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2007年8月 7日

横浜市立大教員組合、任期更新手続きに関する要求「本来の教員評価制度が未確立の段階で、経営側の一方的な審査制度を適用することは、大学自治破壊である」

大学改革日誌
 ∟●最新日誌(8月06日)

8月6日 先日(2日)の執行委員会・拡大執行委員会の審議を経て、いわゆる「3年任期」の教員に対する更新手続きに関して、何重もの重大問題がある、ということで団体交渉を求め、経営トップと直接組合執行部と協議する場を設定するよう求めた。また、大学院手当て問題に関して、抗議と要求を出した。それを知らせるウィークリーにもリンクを張っておこう。夏休みで(われわれも、講義等の学期中の仕事は「休み」、普段できない研究関連の仕事にもっと時間を割きたいのだが・・・)、組合HPへのアップは遅れるかもしれないので。

 専攻長・研究科長等に数理科学の教員が確認したところ、当然のことながら、総合理学研究科は存続しており、この総合理学研究科に今回手当てを削除された教員全員が現在も所属している。そうした大学院研究科組織の構成メンバーに当然支払われるべき手当てを支払わなかった、シラバスだけを見て事務的に処理をした、ということになる。大学院のあり方に関して、またこれまでの経緯に関してなんら調査しない、実に乱暴なやり方である。

 これは、大学院研究科委員会が機能していない(人事課当局・法人当局との連絡欠如の)現状の反映でもある。手当て問題の取り扱いに関しては、研究科長・専攻長と事前にきちんと調整を行い、問題点がないかどうか確認しておくべきものなのである。

 もう一点の問題は、「改革」過程で強行的に廃止した数理科学科等の教員の新しい研究科での任務をきちんと整理し確認してこなかったということである。大学院の理科系の諸コース、とりわけ物理等の基礎的な諸学問において数理科学は絶対必要な科目のはずであり、そうした科目を講義課目として、あるいは、演習科目として設定しないでいいのかという問題がある。これは法人と大学の現在の執行部全体に問いかけられている問題であろう。また、これは、研究院の組織に対しても問いかけられていることである。

 教員組織としての研究院には、数理科学等の教員が全員所属しているのであり、その研究院から、各専攻科や各コースに教員を派遣するというシステムのはずであり、その見地からすれば、数理科学等の教員をしかるべき大学院の専攻の諸科目に派遣するのが筋である。現在の経営と大学・研究院の責任者たちが、その調整を行ったという話を聞かない。

 研究院に所属していて大学院に派遣されないのは、変則であり、適切な科目(しかも当然に必要な数理科学の科目)を新しい大学院の科目に設定することこそ、学問的な必要性からしても総合的な発展を目指すやり方からしても、また「生首を切らない」(あの数年前の激動の「改革」期に語られた言葉)温和な改革の手法としても、基本的な筋道のはずである。

 いったい、研究院はどうなったのか?

 国際総合科学における理科系専攻(修士・博士)は、数学の科目は必要ないのか?

 一昨日だったか、小柴昌俊氏の刺激的で面白いインタビュー番組をNHK・BS2で見たが、物理研究において数理科学は非常に重要だというのははっきりしめされていたが、それはある意味では初歩的な知識ではないのか?その数理科学の科目が大学院になくていいのか?不思議だ。貴重な人材を大学院が活用しないなどとは。

理事長 宝田良一殿
副理事長 松浦敬紀殿

2007年8月6日
横浜市立大学教員組合
執行委員長 永岑三千輝 
                          

任期更新手続きに関する団体交渉の要求

 以下のような諸理由・諸要求により、「3年任期」の対象とされる教員の今回の更新手続きを停止し、改めて「3年任期」の教員に対し、「5年任期と同様の制度」を提案すること、また、任期制度の前提となる教員評価制度を大学の自治の原則に合致する制度として構築すること、そのために教員組合との協議を積み重ねることを要求する。

 当局が示す自己申告書の提出期限が8月24日であり、事態の緊急性に鑑み、8月24日以前に、第一回の当問題での団体交渉の場を設定するように要求する。

―今回の手続きの問題点と要求事項―

 処遇の中でも最も重要だと思われる雇用身分に関して、とりわけ、任期の適用に関して、教員組合になんら原案を提示せず、一方的に経営サイドで決めることは許されない。このまま強行することは、労使対等原則での雇用関係構築に反するものであり、信頼関係に基づく労使関係を構築する姿勢ではなく、不当であり、大学の発展を阻害するものとなる。

 任期制適用に関して、以下の問題点と要求事項に答え、団体交渉を踏まえて、労使の合意に基づいた協定書を作成することを求める。

1.任期開始時期に関する要求

 任期がいつから始まるかは、雇用保障の期間に関係し、とりわけ、助手・助教・准教授の場合、更新回数が限定されていることから、また、分野によっては教授への昇任が教授数との関係で絶対に不可能なことから、重大な問題となる。そうした重要な問題について納得のいく制度を明確に教員側に提示していない。さらに、当局は、雇用契約書が存在しないにもかかわらず2007年4月を開始時点としている。何重もの問題点をもつ開始の時点に関して、経営サイドが一方的に決めていることは問題である。

 当局が根拠としている同意書は任期の開始時期を明確に規定していない。しかも、同意書の文面からすれば同意書とは別に法人化後に雇用契約が行われると読みとれる。期間を明確に定めた雇用契約の締結をもって任期が始まると思っていた教員に、不利益措置となるような任期開始(2007年4月)を一方的に法人が定めることは重大な問題をはらむ。同意書に任期不記載の当局責任を認め、任期を明記した個別契約書の締結を持って任期開始とすべきである。

 「教員評価制度」の結果を任期更新の判定に用いるとすると位置付けているにもかかわらず、当局の都合で「教員評価制度」が2年遅れてスタートし、しかも本年度の評価結果は処遇に反映しないとしている。このような当局の怠慢を自ら反省せず、「教員評価制度」の結果を待つことなく、任期更新の審査を別途行うことは重大な違反と言える。

 任期制度と評価制度の相互関係から当然の帰結として、処遇に反映される「教員評価制度」が実施されると同時に実質的な任期開始となるべきであると考えていた教員も多い。

 以上の問題指摘に対して、教員の納得出来る説明を行うことを求めると同時に、同意書を提出した教員に対して即刻雇用契約書の締結を行い、それをもって任期開始時期を明確にすることを求める。

2.「3年任期」・「5年任期」の同等扱いに関する要求

 当局は法人化前の教員説明会での配布資料(添付資料参照)において、「任期が3年となる者については、任期年数の上限を5年任期のものと同様の扱いとなるようにする。したがって準教授の場合、最長15年まで認める」としている。また、職員任期規程の第2条の別表1にも、教員説明会の資料にあると同様、「任期が3年となる者については、任期年数の上限を5年年期の者と同様の扱いとなるようにする。したがって、助教の倍は最長10年まで、准教授の場合は最長15年まで認める」としている。

 こうしたことから、該当する教員は、5年任期の教員と同様に運用されるものと考えていた。この「同様の扱い」を反映させた具体的運用方法を示すことを求める。組合に提示された「雇用契約書 兼 労働条件通知書 平成19年 年 月」なる書式を見ると、「任期更新回数」が明記されることになっているが、この運用を実質的に否定するような「任期更新回数」の明記を許すことはできない。「任期更新回数」の項の削除を求める。

3.「雇用契約書 兼 労働条件通知書 平成19年 年 月」なる書式によれば、労使協議の場に持ち出すことなく、任期に関して重大な不利益変更を行っている。すなわち、「任期は年度単位とし、年度途中採用者は採用年度を任期の初年度とする」ということを追加挿入している。対外的に「3年任期」、「5年任期」で募集をかけながら、すべての審査を終えて、いざ採用する段階になると、雇用契約書でそれ以下の任期に削減することを「その他」の条項で示し押し付けるなどというのは、公序良俗に反する。この事項を撤回すべきである。

4.今回、突如「3年任期」該当者であることを知って、不当だと異議を申し立てる教員が、すでに教員組合にも直接訴えてきている。こうした個別の教員の異議申し立てに対して、謙虚・慎重・誠実に対応せよ。任期制に同意したのは、当局が法人化後の任期更新について「普通にやっていれば再任する」システムにすると説明していたからである。制度への同意の条件となった約束(副理事長の教員説明会文書参照)の具体化・制度化が見られないこともあり、「そのようなシステムが作られていないので任期制への同意は撤回する」との教員の意思も、合理的な態度である。

 この二年間の経験を総合的に踏まえて、任期制への同意を撤回するとの教員の意思表明を認めよ。教員によって理解と態度が異なるのは、まさに、当初の同意書調達を踏まえて、当局が各教員に明確な契約の提示をしなかったことが、そもそもの原因だからである。

―本質的な問題の指摘と要求―

 上述と重なる部分もあるが、以下、時間をかけてつめていくべき本質的な問題に関わる指摘と要求を提示しておきたい。

1.本来の教員評価制度が未確立の段階で、経営側の一方的な審査制度を適用することは、大学自治破壊である。教員評価制度が出来上がっていない段階で、法人当局が、任命権を持っている管理職で構成した「人事委員会」において、教員に不利益となるような判定を出すことは、すでに述べたこととあわせ何重にも不合理であり、不法である。

 また、当局がその任命権限にもとづいて組織している現行の教員評価委員会も、一般教員の自由な意思表明によって編成されたものではなく、あくまでも便宜的試行的なものと見るべきであり、これをもって教員の不利益となるような審査を行うとすれば、大学自治の原則から逸脱し、憲法的にも根本的に問題をはらむものである。

 ところが、現行のものとして教員組合に提示された「雇用契約書 兼 労働条件通知書 平成19年 年 月」なる書式によれば、「更新の有無」の項目に、「更新する場合があり得る」となっている。この文言は「原則は更新しない」ことであることを明確に示している。このように重大極まりない決定を、経営審議会は承認したのか。この文言を撤回せよ。そして、従来繰り返し明言してきたとおり、すくなくとも「普通にやっていれば更新される」、「普通にやっていれば再任する」と明文で記載せよ。
 同時に、その項目において、「任期更新回数」が明記されることになっている。その更新回数はいかなる原則で明記されるのか。労働契約通知書の段階で一方的に雇用者側に示されるのは不当である。教員組合の基本要求からすれば、何回かの更新後は、「定年までの期限の定めなき雇用」に移行すべきであり、その意味でのテニュアを制度化すべきである。したがって、この観点からも「任期更新回数」の項目を削除せよ。

2.このことと関連し、「普通にやっていれば再任」と説明してきたことと、今回の「雇用契約書 兼 労働条件通知書 平成19年 年 月」における原則非更新の規定とは身分保障の上で根本的に重大な不利益変更である。同意書を取り付けるまでの説明と今回の更新時の契約書の文言との齟齬は、当局に対する不信感を決定的なものとする。これにより、教員が、同意書を提出した時点での態度と今回の更新手続きにおける態度とを変更することは合理的な根拠を持つことになる。そのことを認めよ。

3.経営側の一方的で恣意的な審査を許容する文言は、今回示された「再任基準」の文言からも明らかである。その基準は、きわめて主観的なものであり、曖昧なものである。なんら客観的な基準がない。その判定を行うとされる人事委員会のあり方とも関連して、この再任基準は、いかようにでも適用できる危険性をはらむ。再任基準を提示するに際して、客観的基準を明記せよ。さらにその基準を判断適用するため、大学自治に基づく審査体制を構築することが、公正妥当な本来の任期更新手続きの前提として必要である。ピアレヴューの原則にもとづく審査体制を早急に構築せよ。また、公正で透明な異議申し立て制度を構築せよ。

4.この間の団体交渉の記録確定においても確認したように、処遇に反映させる教員評価制度に関しては教員組合との交渉事項であり、それはいまだ確立していない。他方、今回のように杓子定規に3年任期を適用するとすれば、まさに適用された准教授以下の教員は何年か後には更新回数制限で失職という重大な身分変更を受けることになる。

 労使協定に基づく教員評価制度の存在しない現在の任期は、その意味で、本来の任期(制限された更新回数に含まれる任期)ではないことを確認せよ。また、法人化後に採用の教員に関しても、早急に定年までの身分保障を確立していく制度(移行条件、その審査基準、審査体制など)を構築せよ。

5.大学の教育研究の発展のためには、安定的な強力な教授陣が必要であり、そのための雇用の安定が必要である。法人化後は任期制を掲げて公募しているとしても、採用された教員の定年までの任期の定めなき雇用保障があってこそ、教育研究に専心できる。将来が保障されない不安定な任期制度では、定年までの雇用保障のある安定した大学を目指して多くの教員が去っていくのは必然となる。大学の教育研究体制の発展の見地から、本来のテニュア制度の構築を行うべきである。その方針に関して、経営サイドの責任ある表明を文書で求める。

以上

--------大学院手当て問題での抗議と要求--------- 

理事長 宝田良一殿
副理事長 松浦敬紀殿

2007年8月6日
教員組合執行委員長
永岑三千輝

大学院手当て問題に関する抗議と要求

 この間、数理科学科の教員等に対する大学院手当ての突然の廃止が問題になっています。手当ては、当然にも、教員組合との協議事項でありますが、この7月の唐突な削減問題に関して、組合には何の通知も連絡もありませんでした。この点、第一に抗議します。しかるべき釈明を求めます。

 第二に、法人化以前は,研究科委員会のメンバーであるかどうかで支給されました。海外出張期間でも、研究科委員会のメンバーとして出張期間中における教育研究のための仕事をしているものとして支給されました。大学院での教育だけでなく,運営,研究業務に従事している人には支給する,という原則からです。要するに,研究科委員会のメンバーには支給してきたのが原則です。

 この制度を変えたのかどうか、変えたとすれば,何の交渉もなく,行ったのは不当であります。変えていないとすれば,当然,・・・先生と数理科学の教員にも支給すべきです。

 以上、教員と教員組合を無視し、唐突な変更を執り行っている法人に対して、厳重に抗議し、説明と協議を行うことを求めます。

以上

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