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2007年11月13日

学校法人活性化・再生研究会最終報告における経営判断指標の見方

日本私立学校振興・共済事業団
 ∟●『月報私学』11月号(No.119, 2007)
 ∟●学校法人活性化・再生研究会 最終報告」(PDF)
 ∟●日本私大教連、学校法人活性化・再生研究会「最終報告」に対する見解

学校法人活性化・再生研究会最終報告における経営判断指標の見方

1.経営判断指標とは
 私学事業団では、私立学校の経営革新方策と経営困難・破綻に陥った場合の具体的対策の検討を行ってきた学校法人活性化・再生研究会の最終報告を本年八月に発表しました。この中で、「自己診断チェックリスト」と「定量的な経営判断指標に基づく経営状態の区分」を提示しています。

 学校法人の経営破綻を予防するためには、経営悪化の兆候を早期に発見し、回復の可能性がある時点で警鐘を鳴らすことが重要です。経営状態の回復には数年に及ぶ時間がかかるのが通例であり、万一募集停止を行った場合でも、学生を卒業させるまでには一定の年数と経費がかかります。経営悪化の兆候を見落とせば、ひいては在学生を卒業させることができずに学校法人が破綻するという最悪の事態に繋がりかねません。よって経営悪化の兆候を早期に発見するため、学校法人自身と本事業団等がそれぞれ経営状態をモニタリングするための指標を設定しました。

 自己診断チェックリストは、学校法人自身が財務比率や管理運営のチェックを行い、経営上の問題点を把握するための「健康診断書」のようなものです。これまで本事業団が示してきた財務比率を組み合せた「財務比率等に関するチェックリスト」と、学校法人の経営者を対象に定性的要因に関する質問項目を設けた「管理運営等に関するチェックリスト」の二部構成になっています。財務比率の項目では、従来の相対評価(全法人の中での自法人の位置)に加えて、新たに絶対評価(適正値や目標値との比較)や趨勢評価(四年前に比べて状況が改善しているか否か)を設けました。

 一方で経営判断指標は、学校法人の破綻を防止する観点から、キャッシュフロー(CF)をベースにした一定の指標に より学校法人の経営状態をモニタリングし、本事業団と文部科学省が指導・助言を開始する時期を判断する目安とするものです。ここでは経営判断指標の見方について解説します。

2.経営判断指標の見方
 学校法人の破綻とは資金ショート、つまり外部への支払いができなくなり、学校の機能が停止して、学生の修学機会を奪う状態になることをいいます。そのため破綻を防止するための指標としては、資金繰りが成り立つかどうかが重要であり、損益の状態を表す消費収支計算書関係の比率よりも、一年間の教育研究活動の結果として、どのくらいキャッシュフローを生み出せるのか(設備投資や借金返済に使える現預金がどれだけ増減するか)を重視しました。

 学校法人の資金収支計算書は全ての資金の流れが区分なしに記載されているため、学校法人の本業である経常的な教育研究活動の収支状況がどうなっているかが分かりづらく、実際のキャッシュの動きとは一致しません。そこで施設設備に関する収支と財務活動に関する収支(借入金や資産運用等)を除いて、教育研究活動の経常的な部分で収支差額がどの程度生じているかを把握します。この教育研究活動のキャッシュフローが赤字だった場合に、過去に蓄積した現預金等で何年法人を運営することができるのか、一方黒字だった場合には、借金を何年で返済できるかを分析することによって、学校法人の経営状態を分類します。

3.キャッシュフロー計算書の考え方
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