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2007年11月21日

横浜市立大学教員組合、抗議の「意見書」

大学改革日誌
 ∟●最新日誌(11月20日)

横浜市立大学教員組合週報 組合ウィークリー(2007.11.19)

●「意見書」を出しました

学長は11月14日「教授・准教授及び助教昇任候補者の推薦について」という文書を出しました。その文書および昇任審査フロー図によれば、手続きは「自己申告書」を作成し、学部長等が受理(提出先は経営企画室人事課)し、学長に提出することになっています。

しかし、これは学則無視のやり方です。

学則の第63条の3項には

「コース長はコース会議の議を経て、以下の事項について決定する」

とあり、具体的に6つの事項が並べられています。

(1) コースに関するカリキュラムの編成について学部長への発議に関すること
(2) コースに係わる教員人事の学部長への発議に関すること
(3) コースに係わる教員配置に関して学部長への発議に関すること
(4) 学生の成績及び進級の管理について学部長への発議に関すること
(5) 学生教育費のうちコースに係る予算に関して学部長への発議に関すること
(6) その他コースの運営に関すること
 この学則にしたがえば、コース長はコースに関わる教員人事に関して「コース会議の議」をへなければなりません。ところが、この(2)の議が必要であることは、学長文書のどこにもありません。今回の手続きは、コース会議の議を無視した、学則違反のやり方です。そのことを組合として強く抗議しました。

 また、同文書には、「学長からの人事委員会への諮問にあたり、任期制への同意状況等も判断に加味した上で審査を依頼します」、とあり、これは看過し得ない大きな問題であると削除を要求しました。

11月14日、「教員評価結果の教員の処遇への活用について」という提案文書が当局から教員組合宛に提案されましたが、そこには「各評定の分布割合については、19年度の評価結果や経営状況に応じて、法人の経営判断により決定」するという文言があり、相対評価を示唆し、評価に関しても再び「経営判断」という恣意的要素を入れようとているとして、抗議しました。また、今回提案された評価基準は、どのように見ても、当局・組合間の団交での合意文に反する提案で容認できないとして抗議しました。

さらにこの問題については、22日の執行委員会、拡大執行委員会の議論を経て、再度当局に文書を出す予定ですが、以下に、まず11月19日に当局に出した「意見書」全文をご紹介いたします。

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公立大学法人横浜市立大学

理事長 宝田良一 殿
学長 ブルース・ストロナク 殿
副理事長 松浦 敬紀 殿

2007年11月19日
横浜市立大学教員組合執行委員長 永岑 三千輝

意見書

1.昇任問題

(1)平成19年11月14日、学長名で、「教授・准教授及び助教昇任候補者の推薦について」という文書が出されたが、ここにある「自己申告書」の提出に関する手続きは、明らかに現行の横浜市立大学学則の第63条3項の2に違反している。これは、学長の重大な手続き上の瑕疵である。

(2)また同文書には、「学長からの人事委員会への諮問にあたり、任期制への同意状況等も判断に加味した上で審査を依頼します」とあるが、これは極めて不当な文言である。

したがって、同文書の該当箇所(項目)の削除を要求する。

(3)当局は、今年4月昇任者の審査に関する詳細な報告書を教授会構成員に示すことなく、また、最低限の要求としてきた総頁数、総文字数すら未だ明らかにすることなく、いかようにして新たな人事をなしうると考えるのか、その根本的姿勢に問題がある。

2.教員評価制度と処遇への反映の現時点における根本問題

 (1)「教員評価結果の教員の処遇への活用について」という提案文書が11月14日当局から教員組合宛に提案された。そもそも、現在のSDシートは、文字通り、各教員の成長・発展のためのものであり、当局は、教員の納得が得られるまで処遇への反映を行わないものと説明してきた。当局はその立場から労使交渉の対象外と主張し、学長および法人はその旨を教員に説明し、臨んできたはずである。ところが、今回、今年のSDシートを既成事実として、それを前提にした処遇への反映を打ち出している。当局のこれまでの説明と約束に反する。現在のSDシートについても大小多くの問題点があり、その改善も必要不可欠であるが、上記の点をはじめとして、今回の提案文書自体も多くの問題をはらんでいると考える。

すでに組合は、昨年の試行の結果・総括・反省点を示すよう、また数々の学長宛質問に誠実に答えるよう、一度ならず要求しているのであり、それを経ることなしには、処遇への活用問題に入ることは出来ないと考える。まず、昨年試行の総括反省点を明確に示すよう、また学長から誠意ある回答をするよう求める。

(2)さらに今回の提案では「再任の基準としては、任期期間中を通しての教員評価結果が“B”相当以上であり、教員評価以外の項目について期待する水準に達している場合を再任可とします。ただし、仮に任期期間中の評価結果に”C”相当以下の評価が含まれている場合でも、その後の改善状況や改善への取組姿勢も審査において考慮し、再任を可とする場合があります」と書かれているが、これは団体交渉とその結果である下記合意事項違反といわざるを得ない。8月から10月末までの長期にわたる何回もの長時間の事務折衝と2回の団体交渉における誠実交渉の結果である下記合意事項を無視することは、信義誠実に基づく労使関係を破壊するものであるだけでなく、労働関係諸法の違反として重大問題となる。

また「各評定の分布割合については、19年度の評価結果や経営状況に応じて、法人の経営判断により決定」するというのは、評価に関しても、またもや「経営判断」という恣意的判断と相対評価を方針に掲げていることに他ならず、容認できるものではない。

念のため、以下に10月31日付の合意書文を示しておく

【合意事項】

1 再任に関しての基本的な考え方

教員の任期更新に関しては、次の考え方による。

(1)大学教員としてその能力及び意欲が欠如しており、教育・研究内容やそれらに対する取組みがきわめて不十分で、大学が果たすべき社会貢献について取り組む姿勢が見られず、また大学運営にもほとんど協力が得られないなど、本学の教員として、再任が適当でないと客観的に判断される場合以外は、再任する。

 (2)これらの問題がある場合にも、改善のための働きかけを行い、本人の姿勢や行動から改善が期待される場合は再任も可とする。

2 任期更新手続きの時期

任期が3年の教員の更新手続きの時期については、3年ごとに行うこととする。

なお、准教授並びに助教について、任期中に労働基準法14条1項1号の規定に基づく厚生労働大臣が定める基準に該当した場合には、次期任期期間を5年とする。その場合も、当該職位の任期の上限年数は変わらないものとする。

【付帯条件】

1 【合意事項】1にある「客観的判断」の基準と判断方法、「改善のための働きかけ」方法、並びに想定しうる不服申立・審査制度のあり方に関して、当局と組合との間で、協議を行っていく。

2 任期更新に係る再任審査の実施にあたり、3年任期の教員あてに配付した文書「任期更新に伴う自己申告書の提出について」(平成19年7月24日付)にある、「今回の取り扱いは」「当面の間の運用とします」という文言の扱いに関しては、評価制度の任期更新への反映、並びにいわゆるテニュア制度の実現に向けた取り組み等を、当局・組合間で協議していく中で、今回の再任のあり方も含め、整合性のあるものとして整理・協議していくこととする。


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