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2007年8月 1日

大学評価学会、外務省に「社会的及び文化的権利に関する国際規約・政府報告に関する意見」を提出

 大学評価学会は,社会権規約13条2項(c)(=高等教育的無償化条項)に関し留保撤回を求める意見書を外務省に提出した。

経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約・政府報告に関する意見

2007年7月24日

団体(個人)名(大学評価学会・2006年問題特別委員会)
住所(京都市伏見区深草塚本町67・龍谷大学・重本研究室)
電話(075-461-8707<自宅>)
FAX( 同上 )
Eメール(sigemoto@biz.ryukoku.ac.jp)
団体の場合は執筆者名(重本直利)


1.条約関連条項:13条2項(c)
 政府報告書関連パラ番号:34   

2.見出し
 日本政府による同規約第13条2項(c)(「漸進的無償化」の箇所)の1979年留保およびその継続と1980年以降の日本の大学の学費高騰化の関係性について

3.内容
1)日本政府は1979年に同規約を批准した上で、同第13条2項(c)(「漸進的無償化」の箇所)については留保した。その後(1980年以降)、学費は高騰化した。この関係性をご説明願いたい。すなわち、この留保の意味は、「漸進的無償化」を留保したということだけであって、その後の学費の高騰化を容認するものではないと考える。この留保の趣旨からすれば、その後の学費は批准および留保した1979年当時の水準を少なくとも維持すべきであったのではないか。

2)同規約前文の「・・・・経済的、社会的及び文化的権利を享有することの出来る条件が作り出される場合に初めて達成されることになる・・・・」、同第2条[人権実現の義務]1項の「・・・・権利の完全な実現を漸進的に達成するため、自国における利用可能な手段を最大限に用いること・・・・」、同2項「・・・・財産・・・・によるいかなる差別もなしに行使されることを保障する・・・・」、同第13条1項の「・・・・教育が、すべての者に対し、自由な社会に効果的に参加すること、・・・・」などの項について日本政府は批准している。1980年以降の学費の高騰化は、この批准した各項および同規約趣旨に反するのではないか。また、1980年以降の学費の高騰化に対し、日本政府が適切な対応を取らなかったこと、また自らが所管する国立大学の学費を高騰化させた日本の事態(現実)は、上記の批准した項および同規約趣旨に反し、明らかな規約違反(条約違反<注>)状態と考える。

3)この状態は日本の大学評価における根源的な問題である。同規約批准国(151ヵ国)中、同第13条2項(c)(「漸進的無償化」)の留保はルワンダとマダカスカルと日本の三ヵ国のみであり、日本の経済的、社会的状況からみれば、留保は国際的にも容認されるものではないと考える。 

<注>「条約違反」については、すでに戸塚悦朗氏が「高等教育と学費問題―日本による国際人権(社会権)規約13条違反について―」(『国際人権法政策研究』第2巻第2号、国際人権法政策研究所、2006年)において述べているところである。 

以上

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