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2007年8月24日

横浜市立大学教員組合、任期制問題に関する団体交渉 そもそも「全員任期制」はありえない

大学改革日誌
 ∟●最新日誌(8月23日)

8月23日(1) 当局との「任期更新手続き」に関する第一回団体交渉を行った。

 組合側は、原則的原理的に「全員任期制」はありえないし[1]、従ってそのような制度には反対である旨、年来の主張を繰り返した。

 なお、今回の交渉は、3学部解体・法人化移行への二つの重大な変更が行われようとしている混乱期、評議会・教授会の機能停止のなかで、制度設計の主導権を市当局(改革本部)が握った異常な事態における「任期制への同意」であって、その当時には任期制の内容は不明確であったが(当時の就業規則に関する組合意見書参照)、当局を信頼し、あるいはさまざまの不利益を恐れ、あるいは当局の約束を信用した人々に関するものであり、そうした人々が不利益措置に陥らないためのものであることを一貫して主張した。

 また、平成17年3月時点の「任期制への同意書」は、あくまでも「制度への同意」である。それに基づいて、次に行われるべき任期の明確な提示を含む再任条件等が明記された雇用契約書が結ばれていないので、雇用契約書を持ってはじめて任期の開始となる、というのが組合側の一貫した主張であり、明示的に意見表明された多くの組合員の考えでもあって、当局のスタンス(平成17年4月1日から任期に関する雇用契約も開始したとの主張)とは平行線をたどった。

 結論的にいえば、更新手続きに関しては、「交渉継続」となった。
 したがって、当局との交渉継続中であることから、任期更新諸条件の不確定な段階で当局提示の更新手続きについて何の危惧・懸念も抱かない人々は少ないであろうから(団体交渉要求書はその不安・懸念の意見を集約しているので参照されたい)、そのことへの配慮を求め、それについては了承された(本日発行予定の組合ニュース参照)。

 今回、「3年任期」該当者と当局が考えて任期更新手続き書類を送付された関係者は、当局提示の条件に危惧を抱き、重大な不利益があると懸念する場合(それは大学や社会の情勢変化で十分想定される懸念であるが)には、「任期雇用の契約書を見ていない」、「任期雇用の契約書に署名していない」など、現在も法人化までの身分が継続している、といった自らの考え・主張を文書で提出しておくことが必要であろう。

 組合の見地では、当局への団体交渉要求書が示すように、それがなくても、現在の更新手続きに瑕疵があるので、任期制への同意自体を撤回し、法人化までの身分保障(65歳定年までの期限の定めのない雇用契約)に復帰することができるものだと考えているが、その意思表明は各人・該当者が行っておく必要があろうということである。すでに明確に「任期を明確に規定した雇用契約がなく、それに署名していないのに、今回、更新手続きを送りつけてくるとは失礼千万、今回の手続きを撤回せよ」と求める文書を、経営最高責任者に書留で送った教員もいる。その教員はさらに、かつて提出した同意書を、上記のような諸理由を挙げて「同意撤回の条件があり」として、返還するよう求める文書を副理事長(経営最高責任者)宛に送付している。これは、どうしたらいいか困っている若手には参考になろう。

 当局を信じ、何も疑念を抱かない人は(その多くは多分、当局サイドべったりの人、また多分当局と一体化した人、定年が近く更新手続きをしても自分には何の不利益も不安もない人、いや更新手続きで当局の覚えがめでたい人、などであろうが、それが何人いるのか? 少数者としては絶対の自信を持って再任されると思う人、また、ごく少数としては、不利益措置があれば闘うことを覚悟し、労の多いその闘いに勝利する自信を持っている人もいるだろう)、何も意見も述べずに(意見書提出なしに)更新手続き書類を提出することになろう。

 しかし、任期更新回数が限定されている以上、それによって一番重大な不利益をこうむる恐れのある助手を初めとして、少なくとも准教授までの人々は、任期回数制限が来た場合のことを考えると、また、それまでにどのような事情変更があるかもしれないことを考えると、組合の見地に従った予防措置を講じておいた方がいいのではないかと思われる。

 法人化後採用され、最初から、法人採用であるために、任期制で公募された人々の場合は、任期雇用の契約書にサインしているはずである。(少なくとも組合の入手した昨年度までの雇用契約書では、サインする書式となっている)

 しかし、その場合にも、再任条件、再任審査体制等に関する意見があれば、それを明確に述べておくことが必要であろう。公正な、大学らしい客観的な審査を求めるであろうから。

 たとえば、「普通にやっていれば更新」という基準を客観的に規定せよ、ピアレヴュー体制が確立していない現在の状況では審査基準の適用について安心できない、早急なピアレヴュー制度の制定を求める、大学の自治の制度の下でピュアレヴューがおこなわれるべきであり、憲法的要請からして、そうした大学にふさわしい再任審査を求める、とかいろいろと各人の考え方に応じて意見の表明の仕方はあろう。

 4月昇任で、「経営的観点から」拒否された教員の業績はどう評価されたか?
 4月で昇任した人の業績は、どのようだったか?
 評価・審査の体制は、公正・透明と思うか?
 そもそもかつての教授会のような審査報告書を読んだか?
 審査報告書はあるのかないのか?

 われわれが知る限りは、「任期制に同意していない」人が、昇任を拒否された。つまり、任期制は、同意しない少数者をいじめる(差別する)道具、寒々しい手段になってはいないか?

 任期制は、業績を評価して、それに対するポジティヴな処遇を提示して、人々を奮起させるものとなっているか?

 組合の検討でも問題になったが、任期審査に関する規定を該当者は見てほしい。学長がかなりの権限を持っている。いや場合によっては決定的な(生殺与奪の)権限を持っているとも解釈できる。(組合の議論でも解釈は対極的なものがあった。)
 その学長は、皆さんが選んだ、あるいは選出に参加した学長であるか、信頼できるか、学内構成員によるチック機能は働くか。

 現在の学長には場合によっては問題を感じないかもしれない(だがSDシート記入に際して「脅かし」のメールを送りつけたことをどう見るか?)。しかし、任期更新の継続中に,学長は次々と変わりうる。その場合、つぎに「外部から」「権力的な」学長が投げ込まれた場合(一般の全体的な大学教職員による学長選挙制度がない現在の制度では、それが十分可能である)、審査の公平性がどうなるかわからない。その不安はないか?
 つまりは、憲法の保障する大学自治に関する重大な欠陥がある現状を、そのまま信用していいか、そのような制度を作った行政当局を単純に信頼していていいのか、といったことが問題となろう。

 代表的な意見に関しては、組合の団体交渉の要求書に、すでに明記してある。すなわち、組合員の意見を集約する形で、教員団体としての見解を表明しているので、それを検討してほしい。それが不十分だと考える場合、各人が独自の意見書・見解を明確に追加的に述べておく必要があろう。そのような意見表明の数が多い方がいいと考える。黙っていれば、すべて納得とみなされる。「同意書」を提出しただけで、任期をつけた契約書とみなされる。だまっていればそうなる。
 「反対しないもの、黙っているもの」は、60年安保条約締結時、岸信介政府によって、どのように解釈されたか?

 組合の表明したスタンスと同じであれば、組合員としての自らの見解が代表的集約的に表明されていると考えてもいいであろう。当局との交渉は、組合執行部がやっていくことになる。交渉は継続中である。


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