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2008年05月29日

日本学術会議、提言「新公益法人制度における学術団体のあり方」

日本学術会議
 ∟●提言「新公益法人制度における学術団体のあり方」

提言
新公益法人制度における学術団体のあり方

要旨
1 作成の背景

 そもそも、学術団体は、科学や技術などに関する学術研究の進歩・発展を図ることを目的として、主としてその当該分野の専門家が集まって構成するものである。その活動によって、自主的・自律的に学術の発展に貢献し、特定の者の利益を追求せず、最終的にはこれらの活動によって社会の発展と平和及び福祉の向上に貢献することを目的としており、極めて公益性が高い。例えば、世界的に、地球温暖化、各種資源の枯渇、人口の爆発的増加、などの諸問題が生じている。一方、我が国においては、人口減少・高齢化、食料問題、などを抱えている。これらを解決するためには、科学技術のみならず、人文社会科学、生命科学など、幅広い学術分野の協働が必要であり、これらの諸問題に関する研究の推進母体の主要な一つとなっている学術団体は高い公益性を有している。
 本提言は、学術団体が有する機能についての認識の現状と問題点に関してアンケート等により明らかにし、新公益法人制度下での学術団体の公益性のあり方について検討、取りまとめたものである。

2 現状及び問題点
 学術団体の主要な任務は、科学者や技術者よりなる研究者によって、明らかにされたこれまで未知であった科学的成果を同業の専門家によって審査・評価し、それが公開する価値があるかどうかを見定めることである。そのためには、学術集会等において口頭発表された研究成果について討議を行い、その結果を踏まえて学術誌に投稿された論文を審査し、その後に出版・公開というプロセスを経ることが世界的な標準である。このように、国際学術集会を含む学術集会の開催や学術誌の出版は学術団体の最も重要な機 能であり、これらを基礎として人材育成、科学的知識の普及・啓発などの公益事業が行われる。あわせて、多くの国で既に制度化されているが、学術団体が行政と協力し、それぞれの専門分野に関する合理的・客観的な政策の立案・施行を支援することが求められている。しかし、制定された公益法人認定法の別表(第2 条)には、具体的に「学術及び科学技術の振興を目的とする事業」として明記されているにも拘わらず、公益認定等ガイドラインにおいては、学術団体そのものが有する公益性についての直接的認知がなされていない。…


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