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2008年06月18日

立命館大学、学園トップの退任を求めるアピール

■ゆにおん、No.51より

6.13春闘決起集会 特別アピール

 去る6月4日文部科学省は、社会的な批判を受けていた生命科学部の定員超過にともなう特別転籍措置を、学生の教学条件に配慮してものではなく、主として補助金目当てのものであり、入試の公平性に照らしても問題があるだけでなく、その決定手続きにおいても適切性を欠くものであると認定しました。そして、法人全体への経常費補助金の25%(15億円相当)の減額処分が決定されるにいたりました。留意すべきは、今回の文科省の措置が、特に本学園の管理運営の不適切性について問題とした措置だということです。

 近年の立命館学園は、05 年に突然一方的に全教職員の一時金1 ヶ月カットを強行し、その後、学園ガバナンス強化の名の下に、相談役、理事長、総長をはじめとする常務会によるトップダウンの学園管理を強めてきました。今回の事態は、この間の一連の学園指導部の独善的管理運営によって学園の民主主義が崩されてきたことの帰結であるといえます。
 その後の学園指導部の暴走は、07 年4 月の前総長(現理事長)、前理事長(現常務相談役)に対する退任慰労金の倍増による、総額1億6千万円にのぼる社会常識を逸脱したお手盛り支給に表れました(常任理事会の審議を経ることなく、常務会主導でいきなり一般理事会承認とされました)。これは、当然、学生・父母からも厳しい批判を受け、社会的にも立命館のガバナンスについて大きな疑惑と不信を招来させました。しかも、学園指導部は、学生、教職員の圧倒的多数の批判の声に耳を貸さないどころか、各種協議機関での議論の回路を閉ざすという信じられない抑圧姿勢を露わにしました。そうした管理運営手法が、学園内の協働の気風を破壊し、学園指導部への信頼を失墜させていることは明らかです。そのようななか、昨年以降は学園の管理運営におけるコンプライアンスの欠落が、次々と露呈しています。職員の未払い残業の発覚、相談役の事前相談なしの私企業の社外取締役への着任、そして一般からは「株式会社立命館」と学園の教学軽視経営中心主義的な管理運営体制が揶揄される状況が生み出されていきました。学園指導部の教学機関を統括するにふさわしいモラルを欠落させた姿はもはや、社会に公知の事実となるに至ったといっても過言ではありません。そしてついに、今回、特別転籍問題で「学校法人としての管理運営も適正を欠いている」と文部科学省からの厳しい指摘をうけ、総額15億円を超える補助金カットの処分が下されるに至りました。

 今回の、このような事態を招いたことによる損失は、単に学園財政の毀損といった問題にとどまるものではありません。なによりも、本学園で働くすべての教職員、本学園で学ぶすべての学生・院生、そして退職された先輩教職員や卒業生、そして父母の方々の努力と支援によって築き上げてきた本学園の社会的信頼を失墜させた損失ははかり知れません。さらに、私学助成金制度を拡充発展させるために力を合わせ奮闘してきた全国の私学関係者の運動に与える損害もまた甚大なものがあり、教学機関としての私学の存在意義を理解し私学助成に支持を与えてくださっている多くの国民の期待をも裏切るものです。本学園は、全国の私学助成運動をリードしてきた歴史がありますが、そうした社会的信用と誇りにも傷をつけたといわざるを得ません。そして、最後に改めて、学園の運営を危機的状況に追いやった学園指導部の責任の重大性を指摘せざるをえません。また、今回の特別転籍問題で騒がれた生命科学部の学生や、転籍した学生や父母の方々に対しても、大きな不安を与えることになりました。私たちは、この問題に心ならずも関係することになった学生諸君が誇りを失ったり勉学意欲を損なうこ安心して自信をもって勉学生活が進められるように、学園はもとより私たち教職員すべてが必要な配慮を払うべきであると考えます。

 私たちは、このような学園の危機にあたって、91年第1回全学協議会で、学友会の問題指摘を受けて、常任理事会の討議を経て総長名で表明された私学の不祥事にたいする立命館学園の基本見解の精神に、今一度立ち返るべきことを訴えます。「最近における私学の一連の不祥事に関わって」と題するその声明(91 年6 月 UNITAS 第231 号参照)では、次のように述べられています。当時、他大学で引き起こされた一連の不祥事をさして、その社会的影響の大きさあげ、学園としても遺憾の意を表した上で、「大学とは真理探究の場であり、教育を通して社会発展と人類福祉に貢献」すべきものであり、不正や不義とは全く相容れない、と主張され、「こうした崇高な目的が堅持されているからこそ、大学や教学機関に対する国民や社会の信頼と期待があるのであり、大学における学問の自由と大学の自治、高等学校や中学校における地域社会での公共性が、国民から負託されているのだといえます。私学における不祥事は、このような国民や社会の信頼と期待を裏切る行為であり、自らのよって立つ基盤を掘り崩すことにほかなりません。したがってそれは反社会的な問題として厳しく受け止めると同時に、あらためて自らを戒めなければならないと考える次第です」と語られています。また、こうした不祥事を防ぐのは、なによりも、学園の民主主義的な相互批判によるチェック体制であることを明確に述べ、立命館学園の全学全構成員自治の重要性を強調しています。

 現在の学園指導部に、かつての学園全体が総長の声明の形で誓約した上記の精神に立ち返り、現在の学園の危機を乗り越えるために全学の民主的な討議と知恵を集める努力がなによりも求められていると考えます。しかし、残念ながら、現指導部がこの問題に対して示している対応策は、上記の精神に全く逆行するものであり、曖昧な検証委員会による不徹底な「検証」によって問題をやり過ごし、社会的な常識から大きくかい離した処分で、問題を鎮静化させようとするものだと言わざるをえません。検証すべき多くの論点は、教職員組合からも各教授会からも提示されていましたが、検証委員会はそうした指摘された論点にかかわる事実経過も責任の所在もいまだ明確に解明していません。
 すでに、現段階で私たちに課せられている課題は、現在の学園の管理運営をその指導部の経営思想、管理思想の根源にまで立ち返ってみなおし、その組織運営を見直すところにあるといえます。現在の相談役、理事長、総長、常務会を中心とする学園指導部ではそのような徹底的な見直しを行う判断能力も力量もないということが今や明白になりつつあります。
 この間の出来事を通じて本学の不祥事を上記の総長声明の精神にたって徹底的に解明し総括し、本学の社会的信用を取り戻すために、全学全構成員が今こそ立ち上がり、本学の全構成員自治による民主的なチェックシステムを再度活性化させようではありませんか。
 本学園が平和と民主主義の教学理念のもと、長年にわたって築きあげてきた民主主義的学園運営の伝統をよみがえらせ、民主的な相互批判と連帯を本学園において機能させるためには、現在の学園執行部の刷新をするほかないと考えます。

 総長、理事長、相談役をはじめ、常務会メンバーが、今日の事態を招いた責任を自覚し、本学園の連帯と信用を回復するために、退任することを本集会の名において求めるものです。

2008 年6 月13 日
立命館教職員組合連合、立命館学園一時金訴訟をすすめる会 合同決起集会


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