時半までの予定で開催された。都合で19時半までの参加となったが、その時点では、まだまだ続きそうな雰囲気であった。市民・NGOの側の席の最前列に座ったため、全体の参加者数はつかめていないが、およそ70~80名の参加があったものと思われる。政府側は、外務省の他、財務省、総務省、法務省、厚生労働省、文部科学省、国土交通省から担当者が出席していた。

 意見交換会は、希望する参加者が発言し、発言内容に関連する省庁が回答するという形で行われた。たしかに参加者の発言を保障するという点では、配慮したものと考えられるが、元々設定された2時間では終了しないことは明らかであった。外務省も冒頭で、会議時間については、柔軟に対応したい、と発言していた。

 日本政府の第2回定期報告書を受けて、採択された「社会権規約委員会の総括所見 日本」では、次のように記されている。「委員会はまた、締約国に対し、第3回定期報告書の作成の早い段階で非政府組織その他の市民社会の構成員と協議するようにも奨励するものである」。今回の意見懇談会はこのような趣旨から開催されたものであり、懇談会の議長(進行役)を勤めた外務省人権人道課長もこの点を強調していた。しかし、その実態は、何人もの参加者が指摘したように、多くの問題を抱えるものであった。「政府と市民社会の構成員との対話」ということに不慣れな日本政府の実態を垣間見た気がした。

 その一方で、市民・NGOの側の発言内容は、職場における人権侵害、年金問題、在日外国人の人権、婚外子に対する差別、野宿者の問題など、日本における深刻な人権状況を知ることが出来て、わたしにとって学習の場となった(ついでに言えば、このような場は、学生の教育にとっても有益であると思われる)。市民・NGOの側のネットワークが整っていればいいのに、という思いを感じつつも、市民・NGOと政府とのギャップの深さに改めて驚きを感じたところである。

 さて、今回の参加は、社会権規約第13条2項(b)(c)の中等教育および高等教育における「無償教育の漸進的導入」に関しての発言を行うためであった。このテーマでは、(わたしが退席するまでの間に)国庫助成に関する全国私立大学教授会連合、全国大学高専教職員組合、東京地区私立大学教職員組合連合、全国大学院生協議会の大学関係の団体と市民からも発言があった。いずれも留保の撤回と高等教育予算の充実を求めるものであった。文部科学省からは、進学者と非進学者の間の負担の公平、多数の私学の存在を根拠に留保しているという、これまでの主張が繰り返された。また、経済的格差によって生じる問題については、対応しているという発言があった。

 発言の中で、外務省人権人道課長は、第2回の意見交換会を含め、市民・NGOとの意見交換の持ち方について検討したい、と発言していた。重要な発言と受け止めたい。平日の夕刻の(実際には時間を延長したとはいえ)2時間で、意見交換が出来るわけがないだろう。外務省にあらかじめ提出された約100通の意見を踏まえ、テーマや論点を設定し、効率的に議事を進行することも出来たはずである。また、遠方からの参加者のことを考慮すれば、もっと早い時間帯に設定することも必要だろう。東京だけでなく、全国各地でも開催すべきだろう。人権に対する日本政府の姿勢の不十分さは明らかであろう。

 中等教育関係者を含め、社会権規約第13条2(b)(c)の問題で、社会に対して、わたしたちの見解を明らかにする機会をぜひ持ちたいと思う。今回の意見交換会は、外務省のホームページ上で公開されただけであり、無償教育の漸進的導入に先駆的に取り組んできた日本高等学校教職員組合はこの情報をつかんでおらず、意見交換会には参加できていない。わたしたちが独自にネットワークを構築し、そこに外務省や文部科学省の担当者を招き、意見交換する機会をぜひ持ちたいと思う。
(2007年8月8日、文責:細川)

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