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2008年4月24日

鹿児島国際大学事件をどう受け止めるか

京滋私大教連
 ∟●機関紙No132(2008.4.25号)

鹿児島国際大学事件をどう受け止めるか

細川孝(龍谷大学)

 6年前の2002年3月、鹿児島国際大学で3人の教員が不当に解雇される事件が起こりました。解雇の理由とされたのは、教員採用人事における業績審査と審議過程に疑義があるということです。鹿児島国際大学を経営する学校法人津曲学園の理事会は、理事会のもとに「大学問題調査委員会」を設置し、懲戒処分を決定しました。

 この事件の特異性は、教授会における採用審査をめぐって教員を解雇するというものであり、「学問の自由」や「大学の自治」に全く反する暴挙でありました。3人の教員のたたかいを支援する支援組織である「鹿児島国際大学三教授を支援する全国連絡会」に600人近い大学教員が支援者として参加したのも、この解雇事件がいかに不当であるかを示しているように思います。

 最高裁判所は2008年3月21日付で、津曲学園からの上告を棄却し、上告受理申立を不受理にするという決定を下しました。2002年4月5日の地位保全等仮処分申立(同年9月30日、地位保全等の仮処分決定)以降続いた裁判は終了し、法的な決着は完全についたこととなりました。

 しかし、不思議なことに、津曲学園理事会は、3人の教員を職場に戻してはいません。法治国家において、法的に完全に決着がついた問題に関して、理性の府である大学において、なぜこのようなことが存在するのか理解に苦しむところです。USR(大学の社会的責任)からすれば、コンプライアンス(法令遵守)は大前提なはずです。

 さて、鹿児島国際大学事件は、わたしたちにとって、どのような意味を持つのでしょうか。近年における「大学改革」の流れの中で、トップへの権限集中がすすみ、教授会が人事権を失っていく事例を耳にすることが増えています。そのような点からすれば、鹿児島国際大学事件は、決して他人事ではありません。

 「学問の自由」を制度化したものが「大学の自治」であると言われます。その点で、自治の担い手としての深い自覚と高い見識が求められることは言うまでもありません。いま日本の大学ですすんでいる「学問の自由」や「大学の自治」を破壊する動きに対して、これを許さないたたかいが切実に求められていると考えるものです。


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