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2007年11月12日

文科省、「奨学金予算削減へ」の報道について

■高等教育政策情報、第14号 2007/11/2

 2.「奨学金予算削減へ」の報道について(学生支援課奨学事業係)

 10月29日付け産経新聞において以下の趣旨の記事が掲載されました。「財務省は、来年度予算で文部科学省の奨学金事業予算を削減する方針を固めた。奨学金を遊興費に転用する学生が目立ち、苦学生支援という奨学金本来の意味が薄れつつあると判断。奨学金を返さず、回収不能に陥った延滞債権総額も急増、平成18年度には2,000億円を突破、財務省では新たな保証制度の義務化も迫る構え。」
 まず事実関係として、財務省からは、来年度予算で奨学金事業予算を削減する方針を固めたという趣旨のことは伝えられていません。
 記事にある財務省の「必ずしも苦学生でない人も対象に入っている」との指摘については、教育費負担の軽減、少子化対策の観点も踏まえ、主たる家計支持者の収入に関わらず奨学金を必要とする学生等には貸与すべきとの政府の会議や与野党からの意見等もある中で、貸与対象を縮小する方向での貸与基準の見直しは適当ではないと考えています。一つの研究論文のみを根拠に奨学金が勉学よりも娯楽に振り向けられているとの指摘がなされていることについては、「家庭からの仕送り、奨学金、アルバイトといった収入に注目した場合、それぞれの収入が増えた時に、修学費にあてる割合がもっとも増えるのは、奨学金による場合である」という別途の研究論文もあり、奨学金がその目的のために役立っていないと決め付けるのは適当ではないと考えています。
 また、奨学金を返さず、回収不能に陥った延滞債権総額が平成18年度で2,000億円を突破したとのことですが、これは返済期日を3ヵ月以上経過して延滞している債権の貸付元金残高(返済期日未到来分を含む。)です。
 引き続き督促を行うとともに、原則として延滞1年以上のすべての者に対して法的措置を前提とした督促を実施することとしており、すべてが回収不能となるわけではありません。
 18年度に回収を行ったのは1万件とありますが、これは原則として延滞1年以上の者に対して実施している法的措置を前提とした督促実施件数であり、特に18年度は過去一度も入金の無かった者を対象として実施しています。
 文部科学省としては、今後とも事業の健全性を確保しつつ、奨学金事業の充実に努めてまいりたいと考えています。

 【参考:最近の国会における答弁】
 平成19年10月4日 衆・本会議(公明党太田明宏議員の質問に対する福田内閣総理大臣の答弁)

 奨学金制度についてお尋ねがございました。家庭の経済状況により修学の機会が奪われないよう、教育の機会均等を図っていくことは極めて重要であると考えております。このため、政府としては、事業の健全性を確保しつつ、奨学金制度を拡充するための措置を平成二十年度より講じてまいります。

 ※(独)日本学生支援機構の奨学金事務についてのお願い

 平素から奨学金事務についてご尽力いただいているところですが、一部に不適切な事例((独)日本学生支援機構(以下、「機構」)が定める奨学金貸与に係る学力基準よりも厳格な基準を設け、申込段階で不適格としていること等)が見受けられます。各学校におかれましては、機構が定める基準を遵守する他、奨学金貸与希望者に対して、窓口での適切な対応をお願いします。また、各学校に対して機構から奨学生採用の推薦をお願いしているところですが、各学校におかれましては、貸与基準を満たしながらも機構が示す推薦枠を超えた希望者(残存適格者)についても遺漏なく機構に推薦していただきますようお願いします。
 なお、奨学金事業は、卒業した奨学生からの返還金を再度奨学金の原資として活用することにより事業を展開しており、事業規模の維持、拡大のために返還金はきわめて重要であり、奨学生募集の際の奨学金説明会や適格認定時、奨学金貸与終了時の返還説明会において返還の重要性をご指導いただくとともに、現奨学生に対する返還意識の涵養にご協力くださるよう重ねてお願いします。


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