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2008年06月20日

国大協、中教審「学士課程教育の構築に向けて(審議のまとめ)に対する意見書」

国大協
 ∟●「学士課程教育の構築に向けて(審議のまとめ)に対する意見書」

意 見 書

 貴大学分科会制度・教育部会において、学士課程教育の構築に向けて(審議のまとめ)の報告に向けて精力的に検討されていることに対し、深く敬意を表したい。
 今回の「審議のまとめ」が指摘するように、グローバル化、ユニバーサル段階を迎えた我が国の学士課程教育においては、社会人や留学生など多様な学生を積極的に受け入れつつ、教育の質を維持・向上し、学位の国際通用性を確保することが求められている。
 このような中で本まとめでは、教育内容方法等の改善、教職員の職能開発の推進など多くの事項が盛り込まれており、その実現のためには、国公私立大学を通じた財政支援の強化が極めて重要であると考える。
 また、企業等の採用選考活動の早期化及び就職活動の長期化は、学生の学習環境の確保が益々困難になるなど、非常に大きな問題となっている。大学教育の質の保証の観点から、これらの問題の是正に向けては、大学が自らも律するとともに、企業等の協力を真に願うものである。
 このような認識を踏まえ、本協会として下記のとおり意見を申し上げる。

1.高等教育に対する一層の支援

 各大学の教職員が一丸となり、大学教育の質の保証に向けた改革を推進するには、改革への財政的・人的な支援が必要である。近年、高等教育に対する公財政支出の縮減に伴い、教育経費の維持が一層難しくなるという現状にある。大学における競争的資金獲得の努力は引き続き必要であるが、基盤的経費を削減して競争的資金の充実に充てるという現状では国立大学の学士課程教育の充実は極めて困難である。今回の「審議のまとめ」でも国による財政支援の重点的な拡充が指摘されているが、学士課程教育に対する社会からの期待に応えるためには、その裏付けとなる財政措置が不可欠である。

 また、「我が国の高等教育の将来像(答申)(平成17年1月28日)」にも、国の今後の役割の中心として「財政支援」が挙げられている。今後、グローバル化、ユニバーサル段階及び「大学全入」を踏まえ、我が国の高等教育がどのようにあるべきか、並びに、社会人、留学生の受入れの大幅な拡大に向けた教育環境の充実を図るために重要な教職員や教育支援人材の増強及び施設設備に向けた財政支援の充実に向けた国の具体的な提案を実施するためにも、2030年において高等教育への公財政支出をGDP比0.5%からOECD平均の1%を実現することを長期的な見通しとして、明確な資金投入の目標額を教育振興基本計画に盛り込むべきである。このことは、昨年12月に行われた貴審議会教育振興基本特別部会において意見陳述申し上げているところではあるが、教育振興基本計画の答申には、具体的な数値目標が盛り込まれていないことから改めて強く要望するものである。

 一方で、我が国の財政が厳しい状況にあることに鑑みれば、大学として財源の多様化を積極的に進め、自己努力により運営資金を確保していくことは当然であり、諸外国においても、大学運営の主要な財源として、企業や個人など民間からの寄付金を多く受け入れている状況である。貴部会における審議の状況に関する資料においても、教育の振興に資する寄付の促進等について、税制上の措置等の充実を図ることを記述されているところは評価できる。

 しかしその際には、大学の特性として、最先端の研究を行っていく上でも多くの資金を必要とすることから、教育研究の振興に資する寄付の促進等、研究面を含めた表現として頂きたい。

2.教育内容・方法等の改善

 成績評価基準の策定・徹底、GPA等客観的基準の厳格な適用等、学生の自発的な学習を促す様々の外的動機付けの仕組みが提案されているが、この実現に向けては、教員と学生間あるいは学生同士の交流から生まれる、内的動機付けについても考慮頂きたい。

3.高等学校との接続

 高大連携に関して、初年次教育の充実を図るためとして、高校教育時の学習状況の指導情報の引き継ぎ制度の導入は期待でき、これにより大学教育だけでなく、高校教育の質の保証などへも波及し、指導の改善充実にもつながると期待される。また、経済的理由で、強く学びたいという意欲のある者が大学に行けない、あるいは入学しても学業に専念できないことは問題であることから、解決策について十分議論頂きたい。またその一方で、目的意識や学習意欲の少ない学生に対してリメディアル教育などを実施しなければならないという現実は認識して頂きたい。

4.その他

 「我が国の高等教育の将来像(答申)(平成17年1月28日)」において高等教育の機能別分化が提言されていることから、本答申においても、想定される機能別の分担・分化に応じた改革案を提示頂きたい。
 また、全体を通じて新たな方向性が見えにくいことから、更なる具体的方策を、事例を挙げて示して頂きたい。
 総じて、国による支援・取組について「促進する」、「研究する」、「検討する」といった表現が多く、具体的な方策が見えてこない。多くの事項に対応することは困難としても、最重要事項を掲げ、確実に実現していくような報告であることを切望する。


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