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2008年4月23日

日弁連、名古屋高裁自衛隊イラク派遣差止訴訟判決に関する会長声明

日弁連
 ∟●名古屋高裁自衛隊イラク派遣差止訴訟判決に関する会長声明

名古屋高裁自衛隊イラク派遣差止訴訟判決に関する会長声明

 昨日、名古屋高等裁判所は、いわゆる自衛隊イラク派遣差止訴訟判決において、航空自衛隊がアメリカからの要請によりクウェートからイラクのバグダッドへ武装した多国籍軍の兵員輸送を行っていることについて、バグダッドはイラク特措法にいう「戦闘地域」に該当し、この兵員輸送は他国による武力行使と一体化した行動であって、自らも武力の行使を行ったとの評価を受けざるを得ない行動であると判断した。そして、憲法9条についての政府解釈を前提とし、イラク特措法を合憲とした場合であっても、この兵員輸送は、武力行使を禁じたイラク特措法2条2項、活動地域を非戦闘地域に限定した同法同条3項に違反し、かつ憲法9条1項に違反するとの判断を示した。

 そのうえで判決は、原告個人が訴えの根拠とした憲法前文の平和的生存権は、全ての基本的人権の基礎にあってその享有を可能ならしめる基底的権利であり、単に憲法の基本的精神や理念を表明したにとどまるものではなく、憲法上の法的な権利として、その侵害に対しては裁判所に対して救済を求めることができる場合がある具体的な権利であると判断した。

 当連合会は、自衛隊をイラクへ派遣することを目的とするイラク特措法について、これが国際紛争を解決するための武力行使および他国領土における武力行使を禁じた憲法に違反するおそれが極めて大きいものであることにより反対であることを明らかにしてきた。そのうえで、自衛隊の派遣先がイラク特措法が禁じる「戦闘地域」であることも指摘し、繰り返しイラクからの撤退を求めてきた。

 当連合会は、このたびの名古屋高等裁判所の判決について、当連合会のかねてからの主張の正しさを裏付けるものであるとともに、憲法前文の平和的生存権について具体的権利性を認めた画期的な判決として高く評価するものである。ここにあらためて政府に対し、判決の趣旨を十分に考慮して自衛隊のイラクへの派遣を直ちに中止し、全面撤退を行うことを強く求めるものである。

2008(平成20)年4月18日

日本弁護士連合会
会長 宮﨑 誠

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