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2008年06月24日

立命館大学文学部教授団、特別転籍問題等に関する声明

特別転籍問題等に関する声明

2008年6月10日
文学部教授団一同

 文学部では、8月11日の教授会冒頭において、標記の件に関して、文部科学省の報告を受け、最優先課題として1時間程度集中論議を行った。更に、教授会終了後、教員団集会を引き続き開催し、30分程度の継続論議を経て、全会一致により文学部教員団の採択に至った。なお、参加した教員は69名であった。

1.問題の所在
 今年度の生命科学部への入学者に対し特別転籍を募った問題に関して、文部科学省は6月4日、「補助金授受に関して不利にならないための措置で不適切」「教育上の合理的な理由があったと判断できず、また、学校法人としての管理運営も適正を欠いている」「極めて短期間に実施しており、入試の透明性、公平性を欠く」といった見解をまとめ、学校法人立命館に厳重注意を行い、学校法人理事者の責任を明らかにした。
 これを受け日本私立学校振興・共済事業団(文科省の外郭団体)は、立命館大学に対し今年度私立大学等経常費補助金の25%カット(前年度実績約15億円)を決めた。合わせて、国が交付する施設整備関係の今年度補助金(前年度実績数億円)も全額不交付となった。
 特別転籍について報道がなされた4月14日、理事会は「このままでは、教育条件の少人数教育ができなくなるし、補助金ももらえなければ他学部にも迷惑がかかる」と主張したが、文部科学省ヒアリングによる厳しい指導を受け、翌4月16日、総長はこれを修正し、特別転籍制度の廃止を言明した。しかし、その最中にも生命科学部の全学生に対して、特別転籍手続きの延長がメール配信されていたことも明らかになった。今回の特別転籍問題に関して、いつ、だれが、どの機関において、どのような判断を下したのか、その経過と責任の所在はいまだに明らかにされていない。

2.学校法人立命館理事者としての社会的責任
 学校法人立命館は6月6日、理事長、総長名で「特別転籍に関する文部科学省の決定を受けた今後の対応について」を発表した。しかし、そこに表明されている内容は「本法人では、この問題の検証を通じて、今後の再発を防止するために、教育研究機関の社会的責任にふさわしい管理運営体制の整備を図る所存です」という見解にすぎない。6月4日に総長が、「特別転籍に関する文部科学省の決定を受けて」の中で表明した「本学の社会的責任」は、当然学校法人理事者としての社会的責任の取り方を含むものであるが、管理運営体制の整備の問題にすり替えられている。
 これは、今回の深刻な事態に対して、余りにも捉え方が軽く、責任の取り方の「社会的水準」からもかけはなれていると言わざるを得ない。学校法人立命館理事者の社会的責任については以下の点が挙げられる。
①私学助成金獲得のために、学則及び学内規程にない超法規的な施策を実施した。
 (法令順守)
②その際、転籍に関する教授会の承認という事前手続きを踏んでいない。(適正手続)
③生命科学部と他の学部の学生双方、及び受験生に対して、入学試験の透明性と公平性に疑念を抱かせる行為である。(透明性・公平性)
④学枚法人立命館を構成する学生・院生、教員・職員、及び多くの校友の誇りを傷つける行為である。(誇りへの毀損)
⑤先達、校友、及び現在の学園全構成員が築いてきた学校法人立命館の名誉を汚し、社会的な信用を失墜させる行為である。(名誉毀損・信用失墜)
⑥15億円+αという多額な損失を学園に生じさせたこと、2009年度の新規事業の展開ができないことなどに対する結果責任は免れない。(結果責任)

3.私たちの願いと要求-社金的責任の取り方
 今回の事態の重大な問題点は、「自由と清新」を建学の精神とし、「平和と民主主義」を教学理念に掲げる学校法人立命館の名誉を、著しく汚したことにある。合わせてこのような事態は、「立命館憲章」に謳われている「正義と倫理をもった地球市民として活躍できる人間の育成に努める」という姿勢にも相反するものである。学生・院生や校友、市民から、「立命館はいったい何をしているのか」「立命館にはがっかりした」といった声を聞くたびに、私たちも辛い思いをしている。社会的評価や受験生の動向など、学園及び学生・院生、教員・職員が、有形無形の損害・損失を受けることは避けられない。
 また.今回の事態が、2005年以降の一方的な一時金カット、2007年の理事長・総長の退任慰労金倍増など、説明責任を十分に果たさないままトップダウンによって進められてきた学園運営に内包する危機の一つの帰結として生じた点は否めない。
 こうした事態を招いた責任は、理事長、総長、相談役を含めた学校法人立命館の理事者にある。文部科学省は、今回の事態に対し、大学レベルでなく学校法人の行為であったと認定し、厳しい判断に至った。このため、同一法人下にある立命館アジア太平洋大学についても同様の措置が取られた。
 このような事態に対して、文学部教授団は、以下の点を要求する。
①理事長、総長、相談役は、「特別転籍に関する検証委員会報告」が出された後、各学部教授会に直接出向き、今回の事態について謝罪し、経過に関する説明責任を果たすべきである。同時に、生命科学部を初めとする全ての学部の学生・院生に対して謝罪し、その説明責任を果たすべきである.又別途、特別転籍を行った学生に対する継続的なケアの体制をとるべきである。
②学校法人立命館の理事者として、とりわけ「常務会」を構成する理事は、今回招いた事態に対する社会的責任を果たすにふさわしい内容、方法で、けじめを付けるべきである。
③「懲戒手続き規程」の提案時に、文学部からは学校法人の理事者も対象に含むぺきであるという意見を寄せたにも拘らず、理事者は懲戒規程の対象から外れているという不備があるが、今回の事態は、「故意または重大な過失により、法人に損害を与えたとき」「法人の名誉または信用を著しく傷つけたとき」「職務上の義務に著しく違反したとき」という懲戒事由に明らかに該当する。これは、現在の学校法人立命館寄附行為に定める解任事由にも該当する。よって、学校法人理事者のトップに立つ理事長、総長、相談役は、自ら出処進退を明らかにすべきである。
④学校法人に与えた多額の損害に鑑み、前理事長、前総長に対する退任慰労金の倍増分については、速やかに返還すべきである。

以上


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