研究者の地位と権利を守るための全国的ネットワークをつくろう!

2008年06月19日

京滋私大教連、立命館理事会の「経営優先主義」による「特別転籍」問題を批判

京滋私大教連

立命館理事会の「経営優先主義」による「特別転籍」問題を批判するとともに、私学助成の原点に立ち返った学生本位の政策展開を求めます!

2008年6月13日
京滋私大教連執行委員会

 現在、各学園および教職員組合で「私立大学への公費助成増額を求める国会請願署名」の取り組みが進められています。その最中、立命館大学に新設された生命科学部の入学者数が私学補助金交付基準を超過していること判明し、常任理事会で他学部への「特別転籍」を進める決定をした問題をめぐって、6月4日、文部科学省・私学振興共済事業団は、学校法人立命館に対する今年度の私立大学等経常費補助金を25%(約15億円)減額する通知を行ないました。

 立命館の総長は、記者会見の席上で過去にも入学時に「特別転籍」をした事例があることを認めていますが、これは入試制度の公正さという点からみても、単に一私学の理事会の誤った判断がひき起こした問題にとどまらない、現在の教育制度のあり方を根底から揺るがす重大な問題です。

 今回の問題による社会的な影響は測り知れず、私学全体に対する社会の大きな疑念や、学生、保護者の間に強い不信を招くような不祥事をひき起こした立命館理事会の社会的・道義的な責任は極めて重いといえます。文部科学省からも「学校法人としての管理運営の適正さを欠いている」と指摘されたことを真摯に受け止めて、理事会は自らの責任の取り方を明らかにし、行き過ぎた経営優先主義の姿勢に対する猛省を強く求めます。

 本来、私学助成は、私学における教育研究条件を改善し、国民に高等教育を受ける権利を保障するための基盤的整備を進めるために補助されてきたものです。しかし、今回の新聞報道等にみられるように、新入生に対する「特別転籍」の募集が私学助成金不交付を回避する目的で行なわれたものならば、京滋地区に限らず日本の私学全体で進めてきた私学助成運動や、私学振興助成法の考え方とは相反するものです。

 私学振興助成法は、私学助成をおこなう目的(第1条)として「私立学校の教育条件の維持及び向上…(中略)…修学上の経済的負担の軽減を図るとともに、私立学校の経営の健全性を高め、もつて私立学校の健全な発達に資すること」と定めています。さらに、学校法人の責務(第3条)として「自主的にその財政基盤の強化を図り、その設置する学校に在学する幼児、児童、生徒又は学生に係る修学上の経済的負担の適正化を図るとともに、当該学校の教育水準の向上」に努めることを求めています。こうした法の目的や趣旨を踏まえると、私学助成は学生の教育権を保障する「教育条件の維持及び向上」や「修学上の経済的負担の軽減」のための補助金であって、単に学園資産を増やせばよいという考えは本末転倒であると言わざるをえません。
 
 立命館は、1971年に全国に先駆けて学内の全構成パート(常任理事会、教授会、大学院生連合協議会、学友会、生活協同組合、教職員組合)が参画した「公費助成推進のための立命館大学全学連絡協議会」を結成し、公費助成の増額を求める運動をリードしてきました。しかしながら、今回の補助金削減問題で、学生や保護者のみならず多くの市民の間に、これまでの私大助成運動について様々な疑念や困惑を生み出しかねないことを危惧します。

 大学は、真理探究の場であるとともに、教育を通して社会の発展に貢献し、社会的な正義を実現していく場であるが故に、不正や不義とは相容れない存在であることへの強い自覚を持つことが求められます。こうした崇高な目的が堅持されているからこそ、大学や教育機関に対する信頼と期待が寄せられるのであって、国民や社会の信頼や期待を裏切るような行為は、自らの存立基盤を掘り崩すことになってしまいます。

 私たちは、同じ私学で働く教職員として、今回の問題を自らのことと受け止めるとともに、各私立大学において、本来の私学助成の趣旨にもとづいた学費負担の軽減と教育研究を充実させる政策を展開していくことを求めます。


|