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2008年4月11日

日本学術会議、声明「日本学術会議憲章」

日本学術会議
 ∟●声明「日本学術会議憲章」

声明
「日本学術会議憲章」

背景説明

1 『日本学術会議憲章』作成の理由

 日本学術会議憲章を今回作成した理由は基本的に2つある。
 第1 に、第20 期日本学術会議は、会員選出手続きの本格的な変更を経て構成されたため、組織の性格と会員の意識の両面において、第19 期までとは実質的な相違がある。『日本学術会議法』に基づいて1949 年に創設された当初の日本学術会議では、会員の選出は《立候補・公選制度》によっていた。1984 年の『日本学術会議法』の一部改正は会員の選出制度を学協会による《推薦制度》に改めて、日本学術会議と学協会との連携関係を組織的に強化した。これに対して、2002 年の『日本学術会議法』の一部改正は、第20 期の会員の選出を有識者会議による選出に過渡的に委ね、それ以降の新会員の選出は現会員による《直接推薦・選出制度》に委ねたのである。新生日本学術会議の軌道を敷いたこの変更に際して、新たに誕生する組織の目標、責任および義務を明確化する文書を作成・公表すべきことがつとに指摘されていたが、第20 期の発足以前にこの文書の作成は果たされず、大きな検討課題として残されたのである。今回の『日本学術会議憲章』は、積み残されたこの課題を継承して作成された文書であって、新生日本学術会議の対外的な誓約を公開する形式をとっている。

 第2 に、第20 期日本学術会議が昨年公表した『科学者の行動規範』の作成過程で検討対象とされた『科学者憲章』の位置付けも、確定されずに残されていた。この『科学者憲章』は第11 期日本学術会議が1980 年春の総会で採択した《声明》であって、その審議と採択が当時の時代環境を大きく反映して行われた歴史的な文書である。第20 期日本学術会議が置かれている環境とその担うべき機能は当時とは大きく異なっているだけに、歴史的な使命を終えた『科学者憲章』をそのまま存続させることの妥当性は乏しいと言わざるを得ない。そのうえ、科学者の不正行為を契機として、研究の推進に際して科学者が遵守すべき倫理規範を定めた『科学者の行動規範』だけでは、日本学術会議の対外的な誓約としては消極的に過ぎるという考え方も、日本学術会議の積極的な誓約事項を公開する新たな憲章を作成すべきであるという主張の底流となってきたのである。あまり省みられることがない『科学者憲章』に替えて『日本学術会議憲章』を公表することは、日本学術会議の対外的な誓約事項の明確化と、会員・連携会員による課題の共有化に貢献するものと、われわれは考えている。

 『科学者の行動規範』と『日本学術会議憲章』との関係について言えば、『行動規範』は責任ある科学・技術研究のためにすべての科学者が自発的に遵守すべき倫理規範であるのに対して、『日本学術会議憲章』は日本学術会議の会員および連携会員が共有すべき基本的な目標、義務および責任の宣言であって、両者は補完的な役割を担うものであると考えられる。・・・・


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